SASAnote Vol.36 「未知なる困難でも、這い上がる想いは変わらない-ザスパ草津チャレンジャーズ再始動レポート」
「サッカーを始めて、こんなにも長くできなかったのは、はじめて。サッカーの楽しさを改めて知る事ができた。」
およそ1か月半の活動自粛を経て、19日にグラウンドでの練習を再開したザスパ草津チャレンジャーズのキャプテン・大澤靖信は、久々に外でボールを蹴る喜びをそうかみしめた。
国内における新型コロナウイルスの感染状況は落ち着きつつあるが、依然、予断を許さない。「いつも通り」が通用しない状況下であるが、トップチームは、少人数による屋外でのトレーニングを再開させ、チャレンジャーズも、7月に予定される関東リーグ開幕に向け、再始動した。
チャレンジャーズにとっては、初めての関東リーグだけでなく、コロナやその影響による対応、対策も求められ、より厳しい戦いに向かう事になる。それでも、不変なのは、自らのため、チームのため、そして、応援してくれるサポーターの声援に応えるために、チャレンジャーズらしくプレーするという事だ。困難ではあるが、ともに支え合い、目指すべき場所に這い上がっていこうではないか。
昨シーズン、悲願の関東リーグ昇格を掴んだチャレンジャーズは、4月のリーグ開幕に向け、チーム、個人ともにコンディションを上げていた。一方、国内でも、新型コロナウイルスの影響は、日増しに拡大し、Jリーグをはじめ、サッカー界にも及び始めていた。大澤も、そうした状況は理解していたが、「やっと関東リーグに上がれて、はじまる直前だったので、ショックだった。」と、リーグの開幕が延期になった時の思いを振り返った。
また、3月末、所属選手に新型コロナウイルスの陽性判定が出たザスパは、前橋市を拠点とするトップチームだけでなく、草津町のチャレンジャーズも、活動自粛とした。チャレンジャーズを預かる木村直樹監督によれば、「できるトレーニングは、寮での筋トレぐらい。」だったという。さらに、観光地である草津温泉で働きながらサッカーをするチャレンジャーズの選手たちの中には、緊急事態宣言で職場が休業になった選手もいて、寮に籠らざるを得なかった選手も少なくなかったそうだ。新シーズン開幕へ、期待に胸を膨らませていたチャレンジャーズの思いは、一気に萎んでしまうだけでなく、活動は停滞せざるを得なくなった。
トップ同様、チャレンジャーズも、うがい・手洗いの徹底、アルコール消毒や検温、いわるゆる「三密」を避ける行動など対策に取り組んできた。寮生活を送るチャレンジャーズの選手たちは、個室住まいであるので密になる事はなかったと言うが、同じ寮内にいながら、気軽に顔を合わせる事も、言葉を交わす事もできない状況が続いたという。大澤も、「筋トレする以外は、テレビを見たり、家族と連絡を取り合うくらいしかなかった。暇だったし、不安だった。」と振り返る。
不安を感じたのは選手だけではない。選手たちを預かる木村監督も、選手たちのケアのために奔走しつつも、自身も、未知なるウイルスに不安を感じながらの日々だったという。
木村監督は、「コロナの怖さを感じていたら、急にトップチームに感染者が出て、本当に危険だという思いが強くなった。もし、自分が感染していたらと思うと、うつせないし、人とも会えなくなって、話もできなくなり、籠るしかなく、いつのまにか不安だらけな気持ちになるばかりだった。」と振り返った。選手たちのために、必要なケアをしようともしたが、他方、「一体、何が伝えられるだろう。」と、不安に不安が積み重なる状況だったという。
世の中の誰もが苦しい時間を過ごしたように、チャレンジャーズもまた、苦しい1か月半を過ごしたが、状況が少しずつ回復に向かい、町からもグラウンドの使用許可がおり、19日からグラウンドを使った練習ができるようになった。
現在は、全体練習でなく、チームを3グループに分けて、1時間程度の練習が行われている。練習内容は、選手それぞれに任せている状況だ。それでも、木村監督は、「練習が再開できて嬉しい。外でできれば気持ちがいいし、みんなの顔を見ることができて安心する。」と話し、大澤も、「広いコートでボールを蹴れるのは気持ちいい。」と喜ぶ。待ちに待ったグラウンドでの練習にチームは晴れやかだ。
もちろん、コロナは終息したわけではないし、全てがクリアになったワケではない。今後のリーグや大会もどうなっていくかわからない。わからない事、不明な事も多い中での戦いを余儀なくされるだろう。
現時点で、天皇杯の群馬代表を決める会長杯は、再開の目途が立っていないが、関東リーグは4月から行われる予定の前期日程が中止となり、7月11日からの後期日程で開幕するスケジュールで準備が進んでいる。チャレンジャーズの照準もここに合わせる事になる。
木村監督は、「4月の頃は合流したての選手もいて、チームの完成度は高くなかった。開幕に向け、準備期間ができたと思ってやっていきたい。涼しい草津から暑い場所での試合もあるので気候や環境への対応、リーグの状況も、まだわからない。そうした、様々な変化に順応する事や対応力が大事になると思う。」と話す。また、大澤は、「コンディションを上げていた春と比べて、状態は落ちている。やり始めは、ケガが怖いので、怪我なくやっていきたい。」としつつも、「公式戦は、いつになったとしても勝つしかないので、勝つためにいい準備をしたいと思う。」と、変わらぬサッカーに対する熱い思いを口にする。
リーグ戦が始まったとしても、当面は、無観客での開催が予想される。日頃の練習見学も難しいだろう。トップチーム以上に、サポーターとの距離感の近さが特徴のチャレンジャーズにとって大きな悩みである。
木村監督は、「正直、サポーターに姿を見てもらいながら一緒に戦いたい。見てもらえる日が来ると信じて頑張りたい。」と話し、大澤も、「すぐには見に来れないかもしれないが、応援はしてくれていると思っている。そうした応援に応えるためにも、勝ち続けて、チャレンジャーズをひとつ上のリーグに上げたいと思う。」と語ってくれた。
コロナによって多くのものが奪われてしまったが、チャレンジャーズのJを目指して這い上がろうとする熱い気持ちは奪うことはできない。しばらくは、我々、サポーターも、間近での応援はかなわないかもしれないが、トップ同様、活動を再開したザスパ草津チャレンジャーズに、力強い声援を届けてもらいたい。離れていても、想いを重ねて、ともに這い上がっていこう。
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