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Asana 日本法人の立ち上げで学んだこと

私が2016年にAsanaに入社した時、Asanaは日本語版さえなく、当然日本にもオフィスはありませんでした。その後、私は日本進出プロジェクトに携わり、無事東京オフィスも立ち上がり、今では東京チームの一員として日々Asanaの日本展開を頑張っています。
Asanaの日本法人立ち上げに際し、多くを学びました。その中でも印象的だった学びを以下3つお伝えします!

ビデオ会議では何も分からない

日本進出プロジェクトが立ち上がった当初、サンフランシスコから日本のユーザーに電話でインタビューをしたり、ビデオ会議で営業をしていました。しかし時差もあり、早々に限界を感じたので上司に相談したところ、長期の日本出張が認められました。飛行機代、宿代、食事代等の経費はスムーズに確保できたのですが、なぜかお客さんに配るAsanaグッズ(Tシャツ、ペン、ノート等々)の確保で苦戦。どこのチームもグッズの在庫がカツカツだったんです。結局オフィス中を渡り歩き、各チームからなけなしのAsanaグッズを少しずつ恵んでもらいました。

初めての出張で驚いたのが、意外とみんなスーツじゃないことでした。夏場だったのでノージャケット、ノーネクタイというのもそうですし、今どき会社によってはジーパン等かなりカジュアルな格好もOKなんですね。初めての日本出張、夏場にビシッとスーツとネクタイで決めていったら、お客様は合理的に涼しい格好をされていて「山田さんシリコンバレーの人なのにスーツで来たんですか笑」みたいに言われちょっと恥ずかしかったです。

いざ東京に来てみると、想像通り来てみないと分からないことがたくさんありました。例えば、サンフランシスコから話していた時はビデオもオンにしてくれず、中々心を開いてくれなかったお客様のもとを訪ねてみると、先方の靴と私の靴がおそろいだった、なんてことも。それだけの話ですが、それがきっかけでその後の話がスムーズに進むなど、対面の強さを痛感しました。

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<図1>かぶったのはサンフランシスコで一時期大流行したAllbirds。通気性がめちゃくちゃ良くて、足の指たちが大喜び
https://allbirds.jp/products/mens-tree-dashers

もう一つ印象的だったのが、イベントの会場確保です。日本初のAsanaコミュニティイベントについて、有償のスペースを借りるだけの予算がありませんでした。これを受けて、ただ一人東京にいる私に「お客さんのイベントスペースを使わせてもらうなりして、無償のイベントスペースを確保せよ」という指令が入ったんです。

イベントスペースを持っているお客様何社かにメールでお願いをしましたが、ことごとく断られました。それでも、せっかく東京にいるので挨拶だけでもさせて欲しいとお願いすると、一社にだけお時間をとっていただけることに。お伺いして、他部署に恵んでもらったなけなしのAsana特製ソックスをお渡ししたら、そのお客様が席を立ち、オフィスの奥の方で何やらぼそぼそ。結果、その場で内部で説得をしてくださり、メールの返答から一転、スペースを使わせて頂けることになったということがありました。

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<図2>マーケティングに恵んでもらったなけなしのAsanaソックス。定期的に新色が出るので、興味ある方は連絡ください。

客先訪問が重要なのは、常識かもしれません。しかし当時エンジニアとして、業務を効率化することしか考えていなかった私にとって、「Zoomでは伝わらないことがある」というのは本当に新鮮でした。


日本はみんなが思ってるほど特殊ではない

イベントが終わったあたりから、「Asanaのプロダクトは本当に日本で通用するのか」「日本企業は全然違うものを求めているんじゃないか」など、日本の特殊性を懸念する声が社内で多く聞かれるようになりました。

実はお客様からも同様の声を聞きます。「うちは日本企業だから、セキュリティが厳しくて・・・」「日本企業だから、組織が不透明で・・・」など、日本企業独自の事情をお聞かせくださいます。

しかしよくよく考えていくと、こうした日本企業の悩みは世界共通のものであることがほとんどです。昨年うちの社長が日本に来た時、日本独自の事情を色々と直談判してみて、ほぼ全て「それ、他の国でも一緒だよ」と一蹴され続け、はたと気付きました。

もちろん、言語の違いはあります。日本語でもUIが崩れないようにする、日本語が入力できるようにする、ウェブサイトの日本語をもっと自然にするなど、「日本語」という「言語」への対応は必要です。

しかし日本企業の悩みのほとんどが実は世界共通の悩みである以上、言語対応以上の日本向けカスタマイズは必要ないと感じています。よほど特殊なケースを除けば、世界中のサービスが大幅なカスタマイズなく日本で十分通用します。

日本のソフトウェア市場がグローバルに開かれていることは、日本にとってピンチでもありチャンスではないでしょうか。日本という地域性に特化しすぎたサービスは淘汰されゆくと思いますし、逆に本質的に良いものを作れれば、海外のビジネスにも十分受け入れられうると思います。


最先端のSaaSビジネスも、お客様の好意に支えられている

今は改善しましたが、進出してからしばらく、Asanaは日本のビジネス慣習への対応が追いついていませんでした。ひどい例をあげると、日本の銀行口座がなくて、日本のお客様がAsanaを使おうと思うと国際送金しなければいけないなど、見限られてもおかしくないレベルの話が多々ありました。

お客様のルール上国際送金がNGにも関わらず、お客様が内部で調整してくださって話がまとまったケースは一回ではありません。このように、Asanaの仕組みが追いついていない部分を、お客様が好意で埋めてくださった局面が多数ありました。SaaSだのクラウドだの、商品自体が最先端でも、最後は人と人が話し合って契約が結ばれ、場合によってはお客様の好意に助けられながらビジネスが前に進んでいくものなのだと、今でも大切な学びとして心に刻んでいます。

また私が東京に来た頃には、ネット上でAsanaを見つけ、使って下さっていたAsanaファンの方々がすでに大勢いらっしゃいました。ファンの方々には、新しいお客様をご紹介くださったり、社内でAsanaの勉強会を開いてくださったり、時にはイベント会場でイスを一緒に運んでくださったり、一人しかいない中助けていただき本当に心強かったです。テイクするばかりで、私から何かギブできる状態にはなかったにも関わらず助けて頂き、本当に頭が上がりません。

またお客様ではありませんが、Asanaに出資くださっているVCの皆様にも、オフィススペースを使わせてくださったり、イベントを開催してくださったりなど、本当にお世話になりました。

サンフランシスコにいた頃の私にとって、売り上げもユーザー数もただの数字でした。また、ビジネスはサービスと対価の交換というシンプルなやりとりでした。しかしいざ現場に出てみると、それらの数字やデータには浮かび上がってこない形で、Asanaのビジネスはお客様の好意に支えられていました。

皆様には本当に感謝しています。皆様にこれからも価値のあるサービスが提供し続けられる組織でなければ、と決意を新たにしています。

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いかがでしょうか。長らく日本でビジネスをされている方々からすれば当たり前のことが多かったかもしれませんが、何か一つでも学びを得て頂けたのであれば大変光栄です!

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