【第6話】 エンフィールド修理工🇮🇳
このチェンナイという街に来たのは東京からの航空券が安かったからだ。だが、デリーにも同じ価格で行くことができた。取材をして回るなら、行ったことのあるデリーでも良さそうだが、なぜ初めての街チェンナイを選んだか。
実は一つ期待していたことがあった。この街では自分の乗っているバイクのパーツが安く買えるらしいと聞いていたからだ。その名をロイヤルエンフィールド、現存する最古のバイクメーカーだ。例えパーツが安く手に入らなくても、店を冷やかして回っていれば取材のきっかけになるかもしれない。
調べるとその界隈は宿から少し距離がある。明日はバンガロールへ向けて出発の日だ。体力のことを考えると迷ったが、やはり安いパーツの方が勝った。
話し出すと長くなる人がいる。時には2時間も止まらない人がいるが、彼がまさにそうだった。それまで映像編集など一度もしたことがなかったが、随分長いなと思いレコーダーの表示を見るともう2時間。これをどう編集するのか先が思いやられた。
それにしても、どうして職場に入れてくれるのだろう。ここインドだから許されるのだろうか。どんな旅行をしていても、他の地域と比べインドは特別なところがある。だとしたらこの国を初めに選んだのはやはり正解だったと言える。
旅の最後まで大切に運んできたバイクのパーツは、出国の際に空港でほとんどを捨てるはめになった。最安のチケットを買ったばかりに、預け入れ荷物の枠はなかったらしい。どうせ余分な鞄もない。あきらめた。俺には撮った映像がある。それで十分だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?