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挿絵小説『ラッキーボーイ』(全12話)〈luckyboy〉

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国境のないネットの世界では、入り口としての挿絵が重要なのではないか?という仮説から、ネット小説を再定義した作品です。
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2016年10月の記事一覧

挿絵小説『ラッキーボーイ』第8話

挿絵小説『ラッキーボーイ』第8話

「松井さん、動く」前回、哲也君は翔子さんを両親に紹介しました。父の満さんは彼女に好感を持ったのですが、母の純子さんは烈火のごとく怒り狂いました。純子さんにとってスケッチブックの不思議な力など知ったことではありません。今ここにいる息子の恋人が四十路というのが耐えられないのです。

哲也君と翔子さんにとって、想定内の事態とはいえ、やはりがっかり感はゆがめません。「やっぱりおかしいのよ、この姿の私が哲也

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挿絵小説『ラッキーボーイ』第9話

挿絵小説『ラッキーボーイ』第9話

「別れ」みなさま、ごぶさたでした。さて前回、翔子さんはカフェで哲也君と待ち合わせをしていて、突然、松井さんの訪問を受けたのでしたね。松井さんは純子さんから二人を別れさせるように指示を受けておりました。そして(愛しているのなら別れるのが本当の愛情)という正論をビシビシと直球で投げ込んできました。翔子さんは松井さんの話を黙って聞いておりました。反論すると、理屈で負けてしまうのがわかっているからです。高

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挿絵小説『ラッキーボーイ』第10話

挿絵小説『ラッキーボーイ』第10話

「オリオン号」みなさま、ごぶさたでした。さて前回、哲也君と翔子さんは、愛ある別離を選択しました。何か理不尽な表現ですね。しかし、人生とは理不尽なできごとに満ちあふれております。そんな体験をした哲也君は今、上野駅の十三番ホームに来ております。今日は八月三十一日です。みなさん覚えていらっしゃるでしょうか。今日は満さんと純子さんの結婚記念日で、二人があこがれのオリオン号に乗車する日です。失礼、あこがれて

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