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お城はビジネスモデルとしてどうなのか?後編

少しサボってしまいました。。。前回の続きです。

建設費を考えないランニングだけのキャッシュフロー(入場料-運営費)では「どうもランニングベースのキャッシュフローでは利益が出ている」というところまでが前編。後編では開発による巨額建設費にアプローチします。元々のテーマは安土城を再建するのに、建設費はどう言うロジックで捻出すべきか、でした。

大変お待たせしてしまったので、問いへの結論から。

結論

建設費は名古屋を例にとると、鉄骨300億もしくは木造500億です。これを回収するためにはどうしたらいいか。仮に改修まで50年とすると耐用年数50年で償却しなければならないので、以下のような計算になります。

300億円÷50年=年間6億円の償却
500億円÷50年=年間10億円の償却

年間のPLにこれだけのマイナス が初めから乗ってくるわけですね。名古屋や大阪城、姫路城クラスの収入があっても年間3億程度の利益ですから、もう初めから難しいと言わざるを得ないと思います。国宝でもなく、想像による復元ですからかなり厳しいといえるでしょう。

建設費を回収できる見込みはかなり薄いですが、滋賀県が保証する超長期債が500億円分売れるならやればいいと思いますが、滋賀県の借金が増えるだけになりそうな気がします。

でもここで終わってしまっては面白くないので、どうすればできるのか?もう少し掘り下げてみたいと思います。と言うのは、安土城の復元や再建だと収入が入城料くらいしか取れないので、500億円の建設費に見合わない。

もっとROI良いビジネスモデルがあると思います。

周辺ビジネス1 大洲城キャッスルステイ

まずお城単体ではなくお城を中心とした町全体の開発の事例。お城ステイも話題になりましたが、本丸は城下町での古民家ステイだと思います。天守閣は文字通り、みんなのランドマークに過ぎないと思いますね。

お寺の宿坊体験もコロナ前までは人気でしたが、寺そのものに泊まるのではなく、周辺に泊まり、体験を通じてお寺に泊まった、と思っているはずです。城下町でも十分じゃないでしょうか。

その建設費用は16億円(安い!)

周辺ビジネス2 大阪城パークマネジメント事業

前編でも触れましたが、大阪城は城をふくめた公園全体を民間に委託しています。ものすごくざっくりと要点を以下に載せます。

何と売上の半分以上は天守閣の観覧料以外です。周辺の方も十分儲かる。駐車場4億円ってのが凄い。

売上高27億円 
(以下内訳1億円以上)
ー12.7億円 天守閣
ー4.5億円 駐車場 
ー3.2億円 MIRAIZA OSAKA-JO(旧第四師団司令部庁舎)
ー2.7億円 J0-TERRACE OSAKA
ー2.0億円 公園利用収益
ー1.0億円 庭園


【おまけ1】税金はどのくらい期待できるか

名古屋城でこんな面白い記事がありました。河村市長と市民オンブズマン(情報公開を請求している)のやり取りです。河村市長の回答もどうかと思いますが、唯一「お!」と思ったのがこの箇所。お城の経済効果からどのくらい税収が増えるのかわかるんですね。あっているかどうかは別として参考になります。だから市長は名古屋城を再建したいんですね。

個人的には、経済効果も市税への影響もかなり甘い計算だと思います。名古屋城だけで経済効果100億円かどうかは、しかも木造にしたら100億円の上積みされる、とは思えない。。。ただ、市長が経済効果と税金の関係をこう考えているんだな、と参考になりました。

どちらかと言うと積み上げたロジックから再建問題を出した、と言うより、どうしても再建したくて後からロジックで保管した、と言う典型のように見えます。

【一般】100億円の経済波及効果があったら、市税はどの程度増えると考えているか
【市長】名古屋のGDPが11兆で、税金が2.6兆程度。名古屋市に入る税収だと5000億。だいたい5%程度と考えると、100億円の経済波及効果で年間5億円程度、市税が増えると見込まれる。

【おまけ2】寄付はどのくらい期待できるか

伊勢神宮の式年遷宮
驚異的な集金力です。何と300億円は自己資金。そして、財界から100億円、神社界から100億円。

自己資金330億円のうち、最大の収益源となるのが、全国の神社で頒布されている「神宮大麻(天照大御神のお札)」の初穂料である。13年度の神宮大麻の頒布数は874万体。1体当たりの“目安”は800円なので、1年で約70億円が歳入として計上される。そのうち、約半分が「宗教法人 神社本庁」という神社の“総元締め”に手数料として抜かれ、残りの約35億円が伊勢神宮の懐に入る。
財界と神社界でそれぞれ100億円強ずつだという。遷宮を行うたびに、「式年遷宮奉賛会」という組織が立ち上げられ、そこから補助金が支払われる(図参照)。13年の遷宮では、岡村正・元日本商工会議所会頭が号令を掛けて、日本経団連参加企業もそろって寄付に応じた。

名古屋城
伊勢神宮に比べるとかなり可愛いものです。毎年減っています。。。

名古屋城寄付額

姫路城
ガバメントクラウドファンディングを今年行いました。が、結果としては微妙。。。277万円。

さらにはふるさと納税単体でも行っています。過去11年合計で2億5000万円ほどです。

最後に

冒頭でも結論として述べましたが、安土城に関しては300億円、500億円も建設費にかかるなら「想像」で再建するべきではないと思います。大洲城も想像ではなく、学術的に意味のある形で再建し、建設費用も16億円です。これなら十分回収できるでしょう。

それと、城の観覧収入だけではなく、周辺まで含めた宿泊、公園開発、まで視野に入れればかなりのキャッシュが見込めると思います。いつか手掛けたい!

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