見出し画像

SAIKAI@MIYUKI・第7話「それは辛過ぎて…」

美幸と音信が途絶えた理由は分かった。
それでお互い心のつかえがとれたはず、しかし
美幸が今も独身でいる理由、今度はその事が気になり出した。美幸はもしかしてその理由もこれから俺に教えようとしているのか?

となると……ひとりでいるというその理由を「俺に教える理由」ってなんなんだ?まさか……俺の事をまだ……いや、流石にそれは出来過ぎた妄想、そこまで人生うまくいくはずがない。50数年生きてきた経験でそれは痛いほど分かっている。

とにかく美幸からのLINEが来ない事には何も始まらない。俺は美幸からのLINEをひたすら待ち続けていた。しかしそれから1時間、一向にLINEは届かず…やはり自分の過去を久しぶりにSNSで再会したばかりの俺にベラベラとおしゃべりするような事ではないと気づいたのか?

それとも……それはあまりに辛過ぎてそれを思いながら打ち込んでいる手が止まっているのか?

そう思っていると美幸からLINEが来た。
約1時間、何を思い何を考えこのLINEを打ってきたのか?それを思うと複雑な思いだった。
期待と不安のなか、俺はそのLINEを開いた。


ごめんね、遅くなって…今、思うと急に辛くなって…躊躇してしまって…でも、やっぱりヒロちゃんには伝えたくて…。

名古屋の高校に転校したけれど、クラスの子達と馴染めなくて登校拒否になった私を母親は心配して祖母が看護師長をしていた病院の看護学校を紹介してくれた。母親もそこで看護師として働いていたので真面目に勉強して看護師を目指したの…。

そして無事に看護師として働き出したのが20歳を過ぎてから、系列のUK病院というところで…3年間働いて、スキルも身につけて、もう少しレベルアップしたいと思って他の病院に行こうと思った時に母が病気で倒れて……。


長いラインの文章はそこで一旦途切れた。
もし不登校がなかったら、もしかしたら違う道を進んでいたのかもしれない。でも看護師という道に進んだということは、それも縁だったのかもしれないし、それはそれで良かったと思う。でも…お母さんが病で倒れて……そこからなのか?美幸の不幸というのは?

次のLINEが来るまでしばらく時間がかかった。
何か返信をすればよかったのだが何をどう返したら良いのか?その時点では言葉が思いつかず、俺はそのまま彼女のLINEを待つしかなかった。

人の人生って順風満帆ではない。長く生きていればいるほどそれは痛いほどわかる。でも俺としては今が充実していれば過去の辛かった事は懐かしい思い出にすればいいと思っている。
果たして美幸は今、幸せなのだろうか?

こうやって俺と繋がってきたことは心の余裕があるくらい今、幸せだからだと信じたい。
しかし、過去のことをこうやって話し出すということはその過去の辛さをまだ引き摺っていて
その辛さを俺に知って欲しいということなのだろうか?そして俺に心の拠り所となって欲しいという意味なのだろうか?

これからの話を聞いてみないとわからない。
でも美幸がそれを求めていたとして、果たして俺はどうすればいいのだろうか?美幸の事が
心のどこかに引っ掛かっていてこの歳まで1人でいるのは間違いないのだが、あれから40年近くが経った今、彼女をあの時のような気持ちで受け入れることは出来るのか?

いやいや、また悪い癖だ。勝手に一人で妄想を膨らませているだけだ。彼女、美幸の思いも聞いていないうちから、そんなことを考えるのはあまりに愚考である。まずは彼女の話を最後まで聞く事が今は大切な事だ。

そんなことを思っているうちに美幸からLINEが入った。このLINEはかなり重たい内容のような気がしてならない。俺は美幸が今幸せだからできる話だと信じてそのLINEを開いた……。

           〜第8話に続く〜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?