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かんたんビジュアル法律用語「自然人と法人」 #2

今回は、「自然人しぜんじん」と「法人ほうじん」について見ていきたいと思います。標準的な基本書、注釈書、法律辞典に基づき、かんたんに解説していきます。

自然人と法人


1 基本的意味

自然人とは、権利義務の主体である個人のことです。

権利義務の主体というのは、例えば、契約をしたり、物を所有したり、不動産の登記名義人となることができる資格、ということです。金銭の支払いを求める代金支払請求権などの権利を行使したり、借り入れをして貸金返還債務という義務を負ったりすることができるのが、権利義務の主体です。

自然人といっても、ジャングルなどで野性的な生活をしているというような意味ではもちろんありません。法人が人工的な存在であることとの対比で、法学上、自然人と名付けられています。私たちが一般的な用語として人という場合、それはすべて自然人です。

近代の法では、全ての人は生まれながらにして権利義務の主体となり、死亡するまでその資格が失われることはありません(民法3条1項)。何も分からずスヤスヤ眠っている赤ちゃんも、病気などで判断能力のない方も、すべて権利義務の主体です。


他方、法人とは、自然人以外のもので法律上の権利義務の主体となることが認められているものをいいます。

法人は様々な観点からの分類があり種類がありますが、身近なのは営利法人である株式会社ですね。

法人は法律に基づいて設立されます。つまり、勝手に作ることはできません。法人は観念上の存在です。自然人には必ず身体がありますが、法人は物理的な存在ではありません。法人が建物を所有していても、まさかそれが法人の身体ではありません。その建物を壊したら法人が消滅するなどということはないのです。自然人には死亡はありますが、法人には解散はあっても死亡はありません。

では、物体がないのに法人はどうやって活動するのか。そこで法人には、機関とよばれるものが必須となります。法人の意思を決定し、業務を執行し、あるいはそれらを補助する自然人(組織体である場合もある)です。株式会社が新しい取引先と契約するとき、代表取締役が契約書に署名するような場面が典型です。代表取締役という株式会社の機関である自然人が、その株式会社を代表して行為をしているということになります。


2 コメント
権利義務の主体であるという意味では、自然人も法人も同じです。しかし、法は個人の自由を基底理念としています(民法2条)。この一人一人の個人のために法があります。

法人という法技術は、技術ゆえに正しく使えば素晴らしい効用を生みますが、悪しく使えばそれこそ目も当てられない不合理が生じます。法人内部の個人、法人外部の個人、ともにそこにいるのは一人一人の個人です。



【参考文献】
・法令用語研究会編『法律用語辞典 第5版』(有斐閣、2020)
・高橋和之ほか編『法律学小辞典 第5版』(有斐閣、2016)
・我妻栄ほか『我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権― 第7版』(日本評論社、2021)
・山野目章夫編『新注釈民法(1)総則(1)』(有斐閣、2018)









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