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雑談をする時の『つかみ』

先週事務所で古くからの知人の訪問を受けました、こういう場合はお互い共有する話題がいくつかあり、過去の出来事について話す事で自然に雑談が盛り上がりました。しかし初めての客先を訪問する場合等は相手が何に興味を持つのか分からないので、話題について事前に考えておいた方がいいでしょう。

雑談と本題の切り替えはとても大事ですが、落語の本筋に入る前の導入部分でする話の事を『つかみ』と言います。身近な話題で雑談しているように見せて、それを巧みに展開しながらある瞬間からきちっと本題に入っていく。

昨日今日のニュースの話が突然、江戸時代が舞台の八さん熊さんの話になっても全く違和感なく聞き取る事ができる。上手な噺家ほどこのつかみが効果的で本筋への導入が絶妙です。

どこから本筋に入ったのかよく分からない内に、自然に雑談から落語に話が展開して移行していきます。更に本筋の落語の中にも何か雑談をしている雰囲気が漂っている。いきなり本題ではなく、その前に地ならしをする。雑談はこの地ならしの役割を担っています。

つかみと本題をバランスよく自然に切り替える。緊張と弛緩を巧みにコントロールする事で日本古来の芸術文化である落語に切り替えの絶妙なニュアンスを身に付けるヒントがあります。

商談の席で、いきなり『契約です』と書類と電卓にハンコなんか出されても、お互いに力が入り過ぎますし、疲れてしまいます。そこに何かワンクッションが欲しくなります。つまり雑談が必要になってきます。当然ながらいつまでもダラダラと雑談しているのでは仕事になりません。ここで雑談と本題を切り替える能力も要求されます。

雑談

初対面の会話で話に積極的に入っていくのは難しいものです。自分にとってはただの無駄話、文字通り『雑な談』の事もあります。その話の内容について『知りたい』という欲求があるかどうか、その主体的な意識の有無が雑談を金の卵にできるかどうかの分かれ目になります。雑談はその思考の拡がりが、物事を違う角度から見せてくれます。一見回り道の様ですが実はゴールへの近道の場合があります。

そこで大事な事はビジョンの共有です。最終的なビジョンさえ共有できれば、思いっきり離れたり遊んだりできる。そうする事で自分にしかなしえない世界で一つの足跡を残す事ができます。

雑談に結論はいりません。結論が出ると話はそこで終わってしまいます。せっかく盛り上がっていた雑談がブチッと途切れてしまいます。ですから雑談では結論というゴールを求めてシュートを打ってはいけません。パス回しが重要なのです。

『あれ、そもそも何の話でした?』このフレーズが出てきたら、それはいい雑談ができた証拠です。盛り上がる雑談とは。一つの話題だけで終わらず、次から次へと別の話題が派生しながら展開していくもの。ただ重要なのは、前の話を一度リセットして全く関係のない話を始めるのではなく、前後の話がどこかで関連付けられて鎖状に連なっている事です。

ですから、話題の変わり目は、『全然違う話なのですが・・・』ではなく、前の話に出てきた言葉やエピソードをうまくとらえて、『○○と言えば、この間ね~』と派生させてうまく展開します。

ここで大切なのは連想力。すなわち相手の話から次の話題を連想する力、相手の話を別の話題とリンクさせ、新しい雑談を引き出す力の事です。盛り上がる雑談ほど、連想は連鎖します。

雑談力は雑草の生命力のようなもので、どんな土地でもそれこそコンクリートの隙間からでも生えてくる都会のタンポポのように孤独で心を閉ざしている人や不機嫌そうな男性がいても、気にせず雑談を仕掛けて社会と繋がっていく。雑談力がある人とは、そんな雑草力のある人です。

必要な話や本筋に関係ある話だけではその話が終われば『はい、おしまい』になってしまいます。それでは本当のコミュニケーションはできません。そんなコンクリートの隙間から出てくる雑草のような無駄話こそが人間関係を底の部分で繋いでくれます。

無駄話しは楽しい

これからの時代、雑談力を身に付ける事は強く生き抜く力を身に付けることそのもののように感じます。そして自分が強く生き抜く力でありながら、同時に周りの人々を活かす力にもなります。話す事で人は救われ、聞いてもらう事で人は癒されます。雑談力は言葉を持つ私達人間だけが持っている生きるための力ではないでしょうか。

この価値ある雑談をうまく始める為にも出発点である『つかみ』部分の工夫は大事です。

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