MBA Essentials 2020<総合コース>秋 第5回 サイエンス・ビジネスとイノベーション
2020/11/18(水)にタイトルのセミナーを受講しました。
概要:サイエンス・ビジネスとイノベーション
講師:牧 兼充 先生
早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授
サイエンス・ビジネスとは、既存の技術経営(MOT)の枠を超えて、サイエンスの知見をいかにしてビジネスに活用していくかを追求する学問分野であり、シリコンバレーのさらに先を目指す先進的なビジネスを創出し続けている地域では浸透しているものです。
サイエンスの研究を、企業におけるイノベーションにいかにして活用していくか、多様な事例や海外の先端的な研究成果をご紹介しつつ、皆さんと議論したく思います。
学べたこと
①「イノベーション」の意味と「発明」との違い
②イノベーションの普及が阻害される理由
③スター・サイエンティストとイノベーションにおける役割
④「失敗」と「間違い」の区別
⑤相関関係と因果関係の区別
学べたことというか、これを学べるようになりますと宣言されました。
本来は10回の授業の内容をエッセンスで紹介いただきました。
かなり詰め詰めではありましたが、とってもお得ですね。
❶イノベーションとは何か?
「イノベーションを漢字2文字で表現してください」
こんなお題から話が始まりました。
あなたなら、どんな漢字2文字で表現されますか?
正解があるわけではありません。
日本でよく使われる「技術革新」は誤訳と言われているそうですね。
なぜか?「イノベーションは技術が伴うとは限らない(例:ビジネスモデル)」からです。
「イノベーションと発明の違いは何でしょう?」
とってもわかりやすい表現をされている方がいました。
発明:0から1を生む
イノベーション:1を10にする
つまり、イノベーションは発明の先にあるものです。
「発明家」と「イノベーター」は別々の人であることがほとんどのようです。
まとめ、としてイノベーションは以下で表現できます。
イノベーション = 発明 × 実行
❷イノベーションの普及を阻害するもの
質問です。これは正しいでしょうか?
既存製品よりもイノベーションと呼べる新製品を開発しさえすれば、
消費者は受け入れる。
みなさんの身近にも、「いい製品なのに全然流行らなかったなぁ…」というモノ、思い当たりませんか?
そう、「いいものさえ作れば売れる」というのは間違いですね。
行動経済学から明らかになった心理的バイアスとして以下の3つがあります。
①損得勘定
②所得効果
③現状維持バイアス
超ざっくり説明すると、
①損得勘定 (参考:プロスペクト理論)
「1万円増える」のと「1万円減る」のでは、客観的には同額であるが、主観的には減るガッカリ感の方が強い、というものです。
なので、「新商品で機能がいっぱい追加されたけど、今までよく使ってた1個の機能がなくなっただけで欲しくなくなる」ということがままあるわけですね。
②所得効果
「既に持っているもの」をまだ持っていないものより高く評価する、というものです。
③現状維持バイアス
時間の経過とともに、より良い選択肢が出ても、現状の所有物に執着する、というものです。
最近よく聞く言葉かと思います。
変化を好まなかったり、前例にとらわれていたり、…
会社でもよくありますね。
9倍効果
というものがあります。
上の3つにも関連しますが、
買い手(消費者)と売り手(企業)の間には9倍のギャップがあるというものです。
買い手側:既存製品を3倍高く評価する。(逆に新製品は3倍低く見る)
売り手側:新製品を3倍高く評価する。
→両者の間に9倍のギャップあり!ということです。
ということは、新製品にはこのギャップを超えるインパクトが必要です。大変ですね…
❸スター・サイエンティストとイノベーション
スター・サイエンティストというのは、サイエンティストたちの中にほんの一握り存在する超優秀な人です。
多くのイノベーションやスタートアップが、このスター・サイエンティストから始まっているとのこと。
企業目線で言うと、
大学にいるスター・サイエンティストと協力する体制をつくるのがよいというわけです。
これだけ聞くと、よく言われる
「とんがった人がいないとイノベーションが起きないというのは正しいということ?」
と思ってしまいました。質問してみたところ、
これは、ぶっちゃけ分野によるようです。
今回もサイエンスの分野の話です。
イノベーションを起しやすい企業環境(制度)にしていくことは、それはそれで大事ということでした。
まぁこれはこれで超大変なんですが…
❹失敗のマネジメントとイノベーション
今、求められているのは「正解のないイノベーション」です。
「正解のあるイノベーション」とは、
目標ありきで、そこに向かって行動をしていくわけです。
各ステップで「成功」することが前提となります。
従って、失敗をすることは単なる間違いで、ここに学びはありません。
通常、企業で求められるのはこちらですよね。
「正解のないイノベーション」(求められている方)とは、
仮説を構築し、仮説検証を繰り返していく行動になります。
こちらは、失敗は織り込み済みであり、失敗から学びを得ることができます。
企業を「失敗を許す文化に変えたい」という言葉をよく聞きますが、ここでは文化ではなくインセンティブで解決できると学びました。
❺科学的思考法とは何か
ここでは、話が変わって「相関関係」「因果関係」「バイアス」の話でした。
原因? →(相関関係)→ 結果?
原因 →(因果関係)→ 結果
例えば、「太った人はダイエットコーラを飲む」という事象に対しては、
相関関係はあるが
因果関係はない
ですね。
<本質>
ある事象から「因果関係」を見抜く力が、科学的思考法である。
じゃあ、どうやって見抜くのか?
3つの視点が紹介されました。
①見せかけの相関(偶然の一致)
②第3の変数バイアス
③逆の因果関係
例えば、「運動がよくできる子どもは学力も高い」という事象があります。
これには見せかけの相関と第3の変数バイアスが含まれています。
子どもの体力 →(見せかけの相関)→ 子どもの学力
↑影響 影響↑
両親の教育への熱意
こういう事象を科学的に検証する方法として、
A/Bテスト(ランダム化実験)
が紹介されました。
例えば、「バーガーショップが広告を出したら売り上げが伸びた」という事象があります。
でも、本当に「広告を出したから」売り上げが伸びたのでしょうか?
もしかすると、「季節的な要因」だったり、「ちょうど近所に人が集まる施設ができたから」だったりするかもしれません。
そこで、バーガーショップ100店から「ランダム」に選んで
A:50店は広告を出す
B:50店は広告を出さない
として、広告の効果を検証するわけです。
(※注意:広告を出す店舗を募ってはいけません。やる気の効果が入ってしまうため)
懇親会にて(サイゼリヤ会)にて
うれしいことに先生も出席されました。
質疑応答含めて以下のような話が出ました。
>ランダム化実験のN数は?
→場合による。一般的には100を目指す。
>失敗のマネジメント
・成功は評価する。
・失敗/成功ではなく、「やった」ということを評価する。
・何もやってない、がダメ。
>地球温暖化は二酸化炭素のせいは嘘では?
→エビデンスはない。
ランダム化実験するなら、地球を2つにして検証しないといけない(笑)。
>第3のバイアスの見つけ方は?
→・本で勉強する。
・パターンを学ぶ。
・事例をたくさん知る。
>営業でどう活用すれば?上への報告は?
→ランダマイズはやった方がいい。
例えば、半分だけのお客様への営業で試すというのはあり。
「やった方」「やってない方」の比較をして示す。
>スターを探して組むべきなのか?
→業界にもよる。
コピーしづらいものはスターサイエンティストと組む必要がある。
>失敗を許すには?
→文化じゃなくて制度設計(人事制度)をする。
失敗から学んで評価される制度にする。
本講座で紹介されていたおすすめ本
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<❷イノベーションの普及を阻害するもの>
<❺科学的思考法とは何か>
<実験する組織>
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます! 楽しく、読みやすいnoteになるように今後もがんばっていきます。