徳川家康の生き方
今年のNHK大河ドラマは徳川家康が主人公で、旗印の『欣求浄土』と『厭離穢土』が彼の生涯の生き方のテーマでした。さすがに250年間も続いた徳川幕府という組織の創始者だけあって組織の中で自分のリーダーとしての立ち位置を生涯にわたって研究を続けた人であったようです。現代の会社組織の中でも役立つ内容と思います。いくつかの内容を紹介します。
家臣は宝物
ある時大阪城で催された茶会の席で豊臣秀吉が家康に向かって自慢げにこう言いました。『ワシは天下を取り宝と言う宝はほとんど手にすることができた。そこで尋ねたいのだが家康殿の一番の宝物は何でござるか?』この時家康は次の様に答えました。
『太閤殿下と違って私には自慢できる宝物などひとつもございません。まあ強いて言えば私の為に命を投げ出す覚悟で働いてくれる家臣たちかもしれませぬ。彼らがいなければこの私などはとうの昔に敵に攻め滅ぼされています。』
この言葉を聞いた秀吉はバツが悪くなり、苦虫を潰したような表情をしました。成功者と呼ばれる人はお金や物よりも人を大切にしているという事です。秀吉も天下を取るまではそうでした。だからこそ秀吉も家康も最後は天下を取る事が出来たわけで、そうでなければ二人とも天下を取れずにいたかもしれません。
成功や願望達成のきっかけとなる運というものはその形がどうであれ、人によってもたらされる事が多いものです。つまり成功者と呼ばれる人たちは自分の努力や才能でなく自分以外の他力によって大きなチャンスをつかみました。
マム効果
尊敬できない上司に部下は諫言しません。『諫めてくれる部下は一番槍をする勇士より値打ちがある』一番槍の功名を上げて戦死すれば人々から称賛され恩賞もあり、子孫の代まで誉が高くなります。いずれにせよ勇敢な行為には見合うだけの見返りがあります。
ところが『主君の誤りを正すべく真心を込めて諫めても、その主君が暗君であれば決して諫めに従わないであろう』場合によっては遠ざけられたり手打ちにされたり、あるいは知行が没収されて家族が路頭に迷う事にもなりかねません。このように諫言する事は大変難しいものですから、一番槍以上に価値があるという事です。
家康は『上に立つものはこの辺りをよく心得て、諫めるものが有ればありがたいと思わねばならない』と語っています。歴史に残る名将たちは家康のように家臣の諫言に耳を傾けたので優れた人材を集める事ができたのでしょう。
一般に部下は上司に好印象を持ってもらいたいと願います。その為上司の機嫌を損なうような言動はしないほうがいいと考えます。そこで上司を批判したり、あるいは上司の立場が悪くなったり、自分の評価を落としたりするような報告は思っていてもしません。これを『マム効果』といいます。プーチン大統領の側近が取っている行動です。
部下が『上司は家康のような大人物である』と見なす時にはマム効果は生じません。部下の話を最後まで良く聞く。部下を感情的に叱責しない、といった上司の真摯な態度がマム効果を防ぐ有効な手段になります。
大将の戒め
『大将というものは敬われているようでその家来に絶えず落ち度を探られているものだ。恐れられているようで侮られ、親しまれているようで疎んじられ、好かれているようで憎まれているものじゃ。大将というものは絶えず勉強せねばならぬし、礼儀もわきまえなければならぬ。良い家来を持とうと思うなら我が食減らしても家来にひもじい思いをさせてはならぬ。自分一人ではなにもできぬ。これが32年間つくづく思い知らされた家康が経験ぞ』
『家来というものは禄でつないではならず、機嫌を取ってはならず。遠ざけてはならず近づけてはならず。怒らせてはならず油断させてはならないものだ。』
『ではどうすればよいのだ』
『家来に惚れさせねばならぬものよ』 1616年6月 徳川家康
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