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愛するということ

ある日男はこういった。

「俺は本当に、心の底から、女性を愛したことが無いんだ。」


ある日女はこういった。

「私は本当に、心の底から、男性に愛されたことが無いの。」


ある日、男は女と出会い

心の底から

「この人を愛したい」

と思った。


ある日、女は男と出会い

心の底から

「この人に愛されたい」

と思った。

男は、愛されることに慣れていた。
いつもいつも
母親からの愛を、存分に受けて育ったからだ。
愛されることが当たり前だった。

それに気づいていなかった。

女は、愛することに慣れていた。
いつもいつも
女の身体には、母性が溢れているからだ。
愛することが当たり前だった。

それに気づいていなかった。

男とは「愛したい」と願う生き物で

女とは「愛されたい」と願う生き物なのだ。

二人は何度もぶつかり合った。

「どうしてわかってくれないんだ。」

「どうしてわかってくれないの。」

二人は何度も逃げ出そうとした。

「こんなに愛したいと願っているのに、どうして君の愛ばかりを押し付けてくるんだ。」

「こんなに愛されたいと願っているのに、どうしてもっと大事にしてくれないの。」

ただ男は恐れていた。

「この愛を受け入れてもらえなかったなら」

ただ女は恐れていた。

「誰からも愛してもらえなかったなら」


心の中に隠してしまった

本当の気持ちほど

繊細で柔らかくて壊れやすいものである。


二人はある日

求めるのをやめ

勇気を出して自分の気持ちを伝えてみた。


女性はこう言った。

「愛しているわ。でも私はちゃんとあなたに愛されたいの。」

男性はこう言った。

「愛をありがとう。でも僕はもっと君を愛したいんだ。」


二人は思わず笑いあった。

「え、なんだ!そうだったの!?」

ただそれだけの事だった。


そして男は気が付いた。

本当は、自分がどれだけ彼女を愛していたかという事に。

そして女は気が付いた

本当は、自分がどれだけ彼から愛されていたかという事に。


ほんの少しの勇気

自分の思いを素直に伝える事

お互いにそれを受け入れる事

ありがとうっていう気持ち

たったそれだけの事が二人の行く道を変えた。

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