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かんたんビジュアル法律用語「私法と公法」 #1

今回は、「私法しほう」と「公法こうほう」という法律用語を、対比しながら見ていきましょう。標準的な基本書、注釈書、法律辞典に基づき、かんたんに解説していきます。


私法と公法


1 基本的意味
私法とは、私人しじん間相互の法律関係を規律する法です。

例えば、民法、商法、会社法、借地借家法などがあります。

市民である個人同士が契約したり、個人が株式会社などの法人と契約したりする場合などに適用されるのが私法領域の法律です。私人相互を権利・義務関係で規律するという法律関係に関するものになります。


他方で公法とは、国や地方公共団体と市民との間、あるいは国家機関や行政機関同士の間の法律関係を規律する法です。

例えば、憲法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政事件訴訟法などです。

窃盗事件が発生したら、警察が動き、被疑者である市民が逮捕されたりします。検察官が起訴すると、裁判所で公判が開かれ判決がでます。こうした場面で機能しているのは、刑法や刑事訴訟法などの公法分野の法律です。国家機関と市民との間での公権力の行使に関するものだからです。


2 コメント
歴史的には私法、とりわけ民法が法の中心です。「民法が法の原型であり、技術的にも洗練された法領域である…」(山野目章夫編『新注釈民法(1)総則(1)』2頁(有斐閣,2018))とされています。

もっとも、公法が作り出す公共空間がなければ、私法は十全には機能しません。例えば、民事訴訟法は公法です。私人同士の紛争を法的に解決しようとしたら、国家機関である裁判所に訴えを提起して、公権力の発動を求めることになります。その訴訟手続の内容を定めているのが民事訴訟法であり、よってこの法律は公法です。

私法と公法は完全に二分できないと言われており、また、公私の混合分野として、労働法(典型は労働基準法)や経済法(典型は独占禁止法)などがあるとされています。


【参考文献】
・法令用語研究会編『法律用語辞典 第5版』(有斐閣、2020)
・高橋和之ほか編『法律学小辞典 第5版』(有斐閣、2016)
・山野目章夫編『新注釈民法(1)総則(1)』(有斐閣、2018)




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