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My Love~高校生編・第8話・「How many いい顔」
その日は金曜日だった。明日も「半ドン」とは言え学校だった。
自分の言いたい事を何のオブラートにも包まず裕華の心の中にど直球、ど真ん中に投げ込んでしまった次の日となるわけで…。
その裕華と、しかも1番近い隣で顔を合わさなければならない。
「どうしてあんな事、言っちゃったんだろう…。」
確かに僕は大人げなかった。今思うと「ガキ」そのものであった。しかし後悔先に立たず!全てはあの一言で終わってしまうのだろうか?
嫌だ………そんなの絶対に嫌だ…。
まずは謝ろう。真摯に自分の非を認めて、例えどんな結果になってもいい。まずは謝ろう。
今日は4時間授業だったのでまだ、自宅に帰ってのんびりしていてもまだ2時半だった。
電話しよう…電話して謝ろう。でも…嫌だなぁ。出た途端にすぐ切られたらどうしよう…。
まったく持って不安な事があるときはすべて物事「ネガティブ思考」になってしまう僕。まだまだ人間が出来ていない、悲しい。
さて……何と言って謝ろうか? ちゃんと考えて言葉を選んで………え~い!そんな綺麗な事並べても気持ちは伝わらない。今日の放課後、言いたい放題言ったようにストレートに行くしかない……。
電話をかける心の準備ができた。とりあえず深呼吸…。プッシュホンは速すぎた。もう接続準備は完了してしまった。
呼び出し音が鳴る。1回、2回、3回………。ドキドキしてくる。心臓が飛び出そうだ…。
今のようにナンバーディスプレイ機能があるわけでもなく、携帯電話のように着信拒否が出来るわけでもなく…しかも、当時はまだ留守番電話機能を持った電話機もなかったので誰か家にいる限り電話には出るだろう。
この時代に携帯電話があって、メールやLINEがあったのなら……いや、なかったほうが良かった。このままでよかったのかも知れない、それが歴史というものだ。
5回目の呼び出しの音が終わると同時に電話が繋がった。
「もしもし、柏木です。」
裕華の声だった。全身が炎の如く、一気に熱くなり、そしてこれから向き合う現実を思うと急速に青ざめていった。
「あのー……荒木です…。」
「あっ、ヒロちゃん?………。」
裕華の声が聞けたのは嬉しくもあり、そして少し辛くもあった。
「あの……え~と……どうやって何を言ったらいいのか……裕華ちゃんの声、聞いた途端、全部吹っ飛んでしまって……えーと…。」
「…ごめんなさい。ヒロちゃん。」
「え? 裕華ちゃん、なんで謝るんだよ。謝るのは僕のほうだよ…本当にごめんなさい。」
暫し沈黙が続き、やがて裕華がゆっくりと喋り出した。
「私ね……なんでヒロちゃんに何であんな事言われたのか、考えたの……自分の好き勝手な事ばっかり付き合わせて、ヒロちゃんの気持ちなんて、全然考えてなかった…。トシちゃんの話ばっかりでつまんなかったでしょう?
ヒロちゃんの素直な気持ち、私に伝えてもらったのに……私、それに全く答えられなかった。
ヒロちゃん、ほんとにごめんなさい……私のこと、もう嫌になったでしょ?でも私……ヒロちゃんに………嫌われたくない……。」
裕華はすすり泣きながら、声を震わせて話してくれた。今、正直に伝えてくれた彼女の気持ちに悔しいけど僕は「完敗」だった。彼女は僕以上に冷静で、大人で…それなのに僕は裕華にあんな罵声じみた荒げた声を吐き捨ててしまった。嫌になったのは裕華じゃなくて僕自身だった。
どんなことがあっても裕華を嫌うものか、だからこそ僕は裕華にこう言った。
「裕華ちゃん、時間ある?桜町の『恋話館』まで来れる?やっぱり会って……会って話をしたいんだ……。」
「うん、私もヒロちゃんに会いたい…。」
「じゃ、先に行って待ってる。」
僕は身支度もままならない状態で家を飛び出し近所の喫茶店「恋話館」へと走った。
どんな顔して会えば良いのか?そんな不安を抱えながらも、少しでも早く裕華に会いたいという一心で…。
〜第9話に続く〜
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