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バリ島葬儀事情#03

世界のお葬式に関する話題をお伝えしています。
※2012年にバリ島の葬儀を視察した際の内容を業界誌で「特集して頂いた内容の抜粋となります。記載されている数値は当時のものになります。

運命のガベン
バリ島の葬送では、火葬をして初めて死者の魂が安息を得ると考えられています。
火葬儀礼のことを、スードラ階層では「ガベン(ngaben)」、 トリワンサ階層(プダンダ、クシャトリア、ウエシャ)では「プレボン(plebon)」と 呼びます。


つまり「ガベンが見れる」という事は火葬式が見れるという事です。
 
バリには暦が3種類あり、通常は西暦を使用していますが、葬儀などの日程は僧侶がウク暦を使用し決めるそうです。つまりいつでも葬儀が出来るわけでは無いそうです。
また、火葬式自体が一種の祭りとして莫大な費用がかかるため、亡くなってすぐに火葬ができるとは限らず、一時的に埋葬した後、個人で行う場合もあるが、何年かごとに村単位で共同の火葬式を行い、たくさんの死者の火葬式を一括して行う事で各遺族の経済的負担を軽くする場合もあるそうです。
 
つまり、たまたま行った日にガベンが行われるというのは奇跡的な事な訳です。
シンプル葬儀の全国ブランド「火葬のダビアス」を運営する私としては「バリの火葬式」が見れるとなったら、風葬の事はすっかり忘れてテンション最大に上がります!
 
T氏の電話によると、翌日の正午頃を目安に場所はウブドのモンキーフォレスト近辺を行列するという事でした。
 
翌日に備えて、場所や時間を確認して就寝翌日に臨みます。
 
いよいよガベンに遭遇
3月14日 帰国予定日
午前中、いくつかのお寺を巡り、正午前にはウブドに到着。
おそらく行列が通過するであろう通りのレストランに2階席を陣取り準備万端です。
 
T氏からも「時間に正確じゃないから何時に来るかわからないよ」と言われていましたが、待つこと40分。
 
「来た!」


大小のさまざまな銅鑼や鍵盤打楽器によるガムランの激しい音が聞こえてきました。


大勢の人に担がれたプトゥラガンが通ります。
プトゥラガンは張り子の棺でカーストによって形が決まっていて、さまざまな形があるそうです。
スードラは、獅子や半象半魚、時には、木で作られた四角い箱状の簡素な物で 高僧や僧侶は白い牛、王様は竜、貴族は、黒い牛を使うのが基本となっているそうで、ちなみに、 男性は雄牛で女性は雌牛だそうです。
 
黒い牛のプトゥラガンが通り過ぎると、お供物を運ぶ女性や関係者が続きます。


その後ろからは、バデ(ワデ)が続きます。
バデ(ワデ)は遺体や遺体の一部を火葬場まで運ぶためのもので、塔のような形状をしています。カーストによって呼び名が変わり、屋根はインドの霊峰マハメルにあやかってメル(meru)と呼ばれています。スードラのバデは、この屋根が1つなのに対し、クシャトリヤ、ウエシャのワデは、地位の高さによって3層から11層(奇数と決まっている)まであるそうです。


この行列を見てからわかった事ですが、この葬儀は合同火葬儀礼(ガベン マサル・ngaben masal)ではなく、貴族の個人葬だということになります。
ガベンではなくプレボン。つまり裕福な方という事ですね。
 
行列の後ろには激しい交通渋滞が。地域社会の理解がないとできない儀式ですね。


行列は四つ辻に差し掛かると、死者の霊が戻ってこないように、道を惑わすため上下に激しく揺すったり、ぐるぐると周ったりするそうです。
 
店を飛び出て(ちゃんとお会計はしてます)行列の後を追うとモンキーフォレストに入っていきます。
 
バリの寺院を訪れる際は腰巻(サロン)と帯(スレンダン)を着用するのがマナーということで事前に用意してガベン(プレボン)に参加します。
火葬儀礼を受けた霊魂は、天界に昇り祖霊として家寺に祭られ、いつか子孫として再生するという考えがあるので、バリ人にとって、火葬式は悲しむべきものというよりは、死者の魂を天界へ送り届ける儀式と考えているので、外国人がたくさん集まる事は、魂が天に昇るのをたくさんの人から祝福してもらえるから嬉しいことだそうです。
 
実際、葬儀と知ってか知らぬかわかりませんが大勢の外国人が集まっていました。(私もそのうちの一人ですが)


 
火葬場に着くとプトゥラガンとバデ(ワデ)が地面に置かれます。
 
そして、なんとその場所は前日にモンキーフォレストを訪問した際に見た、簡素な墓標の並ぶ、あの墓地です。
 
しかも大勢の人が埋葬されているであろう場所の上を、どかどか歩いたり墓標に足を掛けたり乗ったりしています。
 
衝撃的な光景です。
 
墓地と言っても、前述のとおり、葬儀費用が用意できるまで、または葬儀の日程調整などの理由で仮埋葬する場所という事なので気にしないのでしょうか。
 
王族や僧侶のカーストの人達は、亡くなった後、一旦土葬することは許されていませんので、合同葬はせずに個人の葬儀の形式をとり、また葬儀のために貯金する必要がないお金持ちも、カーストを問わず個人で葬儀を行います。
 
仮埋葬しない場合は、ホルマリンや氷、ドライアイスなどを使用して、遺体を何日間も家に置くそうです。
 
仮埋葬している場合でも、必ずしも遺体を掘り起こすとは限らず、遺体の一部や死者を模ったシンボルに墓土を入れてこれを火葬する場合もあるそうです。また仮火葬してしまう場合もあるようで、その場合は、遺灰を遺体に見立てて葬儀を行います。
 
そして粛々と儀式は進みます。
 
塔状のバデ(ワデ)から牛の張り子のプトゥラガンへ白布に包まれた遺体(おそらく遺体の一部)が移されます。



そして、お供物を一緒に収めます。


その後プトゥラガンに聖水がかけられた後、火を着けます。
 

 直後に塔状のバデ(ワデ)にも火を着けます。
ガベン(プレボン)の際、棺の担ぎ手達となる人々に、喪主から、オリジナルのお揃いのTシャツが配られることがあるそうで、今回も皆さん揃いのTシャツを着ていました。
このTシャツには弔われる人の名前や、家の名前、儀式の名前がプリントされています。


また、儀式の間も食べ物や飲み物を絶えず関係者に振る舞っていて、葬儀にお金がかかるというのがよくわかりました。


火葬後の遺灰は椰子の若い実でつくられた容器に納められ、遺族は遺骨(灰)の入った容器を持って川か海に持って行き、儀礼を行った後、容器は流されるそうです。




プトゥラガンとバデ(ワデ)が燃え尽きると、隣で宗教者が来て儀礼が執り行われるということでした。


せっかくなので見て行こうと思ったのですが、2時間待っても来ません。
 
帰りの飛行機の時間があったので仕方なく現地を後に。
 
奇跡的に立ち会う事ができた、ガベン(プレボン)の感動を噛みしめながら、帰路に着きました。
 
最後に
バリ島には葬儀社は無いそうです。すべて村やバンジャール(地域コミュニティ)単位で行われます。(一部、外国人向けの葬儀コーディネーターのような仕事はあるそうですが)
村やバンジャールにおける、義務を果たさないと葬儀を行ってもらうことができなくなる訳です。しかし、それは葬儀などの通過儀礼を行ってもらうために義務を果たすのではなく、生活密着した宗教の存在が様々な慣習を生み出し、生と死が人々の生活の近い所に存在する事で、生きる事への感謝、死に対する畏怖の念が人々の中で、無意識に宗教心と混ざり合い、互助精神として村やバンジャール支える。
日本の葬儀・葬送の原点もこうであったのだと感じる旅となりました。
 
ご協力頂いた全ての皆様へ感謝申し上げます。
Matur suksma ( ありがとうございます)

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