【第39話】 鼻歌に乗る少年🇲🇲
ヤンゴン河をフェリーで渡るとダラ地区だ。初めてだったがこちらから人を探す必要はなかった。降りてきた客をタクシーに乗せようと客引きの男たちが押し寄せてきたからだ。そのうちの一人、見た目は少年そのものだが鼻の下に薄い髭を蓄えている彼は「取材?いいけど、いくら?」と金額次第だと言う。「2時間あったらいくら稼げるの?」と聞くと1万チャットだそうだ。それが掛け値なしに感じられたので手を打つことにした。きっと彼も「取材」というのに興味が湧かなかったわけではないのだろう。
彼とは取材を中断して一緒に遅めの昼食をとった。食後、コーヒーを飲みながら色々なことを話した。家族のこと。友達のこと。近くにあるショッピングモールのこと。車の運転もさせてくれた。
車は知人に借りているので稼ぎはそのレンタル料を差し引いた分だが、それなりに残るという。少年は少し強がった感じで話しているようだった。だから、もしかしたら稼ぎと言ってもいくらも残らないのかもしれない。親の世話をしているとも言っていた。
だがスマホの話になると目の色を変え「ねぇ、そのスマホ、俺のと交換しない?」と最後まで粘られた。「このスマホも随分と古いんですけどね」と言って少年の手の中を覗くと、彼はバキバキに割れたスマホを握っていた。
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