NFTとシン・ソーシャルグラフ(原案)
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NFTとシン・ソーシャルグラフ(原案)

青木 宏文

NFT関連事業を営む事業者の立場を退き、いちNFTコレクターとして昨今のNFTブームを傍観する中で、NFTのポテンシャルに関してあれこれと考えを巡らせる日々を送っておりました。

とあるきっかけにより、漠然と考えていたポテンシャルを整理・言語化し、自身の頭の中ではっきりとしたNFTの将来像を思考する理由ができたため、整理・言語化の一環として文章に落とし込むこととしました。

2017年末に初めてクリプトキティーズ(NFT)を購入して依頼、3年半ほどの期間を通じ、NFTコレクターの立場とNFT関連事業者の立場で重ねてきた思考も含め、整理・言語化しているため、少々長めの文章となっておりますが、お付き合いいただければ幸いです。

なお、NFTの長所として一般的に言われているものは、​

・二次売買が簡単にできる
・二次売買でもNFTの作成者に売買手数料が入る
・デジタルでも供給量を制限できる(レアリティを設計できる)
・自身が所有者もしくはその他権利者であることを証明できる

などでありますが、NFTブームの影響もあり多くのメディアで解説されているため、あえて本記事で言及するまでもないかと思います。

僕が考えを巡らせているポテンシャルはこれらの長所とは違った観点であり、僕が目を通している範囲においては、あまり触れられていないため、自身で整理・言語化し、解像度を上げていきたいと思います。

NFTを支える仕組みのイメージ

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これは一般的なWebサービスとNFTでのデータの持ち方を比較したイメージ図です。ゲームを例に説明すると、左側の一般的なWebサービスでは、ゲームのプレイヤーが所有しているキャラクターやアイテムなど(以下キャラクター等)は、各ゲーム会社がデータとして持っています。つまり、基本的にはゲーム会社のみが自社ゲームのプレイヤーの所有情報を把握していることになります。(APIなどで外部に所有情報を提供することもできますが。)

一方で、右側のNFTでは、ゲームのプレイヤーが所有しているキャラクター等は各ゲーム会社でなく、ブロックチェーンにデータが記録されています。厳密には、技術的な課題など諸々の事情によりこのようになっていないケースもあるのですが、基本的な設計思想としては、このようにデータを持つことを目指しています。

なお、NFTの方の図でユーザーアイコンが少し暗くなっているのは、ブロックチェーン上にユーザー個人を特定する情報は記録されていないためです。便宜上、ユーザーという言葉を使いますが、ブロックチェーン上に記録されているのはあくまで、ブロックチェーンのアドレスとそのアドレスの持ち主が所有するNFTの情報だけです。

ブロックチェーンに所有データが記録されていると、ゲーム会社だけでなく、第三者が自由にデータを参照することができます。つまり、誰でもユーザーが持っているキャラクター等を知ることができるわけです。

もちろん、「誰でも知ることができる」状態にはメリットがある一方で、プライバシーなどのリスクがつきものですが、リスクに関しては別途検討が必要な事項として、本記事ではメリットに関して言及していきたいと思います。

なお、上記ではゲームを例に上げましたが、昨今話題になっているクリプトアートなど、NFTで作成されたものは全て同じで、誰でも「誰が何を持っているのか」を知ることができます。

ブロックチェーンにソーシャルグラフが形成されていく

さて、誰でも「誰が何を持っているのか」を知ることができると、どのようなことが起こるのか。具体的なメリットを言及する前に、概念的な整理をもう少ししたいと思います。

先のイメージ図の右側、つまりNFTの方の図を少し違った角度で整理するとこのようなデータ構造が浮かび上がります。

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既にお気づきの方も多くいらっしゃると思いますが、ソーシャルグラフです。

図中の丸がNFTの所有者を表し、線が「同種のNFT」を持っている所有者同士を結びつけます。つまり、「同種のNFT」を持った人同士の繋がりを表すソーシャルグラフになるわけです。

「同種のNFT」の定義ですが、ソーシャルグラフの用途に合わせて決めるのがポイントです。例えば、「同種のNFT = 同じゲームのNFT」などとすれば、ゲームの趣味が合うユーザー同士を結びつけたソーシャルグラフになります。他方、「同種のNFT = 同じキャラクターのNFT」とすれば、同じキャラクターを好むユーザー同士を結びつけたソーシャルグラフになります。

少しジャンルを変えて、クリプトアートを例にすると、「同種のNFT = 同じアーティストのNFT」とすれば、同じアーティストを好むユーザー同士を結びつけたソーシャルグラフになります。

このように、用途に合わせて繋がりの定義や範囲を決めて、柔軟に活用できるソーシャルグラフがブロックチェーンには形成されています。

シン・ソーシャルグラフ

元来、ソーシャルグラフは、SNSの普及によって生まれた言葉であり、FacebookやTwitterなどのSNSによって形成された、インターネット上の「人間関係」や「人と人とのつながり」を表しています。

つまり、FacebookやTwitterなど、サービス毎にソーシャルグラフが作られ、データもSNS等を運営する各社毎に保有されています。APIやシングルサインオンを介してソーシャルグラフに準ずるデータが提供されているとはいえ、ソーシャルグラフ自体は各社サービスを介して形成された繋がりに閉じたものになっていると考えています。

一方で、NFTによってブロックチェーン上に形成されるソーシャルグラフは下記の特徴があります。

・サービスを横断して形成される
・自然発生的に形成される
・誰でも活用できる

SNSを介さず形成され、新たな特徴を有することから、これを仮に「シン・ソーシャルグラフ」と呼びたいと思います。なお、シン・ソーシャルグラフは従来のソーシャルグラフのアップグレード版というよりは、新種のソーシャルグラフであると考えています。

特徴①:サービスを横断して形成される

既に申し上げた通り、NFTはブロックチェーンに所有者が記録されているため、誰でも所有者を知ることができます。つまり、どのゲーム、どのアーティストのNFTであろうが、所有者の情報をまとめて扱うことができるため、一つのソーシャルグラフにあらゆるNFTの所有者情報を反映することができるのです。

例えば、2020年に大ヒットした鬼滅の刃は、パズドラやモンスト、白猫プロジェクト、グランブルーファンタジーなど様々なゲームとコラボを展開しています。

もし仮に、これらのコラボのキャラクター等が全てNFT化されていたら、タイトルを問わず「ゲームで鬼滅キャラクター等を所有しているユーザー」というくくりでソーシャルグラフが形成されます。つまり、ゲーム(サービス)を横断したソーシャルグラフになるわけです。

特徴②:自然発生的に形成される

SNSを介して形成される従来のソーシャルグラフは、SNS上でユーザーが自ら操作を行うことで形成されます。例えば、Facebookであれば友達申請、Twitterであればフォローをユーザーが自ら行うことで、人為的にソーシャルグラフが形成されます。

なお、最近のSNSなどでは、FacebookやTwitterなどのアカウントを連携することで、FacebookやTwitterなどの友達やフォロワーを継承したり、友達やフォロー対象の候補として表示することができますが、ベースとなるFacebookやTwitterのソーシャルグラフは人為的に作られているので、形成されるソーシャルグラフは人為的なものと考えています。

一方で、シン・ソーシャルグラフでは、NFTの購入やギフトなどがきっかけで、NFTの所有者が増えることで、ソーシャルグラフが形成されます。つまり、ソーシャルグラフを人為的に作るアクションがなくても、購入やギフトなどをトリガーとして、自然とソーシャルグラフが形成されます。

特徴③:誰でも活用できる

従来のソーシャルグラフはサービス毎に形成され、データはサービス提供者によって保持されます。FacebookであればFacebook社が、TwitterであればTwitter社がデータを保持しているわけです。つまり、ソーシャルグラフを活用するためには、Facebook社やTwitter社などのサービス提供者が意図的にデータを開放し、許可をする必要があります。

一方でシン・ソーシャルグラフは、ブロックチェーンにデータが記録され、誰でもデータを活用することができます。

先ほども述べましたが「誰でも活用できる」状態にはメリットがある一方で、プライバシーなどのリスクがつきものです。リスクを回避する方法は今後しっかりと議論され対策せれるべきだと思います。

なお、過度な心配を避けるために念の為お伝えしておくと、ブロックチェーンのアドレスと所有するNFT情報は誰でも知ることができますが、個人情報がブロックチェーンに記録されているわけではないので、ブロックチェーンのアドレスと個人の繋がりを知ることはできません。シン・ソーシャルグラフに現れる所有者とは、個人情報を含まない、ブロックチェーンのアドレス情報になるため、決して個人情報がオープンになっているわけではありません。

シン・ソーシャルグラフの恩恵

さて、シン・ソーシャルグラフの特徴を整理したところで、具体的にどのような恩恵があるか考えたいと思います。

先に述べた3つの特徴を総括すると、シン・ソーシャルグラフは、自然発生的に形成されたサービス横断的なソーシャルグラフが誰でも活用できる、ということになります。

ここで再び鬼滅の刃を例にあげ、具体例を考えていきます。

大ヒットの影響によって、鬼滅の刃はゲームだけでなく非常に多くのコラボやグッズ(以下、鬼滅商品)を展開しています。例えば、ステッカーやティッシュ、お菓子、キーホルダー、タオルなど、スーパーやコンビニに行けば、必ず鬼滅商品が目に入るくらいです。

これだけたくさんのコラボやグッズ販売を行っているので、鬼滅商品(ゲームのキャラクター等を含む)を持っている人も非常に多くいることと思います。

もしこれらの鬼滅商品が全てNFTで作られたら、サービスや商品を横断して、鬼滅の刃にまつわる膨大なシン・ソーシャルグラフが自然発生的に出来上がります。

実際には、物理的な商品のNFT化は現時点では困難であったり、その他諸々の事情でNFT化できないものもあるので、全ての鬼滅商品をNFT化することはできませんが、ゲームやステッカー、トレーディングカードなど、可能なものをNFT化するだけでも十分なシン・ソーシャルグラフが出来上がると思います。

このシン・ソーシャルグラフによってどのような良いことがあるのか。一つ具体例を考えてみます。

ファンコミュニティサービス

鬼滅の刃にまつわるシン・ソーシャルグラフに現れる所有者は、程度の差はあれ、少なからず鬼滅の刃が好きなファンであると考えられます。

つまり、鬼滅商品によって出来上がったシン・ソーシャルグラフをベースに、鬼滅の刃のファン同士をつなぐSNS(ファンコミュニティサービス)を作れば、自然発生的に出来上がった趣味嗜好の繋がりを活かした、ファンコミュニティサービスを実現できます。

シン・ソーシャルグラフは所有をベースに形成された繋がりであることから、「同じ商品を持った人同士」、「同じキャラクター商品を持った(同じキャラクターが好きな人)同士」の繋がりなどがわかります。

「同じ商品を持った人同士」や「同じキャラクターが好きな人同士」は、共感も生まれやすいですから、コミュニケーションも盛り上がります。

キャラクターが好きな人同士では、

「君も煉獄(れんごく)さん好きなんだ〜。煉獄(れんごく)さんの〇〇が良いよねー。君はどんなところが好きなの?」

同じ商品を持った人同士では、

「君もこのゲームプレイしているんだ〜。このゲームでの炭治郎って〇〇だよね〜」

といった感じで、ファントークに花が咲くわけです。

従来の仕組みでもファンコミュニティサービスやSNSで、このような盛り上がりは生まれると思います。しかし、シン・ソーシャルグラフによって、ファンの中でも趣味嗜好の繋がりがより細分化されてわかるため、ファンの中でもさらに趣味嗜好が会う人同士をシームレスに繋ぐことができます。

程度の差と言えばそれまでですが、ファン同士の中でも細分化された趣味嗜好の人同士と繋がりやすくなれば、より熱量や盛り上がりのあるコミュニケーションが期待できるのではないでしょうか。熱量や盛り上がり具合が違えば、体験は全く異なります。

鬼滅の刃から例えがそれますが、ファイナルファンタジーのストーリー解説を行っているとあるYoutubeチャンネルでは、配信者がティファ(FF7のヒロイン)好きであることを公言しており、ティファ好きの視聴者がコメント欄で盛り上がっているのを見かけました。妙な熱量みたいなものが面白く、コメント欄をつい見入ってしまいました。シン・ソーシャルグラフによって、このような体験がより活発に起こる可能性を秘めていると思います。

その他にも、キャラクターのコラボ商品の所有数によって、キャラクターのファン称号をつけたり、新たなコラボ商品を買うとファンコミュニティーの仲間からリアクションがもらえるなど、コミュニティを盛り上げる仕組みがたくさん作れると思います。

このように、シン・ソーシャルグラフをファンコミュニティサービスを組み込むことで、より熱量や盛り上がりのあるファンコミュニティーサービスが作りやすくなると考えています。

そして、このファンコミュニティーサービスのように、シン・ソーシャルグラフを活用したサービスは、誰でも作ることができます。

つまり、作者であれ、ファンであれ、版権元であれ、シン・ソーシャルグラフを活用できるのです。もちろんファンコミュニティーサービスなどのWebサービスを作ること自体に、プログラミングの知識やお金がかかるといったハードルはありますが、ECのSpotifyやBaseのように、いずれはファンコミュニティーサービスなどを簡単に立ち上げられるプラットフォームが出てくる可能性もあります。

重要なポイントは、誰でもシン・ソーシャルグラフを活かすチャンスがあるということです。

・ファンとの繋がりをもっと強くして作品を届けたい、という作者の想い
・同じ作品を好むファン同士のコミュニケーションをもっと楽しみたいという、ファンの想い
・ファンコミュニティを盛り上げコンテンツの価値を高めることでビジネスを成長させたい、といった版権元の戦略や想い

などなど、シン・ソーシャルグラフを活用する人の立場によって動機はさまざまですが、何らかの動機でファンコミュニティサービスが欲しい、と思う人がいれば、サービスを生み出すことができるのです。

シン・ソーシャルグラフは既存サービスにも組み込める

さらにシン・ソーシャルグラフは、誰でも活用できる、という特性から既存サービスに組み込むこともできます。

Gaudiy社のコミュニティサービス「みんなのネバーランド」

Gaudiy社が提供している、人気漫画「約束のネバーランド」のコミュニティサービス「みんなのネバーランド」を例にあげます。

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こういったファンコミュニティサービスにシン・ソーシャルグラフを活用した仕組みを加えると、新たなコミュニティ体験が生まれる可能性を秘めています。

なお、Gaudiy社はもともとブロックチェーン×エンターテインメントを事業領域としており、分散型ID(DID)を軸として、IPコンテンツのクロスメディア施策やIPコンテンツの経済圏構築などによって、IPを中心とした新たな価値を提供できる世界を目指しています。

NFTによって生み出されるファン同士の繋がりを活かし、新たな価値を生み出すために、既にシン・ソーシャルグラフの活用を視野に入れている可能性は大いにあると思います。

新世代のクラウドファンディング2.0 「FiNANCiE」

もう一つ、フィナンシェ社が提供しているクラウドファンディングサービス「FiNANCiE」を例にあげます。

FiNANCiEは、夢を実現したいスポーツチーム・インフルエンサー・アーティスト・アイドルなどがトークン(FT&NFT)を発行・販売し、トークンの売上を夢の実現に役立てるサービスです。つまり、スポーツチーム・インフルエンサー・アーティスト・アイドルなどのファンや応援者が、トークンを購入することで、夢の実現を支援できるのです。

FiNANCiEでは、トークンを発行・販売するスポーツチーム・インフルエンサー・アーティスト・アイドルなどをオーナーと呼び、オーナーのトークンを購入したユーザーをサポーターと呼びます。

オーナーはFiNANCiEのアプリ上で、トークルームを作ることができ、

・サポーターのみ閲覧可能
・誰でも閲覧できるが、サポーターのみ発言可能

といった感じに、サポーターに特権を用意することができます。

つまり、トークン(FT&NFT)の購入によってオーナーと繋がっている人にだけに、特権を用意したり、交流の場を提供したりできるのです。

このように、FiNANCiEには既に、シン・ソーシャルグラフに近しいものが組み込まれています。

あえて、「近しい」と表現したのは、現段階では、FiNANCiEで作られたトークン(FT&NFT)による繋がりのみに対応しており、FiNANCiE以外で作られたトークン(FT&NFT)には対応していないためです。つまり、トークン(FT&NFT)によって形成されたものではあるものの、サービス横断的に形成された、ソーシャルグラフではないため、シン・ソーシャルグラフの特徴を完全には有していません。

しかし、将来的にFiNANCiEのトークンによるソーシャルグラフがシン・ソーシャルグラフに拡張される可能性はあります。

例えば、FiNANCiEのオーナーであるアーティストが、他のサービスでクリプトアート(NFT)を作成し、販売したとします。そのクリプトアートの所有者も含めて、FiNANCiEのサポーターとみなし、サポーターの繋がりを活かした機能を提供することができます。FiNANCiEの外で繋がったオーナーとサポーターの関係を活かすことで、FiNANCiEはいちサービスに閉じない幅位広いユーザー体験を提供できる可能性を秘めています。

このようにシン・ソーシャルグラフは、既存のソーシャルグラフを拡張することでサービスに組み込むこともできるのです。

拡張可能な所有体験

さて、シン・ソーシャルグラフを活用したサービスの可能性を探ったところで、NFTの本質的な価値とは何かを考えたいと思います。

結論から申し上げると、「拡張可能な所有体験」を得られることが本質的な価値だと思います。

先ほどの鬼滅商品とファンコミュニティサービスを基に、具体例を考えてみます。

これらの例では、ゲームキャラクターやステッカーなどがNFT化されているわけですが、ゲームキャラクターやステッカーの本来の所有体験は、

【ゲームキャラクター】
・ゲームの中で遊んで楽しむ
・ゲームの中で眺めて楽しむ

【ステッカー】
・ステッカー(NFT)の表示に対応したウォレットなどのアプリ画面上で眺めて楽しむ

などがあげられます。これを「一次的な所有体験」と呼ぶことにします。

一方で、「同じ商品(NFT)を持った人同士」、「同じキャラクター商品(NFT)を持った人(同じキャラクターが好きな人)同士」の繋がりのよって、ファンコミュニティサービスで生まれたファントークは、NFTを所有していることによって生まれたものですから、NFTの所有体験の一部と言えます。この体験は、NFT本来の所有体験ではなく、二次的に生まれたものなのであり、「二次的な所有体験」と呼べると思います。

シン・ソーシャルグラフを活用したサービスが増えるほど、この「二次的な所有体験」が増えることになります。

例えば、NFT化された鬼滅商品の中で、特定のキャラクターのNFTを持っているファンが、そのキャラクターに関連するイベントに参加できる権利を得られるサービスが作られたとします。

炭治郎のNFTを持っているファンは、炭治郎の声優さんのサイン会に参加できるといった具合です。つまり、炭治郎のファンは、NFTを持っていることで、声優さんのサイン会に参加するという体験を二次的に得られることになるわけです。

このように、シン・ソーシャルグラフを活用したサービスが後から増えていくことで、NFTの所有体験がどんどんと拡張されていくことになります。

シン・ソーシャルグラフは「誰でも活用できる」という特性上、不特定多数の人々や事業者によって、NFTの所有者に向けた二次創作的なサービスが多数生まれる可能性を秘めています。

二次創作的なサービスとは、「NFTの発行元以外」が作ったサービスを示しています。

例えば、NFTの発行元とは、

・ブロックチェーンゲームのように、自社でNFT(キャラクター等)を発行しているゲーム会社
・「SuperRare」や「Rarible」など、クリプトアートを発行できるサービスの提供者

などが当てはまります。一方で、先の例のファンコミュニティサービスは、NFTの発行元が作ったサービスではない場合、二次創作的なサービスに当てはまります。

バーチャルコレクションルーム「Conata(こなた)」

実例をあげると、「Conata(こなた)」というサービスが、まさにNFT所有者に向けた二次創作的なサービスと言えると思います。

Conataは、3D空間内で自分の所有するNFTを鑑賞したり、NFTを売買できるサービスです。サービス内にユーザー自身の部屋があり、自分が所有しているNFTを3D空間内で鑑賞することができます。

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また、Conataでは、「Crypto Art Fes」というクリプトアートの展示会が3D空間で開催されています(2021年4月14日現在)。

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現時点では、Conataの運営側の企画によってのみ開催されているように見受けられますが、将来的にはユーザーが自由に展示会を開ける可能性もあります。

このようにConataでは、3D空間内で自身のNFTを鑑賞したり、展示会を楽しんだりと、NFTの鑑賞体験を拡張するサービスだと考えられます。そして、この拡張された鑑賞体験もまた、二次的な所有体験だと言えます。

Conataのように3D空間内にNFTを表示できるサービスには、「Decentraland」や「Cryptovoxels」などがあり、既にいくつもサービスが出てきていることから、鑑賞体験の拡張は、NFTの所有体験を拡張するものとして、主流になっていくと思われます。

現時点では、Conataはシン・ソーシャルグラフを活用していないように見受けられますが、3D空間内でのユーザーコミュニケーションを充実させる過程で、活用されていく可能性もあります。

なお、所有体験の拡張は、Conataのようにシン・ソーシャルグラフを活用しなくても実現できますが、シン・ソーシャルグラフを活用することで、所有体験の拡張をより強力に実現できるものだと考えています。

所有体験の革命

このように、既にNFTを活かす二次創作的なサービスが生まれてきており、今後NFTが増えるほど、二次創作的なサービスもどんどんと増えていくことが予想されます。

そして、クリプトアートであれ、漫画グッズであれ、二次創作的なサービスが増えるにつれて、後付けでどんどんと所有体験が拡張されていくことが、NFTの本質的な価値なのではないかと思います。

さらに、不特定多数の人々や事業者が作成可能なため、多種多様なアイディアから二次創作的なサービスが生まれてくると考えています。これにより、NFTの所有体験もまた有機的に拡張されていく可能性を秘めています。

NFT化されるコンテンツ自体も二次創作的なサービスも、まだまだ手探り状態で、キラーコンテンツや強力な所有体験を模索している段階だと思いますが、昨今のNFTブームにより、コンテンツ提供者やサービス開発者がこれまでよりも圧倒的に増えたと感じております。コンテンツ提供者やサービス開発者が増えれば、試行錯誤の数も膨大に増えるため、ブレークスルーが生まれる可能性が一気に高まったと思います。

そして、昨今のNFTブームの先にブレークスルーが生まれれば、「有機的に拡張される所有体験」が実現されることと思います。所有体験が有機的に拡張されるということは、所有体験が無限に増殖するということであり、まさに所有体験の革命だと言えると思います。

最後に

今回、シン・ソーシャルグラフ「拡張される所有体験」という概念的な整理を行いましたが、NFTを発行する事業者やアーティストなどが、このような概念をもち、NFTのポテンシャルをより発揮させるコンテンツ作りをすることで、今までにない新しい世界が開けることを期待しています。

今回の主題はシン・ソーシャルグラフであり、シン・ソーシャルグラフの活用を中心に、「拡張される所有体験」に触れましたが、「拡張される所有体験」に関して、まだまだ語りきれていない部分があります。機会があれば、「拡張される所有体験」をテーマに記事を書きたいと思います。

記事中の具体例は、思考量の不足、個人の発想の限界などにより、十分に魅力的な例をあげることはできていないかもしれませんが、シン・ソーシャルグラフや「拡張される所有体験」という概念が、新しい所有体験を生み出す一翼を担えれば嬉しく思います。

また、シン・ソーシャルグラフや「拡張される所有体験」のポテンシャル、活用アイディア、リスク等に関して、まだまだ考えきれていない視点や発想があるため、本記事は原案といたしました。今後、シン・ソーシャルグラフや拡張される所有体験、NFTのポテンシャルに関して、思考を重ねていきたいと思います。新たな発見や実例、概念のアップデートなどがあれば、記事にいたします。

追記:シン・ソーシャルグラフは、トークングラフと呼ばれている

本記事でシン・ソーシャルグラフと仮称させていただいたものは、クリプトキティーズの生みの親である「Dapper Labs」のプロデューサーのベニー・ジアン(Benny Giang)さんが、トークングラフと呼んでいるそうです。

混乱を避けるために今後はトークングラフと呼んだ方が良さそうですね。勉強不足でした。

詳しくは「あたしい経済」さんのこちらの記事に掲載されています。


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ありがとうございます!良い記事を書けるようにがんばります!!
青木 宏文
doublejump.tokyo のN Suite責任者。 元メタップスアルファ取締役(メタップスの元ブロックチェーン事業責任者)。ARCHECO元CEO。その他の専門は、UXデザイン、システムエンジニアリング。