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リュウゼツラン

写真と俳句 その四十六と四十七

2024年6月19日(水)



 マオラン 真麻蘭 苧麻蘭


 近所の公園に、「リュウゼツラン」という説明を受けた植物があり、花まで咲いていたので、驚き、少々、調べてみました。小笠原諸島の父島と母島で、咲いているものとは、随分、異なっていました。

 一般的に、「リュウゼツラン」は、30年から50年もしくは100年に一度しか咲かず、花を咲かせると枯れると言われている一回結実性の植物です。

 以下の写真のように、葉にトゲトゲがないものもあるのかと調べていますと、「アガベ・チタノタ(オテロイ)」というものがありました。アガベは、メキシコ原産の多肉植物で、リュウゼツラン科リュウゼツラン属。日本では、リュウゼツランあるいはアガベの両方で呼ばれることが多いそうですが、総称としてアガベと呼んでいるようです。
 アガベは、植栽として多く用いられています。(関東以西)

 そもそも、リュウゼツランは、原生地が、主にメキシコ・米国南西部の乾燥地帯。本来、植物の基本は、葉に斑が入っていない物を指すため、リュウゼツランは「アオノリュウゼツラン」のことですが、日本では斑入りの品種が先に輸入されて「リュウゼツラン」という名前をつけてしまったため、基本種である斑なし品種があえて「アオノ」を前につけた呼び名となったそうです。

 しかし、何だかすっきりしないので、念の為、他の植物も調べてみました。
 すると、同じリュウゼツラン科の植物で、「マオラン(真麻蘭、苧麻蘭)(ニューサイラン(入才蘭、新西蘭))」というものがありました。
 こちらは、ニュージーランドとノーフォーク島に固有の常緑多年草の一種で、40年に一度しか咲かないとされています。葉や花のつき方から、公園にあったのは、こちらではないかと思っています。
 

 どちらも、明治時代に日本へ入ってきたようです。原生地では、繊維としての需要がありました。
 マオランは、マオリ人がニュージーランドに到達し、その繊維を使い、マオリの伝統的な織物に広く用いられていました。また、少なくとも第二次世界大戦前までは、ロープや帆の材料としても使用されたようです。
 アオノリュウゼツランも、同じく繊維などとして活用されていました。     
 この他に、リュウゼツラン科のテキラリュウゼツランからは、メキシコの代表的なお酒、テキーラが醸造されます。


東京都港区の公園にての写真です。リュウゼツラン科のマオラン(真麻蘭、苧麻蘭)(ニューサイラン(入才蘭、新西蘭)) だと思われます。
東京都港区の公園にて
マオラン(真麻蘭、苧麻蘭)
(ニューサイラン(入才蘭、新西蘭))
だと思われる


「所有者も初めて見る光景に驚き 
 珍しい「マオラン」の花 高知県四万十市の広場に咲く」

花を咲かせること自体が珍しいという園芸植物、マオランの花が高知県四万十市の山里に咲き、所有者や近所の人たちを驚かせています。

四万十市の山間の集落中鴨川(なかかもがわ)地区。橋のたもとにある広場の隅にその植物はありました。ニュージーランドとオーストラリア・ノーフォーク島が原産の園芸植物・マオランです。別名・ニューサイランと呼ばれ、高さ2.5メートルほどの細長い葉が茂っています。その間に伸びた茎の先に赤茶色っぽく穂のようについているのがあまり見られない珍しい花だということです。

県立牧野植物園によりますと原産地のニュージーランドではかつてこのマオランの葉を繊維の原料として使っていたということです。中鴨川地区でも戦後、紙の原料として地域のあちらこちらで栽培されていたといい、所有者の朝比奈誠夫(あさひな・のぶお)さんは畑に生えていた株のうち一株を残し15年ほど前、現在の場所に植え替えたということです。

6月下旬、通りかかった住民から花が咲いていることを初めて知らされたという朝比奈さんは、実際に花を見て驚いたそうです。

(朝比奈誠夫さん)
「珍しい花やなあとは思うたですね。今まで見たことなかったからね。今まで大事に置いてきたのが良かったなと思うてね、残してきたがが。こんな花が咲くとは夢にも思うてなかったからね。」

マオランは明治時代のはじめ頃に日本に入ってきたということですが、県立牧野植物園はマオランが四万十市で紙の原料として栽培されていたいきさつは興味深いとしています。

TBS NEWS DIG
テレビ高知
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/584978?display=1



 アオノリュウゼツラン 青の龍(竜)舌蘭


 さて、せっかくですので、小笠原諸島にあったリュウゼツランをご紹介します。以下の写真、中央のトゲトゲした葉から勢いよく伸びていて、黄色い花を咲かせているのが、「アオノリュウゼツラン」です。

アオノリュウゼツラン(青の龍(竜)舌蘭)が小笠原 父島の青い空に勢いよく伸びています。黄色の花がたくさん付いています。
アオノリュウゼツラン
青の龍(竜)舌蘭
小笠原 父島


 ご承知のとおり、小笠原は、過去に他の陸塊と繋がった歴史のない島で、海洋島です。そのため、固有種を守ためには、外来種を取り除く努力を必要とします。

 アオノリュウゼツランは、日本からの開拓者により、明治初期に持ち込まれ、栽培されたようです。環境省及び農林水産省が作成した生態系被害防止外来種リストでは、「重点対策外来種」に選定されています。
 アオノリュウゼツランは、葉に長く強いトゲを持つことから、小笠原諸島の聟島などで、牧場の柵代わりに使われました。子どもたちは、枯れた花茎を組んで、筏を作り、海に浮かべて遊んでいた時代もあったそうです。

 

アオノリュウゼツランが小笠原 父島で増えています。
アオノリュウゼツラン
小笠原 父島

 上の写真のように、葉は、しっかりしているので、柵に適していますね。しかし有毒なので,葉を傷つけ出る汁に触れると、かぶれることもあり、注意が必要です。(前出したマオランも、葉にククルビタシンを含み、動物に対して毒性を示す場合もあります。)


 オガサワラオオコウモリ


アオノリュウゼツランの花と実の写真です。(小笠原 父島)
アオノリュウゼツランの花と実
小笠原 父島

 高く伸ばした花茎に咲く花は蜜が多く、「オガサワラオオコウモリ」の好物なため、夕方から夜に、飛んできます。六月の開花期には、コウモリがたくさん集まってきます。


オガサワラオオコウモリの切手です。20円。原画 は東角井 良臣 氏によるもの。サイズは、25mm×35.5mm。グラビア3色 凹版1色の印刷です。1974年11月15日に発行されました。自然保護シリーズ。画像は東京都総務局HPより。
オガサワラオオコウモリ 切手
20円
原画 東角井 良臣 氏
25mm×35.5mm
グラビア3色 凹版1色
1974年11月15日 発行
自然保護シリーズ
画像は東京都総務局HPより


小笠原諸島に生息する日本固有種。体長20~25㎝、前腕長13~15㎝、翼を広げると80㎝ほどである。体毛は全身暗褐色で、光沢のある灰白色の毛が混じる。主に植物の果実や花蜜、葉を採食する。一般に夜行性で、日中は樹林内で、単独又は群れで木にぶら下がって休息する。繁殖は冬期間(12月~3月頃)に集団ねぐらを形成し、初夏に1回1頭の仔を産む。

小笠原諸島
父島内で百数十~二百個体程度と推定。火山列島では生息が確認されているものの個体数は不明。

絶滅危惧IA類(CR)(環境省第4次レッドリスト)

環境省

オガサワラオオコウモリ
 夕暮れになると、黒い影が空のあちこちに見える。巨大なコウモリが夜のエサ探しに飛んでいるのだ。オガサワラオオコウモリは小笠原諸島唯一の固有哺乳類であり、父島と母島、硫黄列島でのみ確認できる(生息している)。黒色と茶色の長い毛で覆われており、頭部、背中、腹部に白銀の毛が混じっている一方、羽には毛がない。成長したコウモリの翼開帳は 80 センチメートル以上にもなる。

 人が島にやって来る以前、オガサワラオオコウモリはタコノキの実や自然の花、小さな果実などを食べていた。しかし現在では、地元の農家が栽培するマンゴーや柑橘類を好んでいるようだ。このコウモリは絶滅の危機に瀕しており、危害を加えることは法律で禁じられているため、一部の島民にとっては彼らとの共生が課題となっている。島の農家は農作物をネットで保護しようとしているが、コウモリが柔らかいネットに絡まり、振り解こうとして怪我をするおそれがある。そんなコウモリを守るため、政府、地元自治体、保護団体は、農作物を覆うと同時にコウモリの安全も確保できる硬質ネットを設置する農家の取り組みをサポートしている。また父島には、怪我をしたコウモリを治療してから自然界に戻すためのリハビリ施設もある。

 オガサワラオオコウモリが現在危機にさらされている主な理由としては、生息地の喪失があげられる。彼らは日中、うっそうとした林をねぐらとしており、この林が彼らを守る場所であると同時に、休息および繁殖場所にもなっている。小笠原の森の多くは畑や家を作るために切り倒されてしまい、現在コウモリたちの生息場所は限られている。そんな彼らを保護して種を存続させるためには、父島では、ねぐらへの不要な立ち入りは禁止されている。

 厳密には禁止されてはいないが、オガサワラオオコウモリのウォッチングツアーに参加する際は、熟知しているガイドを同伴することを強く勧めている。ガイドの指示なしでは、観光客は気づかないうちにオガサワラオオコウモリのねぐらを邪魔してしまい、それが原因でオガサワラオオコウモリはその場所を完全に放棄してしまう可能性がある。さらに、事前にオガサワラオオコウモリの居場所を知らなければ、見つけるのは難しいかもしれない。

国土交通省


 メキシコでも、蜜や花粉を食べるオオコウモリが受粉を媒介しています。リュウゼツランは、午後6時以降の夜間に、大量の蜜を分泌しているとの観測があるそうで、コウモリの活動時間と合致しています。


アオノリュウゼツランの花とオガサワラオオコウモリの写真です。小笠原 父島午後8時頃。赤色光で照らされ赤くなった写真です。赤色光は、夜行性動物である蝙蝠を驚かせないために、ツアーガイドさんが照らしています。
アオノリュウゼツランの花と
オガサワラオオコウモリ
小笠原 父島
午後8時頃

ご覧になりにくいと思いますが、左下とその上の花の後側にコウモリがぶら下がっています。
また、こちらもご覧になりにくいですが、
このページのTopの写真の右下に蝙蝠の目が赤く光っています。
(赤色光は、夜行性動物である蝙蝠を驚かせないために、ツアーガイドさんが照らしています。)



上記の夜に撮影した場所です。アオノリュウゼツランの昼間の写真です。小笠原 父島にて。
アオノリュウゼツラン
小笠原 父島
上の写真の昼間



アオノリュウゼツランは小笠原諸島に拡散しています。 この写真は母島のものです。
アオノリュウゼツラン
小笠原 母島


 肉質で大型の葉を持つアオノリュウゼツランは、枯死しても、ムカゴから成長した群落を作ります。乾燥にも強く、元々自生している植生を駆逐してしまいます。またその土地の動物に対しても、生活様式や形態を変化させてしまう場合があります。


例えば

 フタオビカタマイマイ



 最近の環境変化に適応し、生活様式を変化させた集団もいる。フタオビカタマイマイの属島(姉島)に生息する一部の集団は、外来種のアオノリュウゼツランに生息し、殻に他の集団と異なる特徴を持つ。これは本種の進化的変化が現在も進行中であることを示している。
 母島:フタオビカタマイマイのうち、一部の集団は外来種のアオノリュウゼツラン上に生息する。この集団では殻形態に変化が表れており、最近の環境変化に対する進化的変化を観察することができる。

世界界遺産一覧表記載推薦書 
小笠原諸島 
((2011.11.55 付け IUCN への提出資料反映版))
日本政府

 フタオビカタマイマイ(Mandarina hayatoi)
①種の特徴:殻長13.0mm、殻径21.0mm程度で、偏平、やや薄質、螺層はわずかに膨れる。体層周縁は円い。殻色は淡黄褐色から濃褐色で、色帯をもたない。殻表はほぼ平滑。殻表の光沢は弱い。臍孔は広く開く。殻口は厚く肥厚・反転する。タコノキやオガサワラビロウが生育する林内の樹上から地上までを利用する半樹上性の種である。
②生息地:父島南部、巽島
③生息状況:父島ではほぼ絶滅状態。
④減少要因:外来種による影響(貝食性陸生プラナリア類(ニューギニアヤリガタリクウズムシ)による捕食、クマネズミによる捕食)

環境省
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/maimai20.html
項目13


 海洋島では、生物が地質学的年代で長期間にわたって隔離される機会が多いため、なんらかの手段で海を渡って島にたどり着いた生物は島内で独自な進化をとげ、多くの固有種が分布する例が多い。さらに、長距離分散や定着の困難さから生物相のニッチが空いている場合が多いこと、哺乳類・爬虫類の捕食者や大型草食獣の欠如のためにそのような動物に対する耐性を持たずに進化している場合が多いこと、生態系の構成要素が貧弱なために食物連鎖が極めて単純であること等の理由で、大洋島の生態系は一般に外来の生物の攪乱に対して極めて脆弱である。

日本生態学会誌
冨山 清升 氏
(鹿児島大学・理学部・地球環境科学科)



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龍舌蘭 開花結実 死への旅 広在
赤色光 むせぶ蝙蝠 甘い蜜 広在
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