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人材教育と人間関係

人は皆、意識する、しないに関わらず親しい人の思考習慣に影響され、その習慣を受け継ぎます。つまり否定的な思考習慣の人といつも一緒にいると、自分の思考習慣まで否定的になっていきます。人は習慣のリズムによって今、自分が置かれている環境の中で最も強い影響力を持ったものに合わせて自分の思考習慣を作ろうとします。付き合う人を選ぶ事は大事です。

親しく付き合う相手を選ぶ時は、健康の事を考えて食べ物を選ぶのと同じように慎重であるべきです。どんな時も前向きで友好的で調和のある思考を持った人と付き合うという心構えが必要です。

その中で最も影響力を持つのは配偶者、家族、仕事仲間。それから親しい友人、知人と続きます。単なる知り合いや赤の他人からはほとんど影響は受けません。

ネガティブな人の傍にいるだけで自分の態度や気分もネガティブになったという経験はないでしょうか。その時の相手は誰だったか、配偶者、子供、あるいは仕事仲間?自分の意識に前向きで友好的で調和のとれた思考を常に注入し続ければ、そういったネガティブな思考に対抗することもできるし、相手の人をポジティブに変える事もできます。

仕事仲間たちと仲良く

もし問題の相手が仕事仲間なら、その関係が本当に必要なのかどうか、一度見直してみましょう。相手の持つネガティブさから逃れるために関係を終わらせるというのも一案です。

褒めて育てる

人を育てる方法は『叱って育てる』と『褒めて育てる』に大別されます。人材育成のような全人格的な教育効果を目的とする場合、叱るより褒めて育てる方が効果的です。褒められるとやる気を出す脳内ホルモンが分泌されます。人は褒めてくれた人には好意を持ち、報いたいという気持ちになります。欠点や短所を指摘する場合は必ず褒めてから指摘した方が効果がいい。

人は自分の重要性を満たしたいと願っています。自己重要観は食欲や睡眠欲と同様に非常に強い欲望です。人は自ら学ぼうとした時に初めて効率的に学べてよく成長します。そういう学び方が出来た人の中から奇跡的な能力の人が育ちます。

人の知的能力や独自固有の長所、よい人間性等はいくら引っ張り出しても枯渇する事はありません。鍛えれば鍛える程よくなります。人間の能力には汲めども尽きない秘められた能力が眠っています。

褒める時には相手の目線まで下りて行って褒めるのが上手な褒め方です。自己重要観は褒められる事の他、認められる事でも満足できます。捕虜収容所や刑務所など強制されてする仕事には決して熱心にやろうとはしませんし、失敗も多くなります。

仲がいいとグループiQが上がります

差別といじめのある職場や組織は人の育つ芽を摘む事はあっても育む環境ではありませ ん。

長所を伸ばす

長所も短所もそれぞれ個性です。長所を伸ばし、短所を補う事は大切ですが、なかなかそれはできません。長所にうぬぼれる事なく、短所に劣等感を持つ事もありません。

出来の悪い上司は社員の欠点ばかり指摘します。しかし長所を見つけて伸ばし、よい成果へ還元していく視点がないといけません。会社も人も、短所を指摘して矯正したところで『普通』にしかなりません。世の中が求めているのは『普通』ではなく際立った長所から生み出された技術やサービスです。

短所はある程度放っておいてもいい。例えば、優秀なプロ野球のバッターがいたとしましょう。その人は漢字をよく間違える。だから漢字の勉強をさせて、バッティングの練習をさせないというのは大問題です。その人の世の中に対する貢献力や持ち味を無くしてしまったら意味がありません。

部下の長所を伸ばせる人は褒めるのがうまい。これは有名な話ですが、ある時松下幸之助さんが会長室で仕事先の人と面会し、新しいプロジェクトについて語っていた処へ部下の方が新企画の説明に来ました。分厚い資料をもとに、説明を始めたのですが、これはさっきまで幸之助さんが語っていたプロジェクトとほぼ同じ内容でした。仕事先の人は『同じことを繰り返しているだけだな』と思っていました。しかし説明が終わると幸之助さんは『それはいい考えやな∼君のその考えでいこう!』と言いました。

部下の方は大喜びされたそうです。普通なら『それは今、自分が考えていたプランや。一緒に頼むな』と答えるでしょう。ところが幸之助さんは、あえて部下の手柄という事にしてやる気を高めたのです。見事な人心掌握術に同席していた仕事先の人は、とても感心されたとの事です。

社員の数が少ない間は特に社員の人の特徴を掴み長所が表に出るような配置をすべきです。リーダーは自分の常識が、世界の常識と考えてはいけません。各社員が能力を発揮し、フローになれるような仕事の内容とボリュームを与える事はリーダーとして一番大事な仕事です。

天は一物は与える

『天は二物は与えず』と言いますが、逆に『一物は与える』とも言えます。その一物を見つけてその人を大事に育て上げる事は大切です。

人は多くを望みがちですが、もしひとつの物が与えられているならそれを大切にしていく事は大事です。色々なものが与えられているならいいが、たいていはそうではありません。完璧にはなれません。そして様々な事に手を出す人がいますが、まずは自分の長所を生かす事に集中したほうがいい。凡人が多くの事を全て満足にこなせるという事はまずありえません。

お互い長所を伸ばしましょう


人にはいい所と悪い所がある。いい所から学び、悪い所はやり過ごして、反面教師にすればいい。幸之助さんの著書『道をひらく』に『神様ではないのだから、全知全能を人間に求めるのは愚の限りである。人に求めるほうも愚なら、いささかのうぬぼれに自らおごる姿もまた愚である。人を助けて己の仕事が円滑に運んでいる。この理解と心配りが無ければ百万人の集団も単に、角突き合わした烏合の衆に過ぎないであろう』

他人に対してもいい所を受け入れてそれを活かし、悪い所はある程度見過ごすような柔軟さが必要です。自分も他人も天から与えられた優れた部分を見ていくべきで、それを活かす事です。自分にも他人にも二物以上を求めるのは贅沢です。互いにいい所を大切にして活かす事です。

自分は周りの人達に助けられているという事実を理解し、驕ることなく謙虚さを忘れずに他人の長所を認める。そして感謝の気持ちを伝えないといい組織は作れない。また適材適所ということを忘れると短所ばかりが集まった集団にもなります。そうならない為には日頃から雑談を心掛け、その雑談の中から長所と意志を見付ける事が大事だと思います。京セラの創業者、稲盛さんの『コンパ経営』の意味もこれに通じます。メンバーが自分の頭で考え、実行していけば、リーダーさえ不要な組織を作る事も可能です。

各々の人が、自分に与えられた課題について真剣に取り組み、考え抜いているとその解決策は湧いてきます。アインシュタインの言葉に『インスピレーションは決して空虚な心には与えられない。それを得ようと血の滲むような苦心、努力をしている心にのみ与えられる尊い賜物です』とあります

また本田宗一郎さんは『発明は全て、苦し紛れの知恵だ。アイデアは苦しんでいる人のみに与えられる特権である』と言われた。自分に与えられた課題にどれだけ真剣に取り組んでいる人がいるかが、それが組織の強さの原点です。与えられた課題が自分の長所に近い部分であると人は能力を発揮しやすい。人材教育を通じて全てのメンバーが自分の頭で考え続けリーダーが居なくても皆が充実して働ける、そういう人の集団を作りたいものです。


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