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伊邪那岐の遺書⑧

 それからさらに五日間、わたしは体調不良を理由に学校を休みました。
 事実、最初の数日以外は重い鼻炎を患い、まともに呼吸ができませんでした。あなたが仕事に出かけてから、わたしは彼女の部屋の前まで行き、郵便受けに汚物を投げ入れました。
 それでどうなると考えたわけではありません。ただあなたに近づいてほしくなかったわたしは、幼稚な嫌がらせをするのが精一杯でした。
 最初の日は、捕獲器にかかった生きたままドブ鼠を袋ごと投げ入れました。
 次の日からは袋から中身を取り出し、直接郵便受けに入れました。
 二日目は、手足を切り取ったドブ鼠。三日目は全身にまち針を刺したドブ鼠。四日目は原型をとどめていないミンチ状になったものを彼女に届けました。
 慣れぬ遠出を繰り返したせいでしょう。日に日に体調が悪くなっていきましたが、あなたたちが楽しそうに過ごしていたのを思い出すと、彼女のマンションへと足が動きました。
 しかしさすがに五日目には、鼻から膿のようなねばつく鼻汁がとめどなく溢れ、外出する体力はありませんでした。
 悔しくて涙があふれ、わたしは布団の中で泣き続けました。涙が枯れ果てると、彼女を呪う言葉をつぶやきました。わたしから愛するものを奪おうとする神を憎み続けました。

伊邪那岐の遺書⑨
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