君のことばに感謝したい。
因習って言って伝わるかな。
辞書で引くと、「古くから伝わり、とかく弊害を生むしきたり。」って意味らしい。
俺はちょっと田舎の、おじいちゃん・おばあちゃんになってもその町で生きていくのが当たり前で、初対面の会話が「今日寒いですね」の代わりに「どこの高校出身ですか?」で始まる少し狭い世界で生まれ育った。
なんとなく息が詰まるっていうか曇りばっかで全然晴れないところだったから、「霧の都に住む人ってみんなネガティブになって、だからRedioHeadみたいなバンドが生まれるんじゃね?」なんてことを考えながら学校に通ってた。
カリフォルニアで生まれたら「ウェーイ!」って挨拶かますような性格になったかもしれんね。
まぁないか。
ただ、俺はずっとこの町で生きていくなんて嫌で、早く大人になりたかった。
自分一人で生きて行きたかった。
「子供は親の言うことを聞くものだ」
「長男なんだから家を継ぐのは当たり前」
「あなたが付き合う友達は私が決める」
みたいな親の束縛を「なんで俺だけがこんな目に」って思った。
でも、学校の窓ガラスを割っても意味ないことはわかるから部屋に閉じこもって
LinkinParkの「Breaking the habit」と「numb」をエンドレスリピートしてた。
「うちの親は普通じゃない」って、小1くらいには思い始めてたけど、なんかタブーな気がして誰にも話さなかった。
ただ俺の知らないところでよく遊んでた友達にも色々やらかしてたみたいで、それを知ったとき初めて人生でキレたと思う。
親に殴りかかったのもそれが初めてだったと思う。
こんな家で、こんな町で、生きて行くのが本当に嫌になって都会に行ってみようって思った。
せっかくだから日本で一番の。
上京してた友達の家に泊まってはそいつらの学校に行ったり渋谷や原宿に行って買い物したり遊んだりした。
夜中コンビニでドラマに出てる某女優を見かけるし、やっぱ都会は違うなって思った。
何日かしてまた違う学校に行った。
なかなか友達と待ち合わせてる食堂が見つかんないから、前歩いてた人に声かけて「食堂どこですか?」って聞いた。
めっちゃ親切な人で「あ、じゃ一緒に行きます?私も行きますから」って言ってくれた。
多分雰囲気で同じ学校じゃないことはばれてたと思うし、俺以外にも他校から来てるっぽい人もいたから割とよくあることだったんだと思う。
そしたら友達は先に着いてて「お前電話しろや」「いやしたし」みたいなどうでもいいやり取りしてる間に、その人はいなくなってた。
「あ、お礼言ってない、最悪…」って思ったけど、次の日にはその人のこと忘れてた。
それからどれくらい経ったかは忘れたけど、またその学校に潜ろうぜってなった教室でその人を見つけた。
「あっ」って思って、結構話が盛り上がってた中に勇気出して突っ込んでいった。
近くで見たら「あれ、この人美人じゃん」って思って、なんか急に顔が熱くなった。
やばいくらい恥ずかしくなってきたけど、とりあえず「ありがとうございました」って言えた。
すごいフランクな人で「ぜんぜんいいですよ。他校ですよね?私この見た目なんで色々話しかけられるんです」って笑って話してくれた。
目が少し緑がかってて純日本人じゃないっていうのはわかる顔立ちで、日本語も英語も話せるからよく話しかけられるんだって。
そしたら「え、誰?知り合い?」って友達が割り込んできた。
だるいけど一応これまでのこと話したら「ナンパじゃん、お前。いい人ぽいから連絡先交換すれば?(笑)」ってふざけだした。
「クソうぜぇなこいつ」って思ったけど、まぁそれきっかけで付き合えたから結果的には良かったのかもしれない。
お礼はいまだに言ってないけど。
仮名でAさんにするけど、Aさんは1学年上で当時の俺からしたらめっちゃ大人に見えた。
将来のこととかこの歳でこんなに考えるんだって思ったし、初めて逆算で人生設計してる人に出会った。
30歳で独立するためには、28歳までにこんな経験積んで、とかそういうやつね。
そういう真面目な話もするし、ドラマとかスポーツとかなんでも話題にできて、
しかも自分の知らなかったことでも会話膨らませるコミュ力ある人に初めて会った。
だからすごく惹かれた。オトナなお姉さんって感じで。
最初は表参道とか吉祥寺とか行ったり、ちょっと背伸びして六本木とか神楽坂とかで遊んでたんだけどある時俺の地元で遊んでみたいって言われた。
「えー」って思って最初は嫌がったけど全然引いてくれなかった。
仕方ないから地元の知り合いに会わないかびくびくしながらいろいろ案内してた。
そしたら「なんか俺っぽいね、ここで育ったのわかる」って言われた。
意味わかんないから「どういうこと?」って聞いたら、
Aさんは南半球で生まれてその後ヨーロッパ行って日本来てって、いろんな国を点々として育ったらしい。
だからなんとなく育った街の雰囲気でその人の性格とかをつかめるんだって。
なんかすげーって思ったけど、それより
「私って宇宙人なんだよね。」
「故郷がないから家族といる時しか自分の故郷がなくて、だから家族が一番大事なんだ」
って言ってたことがすごいショックだった。
そんなに家族のこと大事に思えるってすごいなって思ったし、
なにより「俺の親の話は一生できないな」って思ったから。
今思えばAさんは自分のアイデンティティっぽいことを話してくれてて、ちゃんと言葉返せやって思うけどその時は親に対しての価値観が違いすぎることで頭がいっぱいだった。
でも、だからその後にAさんが言った「毒親って知ってる?」って一言がマジで衝撃だった。
Aさんは自分がクリスマスとか家業とか家族の話するときの、俺の微妙な返しの言葉とか空気感でなんとなく家族間でうまくいってないんだろうなって思ったんだって。
「エスパーですか?あなた」って感じだけど。
俺の友達にも俺の親がやらかした話を聞いていろいろ調べてくれたらしい。
Aさんは家族が一番大事って人だから、毒親なんて存在ありえるの?って最初は思ったらしい。
だけど、Webで調べるだけじゃなくて本読んだりしてるうちにもしかしたらって思って言ってくれたみたい。
その言葉で、当たり前すぎて疑いもしなかったけど「親は神様じゃない」って思えた。
親も俺と同じ人間なんだから未熟なところもあって、「親マジリスペクトです」とか「お父さん・お母さん大好きです」って人だけじゃなくてもいいじゃん。
それでいいんだって思えた。
あともう一つ、どっかで俺は親を嫌いって思う自分がダメな人間だと思ってた。
ダメな人間なんだからこんな思いを抱えて生きなきゃいけないんだと思ってた。
でも、そうじゃないかもしれないってそう思えてだいぶ救われた。
今自分が子供を持つ親になって余計思うけど自分はまだまだ未熟だし、
だからこそ毒親にならないように子の幸せを願う人間でいたいと思う。
そんで改めて、親になってもいいと、家族を持ってもいいかもしれないってきっかけをくれた君のことばに感謝したいと思います。
ありがとう。
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