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【建築】 建築ファンなら訪れるべき超エリート大学MIT(前編)

マサチューセッツ工科大学。通称MIT。
言わずと知れた工学系の世界的超エリート名門大学である。世界大学ランキングでも毎年トップグループに位置し、ノーベル賞受賞者も多数輩出している。いずれも私には1mmも縁はない。
そんな敷居の高い大学であるが、建築ファンには見逃すことができないキャンパスでもある。


MITはボストンからチャールズ川を挟んだケンブリッジにある。
( ↓ ケンブリッジ側から見たボストン市街)

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MITの創設は1865年だが、ケンブリッジへの移転は1916年なので、キャンパスとしてはそれほど歴史があるという訳ではない。したがって近代または現代建築が多いのだが、これまでに錚々たる名建築家によって、校舎・研究所・学生寮といった施設が手掛けられてきた。


Maclaurin Buildings (Buildings 3, 4, 10) & Great Dome
最初に紹介するのはMITの象徴でもあるBuildings 10。
1916年の竣工なので、ケンブリッジにおける最初の校舎の一つでもある。
建物前のKillian Courtは毎年卒業式が行われる広場だ。普段は学生がくつろいでいる。

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Ray and Maria Stata Center (Building 32)
フランク・ゲーリーによるStata Centerには、電気工学やコンピュータサイエンス部、人工知能部など様々な部門の教室、研究室が入っている。

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個人的には、ゲーリーの最高傑作ではないかと思うほどの建築だ。
積み木をひっくり返したようなぐちゃぐちゃのフォルム、ガラス・レンガ・ステンレスなど様々な素材を使った仕上げ、迷路のような動線...。

建物が遊び心に溢れて、「研究者はその心掛け(遊び心)を忘れてはならない」と言うメッセージが込められているようにも感じる。

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ちょっとしたイベントができる円形広場もある。

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この辺りはさらに複雑な組合せで、どんな構造になっているのかも分からない。設計も施工もよくやったなあ。(ただし後になって、ゲーリーや施工会社はMITから設計・施工不良の訴えを起されたのだが...)

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エントランスもゲーリー砲炸裂!

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1階はスチューデント・ストリートと呼ばれるパブリックエリアで、教室、カフェや自習コーナー、イベントスペースが並んでいる。
吹き抜けの高い天井から光が入り、カラフルな掲示板やボードが掲げられた通路はいかにも大学といった雰囲気があり、ただ歩くだけでも楽しい。

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教室やラボからスチューデント・ストリートを見下ろせる窓もある。

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ここなど外部のレンガ仕上げがそのまま内部にも続いている!
建物内では竣工後に雨漏りが発生した箇所もあるらしいが、こういう納まりであれば、あり得るよね。(←設計のチャレンジ精神を褒めている)

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2階より上のラボや教授室のあるフロアは複雑な迷路のようになっており、初めて行くと迷ってしまうそうだ。迷っている内に思わぬところで思わぬ人同士(研究者や学生)の出会いがあり、そこからまた新しい研究成果が生まれるのだとか。そういったことも実はプログラムとして計算されているそうだが、本当かな?


Simmons Hall
スティーヴン・ホールによるSimmons Hallは学生寮の一つ。ファサードのデザインは賛否両論あるらしい。私は嫌いではない。

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約5,500枚の2フィート(61cm)四方の小窓が全面に設けられている。

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この窓枠が赤・青・黄・緑等のカラーパネルになっていて、角度や光の方向によって印象が違って見える。

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この建物には”スポンジ(海綿体)”という愛称があって、外観は直方体だが、内部はその名の通り有機体のような曲面を多用したデザインになっているそうだ。
そのため「デザイン優先で使い勝手や動線が悪い」と学生からの評判もあまり良くないとか。


Baker House
こちらも学生寮で、アルヴァ・アールトによる設計。アールトは1940年代にMITで数年間教鞭を執った。

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建物を緩やかなカーブを描く変則的なW形の平面プランとすることにより、出来るだけ多くの部屋から川越しにボストンの街並みが見えるよう配慮されている。

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ファサードに目を向けると、張り出した階段室が目立つ。

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しかしアールトと言えばやはりレンガ。ここのレンガも特徴ある粗い仕上げ。

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そして木枠の窓。これぞアールト!

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アールトの学生寮は、現代的・工業的な建物が多いMITキャンパスの中では少々異色であった。実際にこのレンガ仕上げの建物は、竣工時は「古くさい」ということで、必ずしも評判が良かったわけではないらしい。しかし私は無機質な建物群の中で、数少ない温かみを感じさせてくれる建築であると思った。
アールトは設計者としては多作であるが、アメリカ(USA)には作品は少ない。その意味でも、これからも大切に使われてほしい。


少し長くなりそうなので、リスと目が合ったところで小休止。後編に続く。

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