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My Love~高校生編・第14話「さよなら…」

席替えしてひとみちゃんと一緒の席になってから1週間ほど過ぎようとしていた。
あんなにうるさくて暴力的(?)で攻撃的だった彼女がここ最近何故かおとなしい。



「ひとみちゃん、元気ないねぇ、どうした?」


「実はちょっと悩んでいて…。ハア~っ」


「ひょっとして…それは恋の悩みだったりして?」




「………そうなの、好きな人がいてね…告白みたいな事しちゃったわけ、そうしたら彼に『別に好きな人がいる』って言われて…。」



「誰なの、告白した好きな人って?」



「……… 隆行 」



え?隆行? やっぱ……あいつってもてるんだなぁー。




「隆行、かっこいいもんなぁ、でも隆行に好かれちゃった女の子はラッキーだよね、誰なんだろう?」


ひとみちゃんは僕の顔を見てとんでもない一言を発した。




「柏木裕華、あなたの彼女が好きなんだって…」







な・な・な、何~~~~~~~~~~い?






隆行の「ばかちんがぁ~!」何言っとる!
ひとみちゃんも「荒木君の彼女を好きになるなんて頭おかしいんじゃない?」っ言ってやったそうだ。でも真剣にアタックされたら…取られる可能性は大きい…。
って……ばかなこと考えるなよ! おい!



「ひとみちゃん、で、隆行、そのあと何て言ってたの?」



「ヒロユキの彼女っていうことはわかっているけど、少しでも可能性があるならば彼女を振り向かせてみたい!って言ってた。」



そんな言葉、あの顔と雰囲気で裕華に言われたら……。


や・やばい!それはいかーーん!完全に錯乱状態だった。そのとき、ひとみちゃんが



「荒木君、こうなったら2人で協力してお互いの人を守ろうよ!ね、いいでしょ?」


「おう、裕華をあんないい男にとられてたまるかぁ」


「何か、それって変だよ!あんなやつに、じゃないの?荒木君。」


「あれ、ほんとだ!あははははは~!」



「いやだぁ、トシちゃんそっくり、その笑い!」


「あのね、僕はねミッキーのぬいぐるみと一緒に寝るんだよ、あっははは」

「ぎゃははは~、荒木君、トシちゃんのまねうま~い!!」



僕らはすっかりと意気投合してしまった。




「ね、荒木君、作戦会議しようよ!明日土曜の午後、明日部活ないからマルニデパートの向かいのミスドで待っててね!2時に行くから、裕華と隆行には絶対に内緒だよ!」



「わかった、コーヒー飲んで待ってるよ。」







「裕華、明日友達と遊ぶから日曜日にデートしよう。」



放課後、少し後ろめたい思いで裕華にこう伝えた。



「うん、わかった。じゃ、日曜日楽しみにしてるね、ヒロちゃん!」




僕は裕香に対して嘘をついたのだろうか?
ひとみちゃんとはただの『友達』
嘘はついていないと、このときは思ったのだが…。






土曜日になった。一度家に帰ってラフな格好に着替えてミスドに向かった。ボックス席に座りコーヒーを飲み始めて約10分、やがてひとみちゃんがやってきた。

ショートヘアによく似合う白いTシャツ、そして…ジーンズのショートパンツ。長い脚に白いソックスと赤いスニーカー。
もともと顔は悪くない。スタイルもいい。

163cmと当時の女の子では断然大きかったが、女の子らしい笑顔は一緒にいても悪い感じはしなかった。





「荒木君、おまたせ!」


「おー、ひとみちゃん、太ももがまぶしいぞー。」


「もう……荒木君ったら〜どこ見てるのよぉ~!」


「見られたくないのなら、そんな格好して来るなよ!」



そこで僕はハッと気づいた。え?まさかこれってデート?男と女、2人きり、しかも僕を挑発するような際どい衣装。

でも……僕には裕華がいる。それに今日は作戦会議…。

ところで……作戦会議って何だ?

「ひとみちゃん、作戦会議って何するの?」

すると、ひとみちゃんは小悪魔のような笑顔で

「何言ってんの、ヒロちゃん、これはデートって言うのよ。」





「な・なに~?僕は騙されたのか?帰る。帰るよ~!」



「待って……ごめんなさい。昨日からの話、全部嘘だったの、隆行が裕華ちゃんが好きなことも……実は私、隆行じゃなくてホントはヒロちゃんを好きになっちゃったから……だから一度こうしてデートしたかったの!」



「…………。」



「裕華ちゃんがいることは知っているし…だから仲の良い友達でもいいと思ってる……私も部活でこんな時間なんて取れなかったけど今日は
たまたま部活休みになったからこれがチャンスだと思って……だから…今日だけで、今日だけでいいから一緒にいて、お願い!」




異性に好意を寄せてもらうことに悪い気はしない。ひとみちゃんは悪い子ではないし、実はとても可愛い女の子だという事もよくわかった。でも曲がりなりに罪悪感という理性もある。


とはいえ、黙っていれば何もない限り特に問題ないだろう。キスをするとか、そんな事は考えていないし……ひとみちゃんとも仲の良い友達として遊んでみたいし…。




「わかったよ、ひとみちゃん、じゃ、今日一日はふたりで遊ぼう!」



「やったぁ~、ありがとう、ヒロちゃん」





ミスドを出た後、僕らは中心部を流れる大きな川のほとりを2人で歩いていた。ひとみちゃんは、僕の右手にしがみつくように腕をからめていた。
こんな積極的な女の子もいいなぁ、一瞬の隙に悪魔が入り込んだ……いかん、いかん!僕には裕華がいる。でもまんざら悪くはなかった。



どちらにしてもこんな小さな街でこんな事してたら絶対誰かに見られている気がしてならなかった。それが僕らを通さずに噂になって……

月曜日、さよなら裕華……になってしまうのを恐れる僕だった。



予想通り、ひとみちゃんと2人でいたことを意外な人に見られていた事を全く知らない二人なのだった…。


           〜第15話に続く〜

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