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癌になってみて思う事

2019年の12月に胆管癌の摘出手術を受けました。たまたま別の原因で腰が痛くなり、救急車で搬送されて精密検査を受けたところ切ってみないと分からないが胆管癌の可能性があるということでした。

癌の様な死ぬかもしれない病気になると多くの場合、人は気力を保てなくなります。日本では今癌でなくなる人は全死亡者の1/3ですがいずれその割合は1/2になると言われています。癌は歳を取れば取るほど罹り易い病気ですので平均寿命が延びると患者の数は自然に増えます。

できれば自分は癌にはなりたくないというのはほとんどの人の本音でしょう。だから普段は自分が癌になった時の事など考えません。それは死ぬのと同義語と捉えるからです。そして医者から癌の宣告を受けると頭が真っ白になってしまいます。癌患者が書いた闘病記を読むとみんな同じような体験をされているようです。

しかしこういう本を書いた人はそこから立ち直ります。その境地から立ち直り、治療を受け入れたり、もう残り僅かかも知れない人生を見つめ直したりするようになります。癌になってから一日一日を大切に生きるようになったという話はよく聞きます。自分もそうなりたいと思いました。

強い心を持つ事は病気の回復にとって基本中の基本です。近年の研究では精神的ストレスが免疫力の低下と癌の発生に密接に結びついている事が明らかになっています。

癌になった事で毎日、死の恐怖に怯えたりしていると免疫力が低下して転移したり癌細胞が増殖し易くなります。逆に笑顔を忘れず毎日充実した生活を続けていると免疫力が高くなり、がんの増殖を防ぎます。免疫力が強くなると治療の効果が高まって癌は治癒する可能性も強くなります。

私の場合は幸運にもステージ1であった事と肝臓の細胞は切り取っても自然増殖する為に転移が無ければ完治するだろうという事でした。それで今でも半年に一度は検診を受けています。


少年の頃に言われていた格言

スポーツ教育の現場では『健全なる精神は健全なる肉体に宿る』と言われていたものです。若いうちに体を鍛えておかないと健全な精神は育たないという意味であったと思います。では体が丈夫でない子供には健全な精神は宿らないのでしょうか?

これに対して、インドの哲学者カリアッパ師の導きでご本人が結核から立ち直った経験のある中村天風さんは次のように言っています。『もしも健全な肉体にあらずんば健全な精神宿るたがわずならば、身体の丈夫な奴はみな心が強いはずであります』この言葉の後に天風さんは力士がまわしの中にお守りを入れて立ち合いに臨んでいるというエピソードを紹介しながら力士の心の弱さを話しています。

元々この格言は古代ローマの詩人ユナリスが書いた風刺詩集のラテン語の一節が元になっています。正しくは『健やかな身体に健やかな魂が願われるべきである』で、当時のローマ市民の身体的能力や肉体美だけを認めて腐敗した政治には関心を向けない姿を風刺したものでした。これが近代日本に入ってきた時、どういうわけか誤って解釈されるようになったみたいです。

天風さんは次の様にも説いています。『健全な肉体が健全な精神によって作られるのであって、健全な肉体によって精神が作られるのではない。千歩譲って体が強ければ心が強くなるのだとすれば、そんな心が頼りになりますか?体が強い間だけの強い心では、身体が弱くなると心まで弱くなってしまう。そんな頼りない心なら、あっても、なかっても同じではないか』

死後に行く精霊界はこんなところ?

70歳になった今、癌の経験から自分の死はそれほど先ではない事を自覚しました。いつか確実に来る自分の死に対して正面から向き合い、天風さんに倣って今の時間を大切にして出来る事に挑戦し、強い心で病を克服していきたいと思います。


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