09大磯

事業部をデザイン部門の下部組織にしてみては?

イノベーションを実現するための組織の在り方について、21世紀の今もまだ定番がない。なので本稿では思いつきを提案する。

デザイン部門主導のイノベーション?

先日、ニコンが社内のデザイン組織を社長直属にするというニュースがやや話題になった。ブランド価値向上と新規事業創出が目的とのことである。

実は筆者は上述ニュースのような「デザイン部門が事業部から独立している某一部上場企業」に勤務していたことがある。その企業でデザイン部門はどのような存在であったかというと…社内下請であった。製品開発事業部の社内下請だけでなくコーポレートアイデンティティ部門の社内下請も行っていた。このような記事を書いていることがバレるとデザインセンター長が激怒するかもしれないが、どれだけデザインセンターがブランド価値向上と新規事業創出に貢献したとしても、結局その立場は社内下請だったのである。

なので、ニコンの組織再編でブランド価値向上と新規事業創出が実現できるかについては非常に疑問視している。名目はともかく実体が社内下請ではデザイン部門主導でイノベーションを起こすことは難しい。

デザイン部門は事業部に開発委託できるか?

シンプルに考えれば、デザイン部門がイノベーションの主導権を握る確実な方法は、デザイン部門が独力で画期的な製品サービスを製品化することである。しかしこれは現実的に不可能である。デザイン部門にはそのための人材も設備もない。

ではデザイン部門が事業部に製品サービスの開発を業務委託するというのはどうだろう?委託なのだからプロジェクトオーナーはデザイン部門のままである。このアイデアの問題はおそらく「前例がない」という点であろう。筆者の以前の勤務先でも意欲的なデザイン提案がいくつもあったが「プロジェクトオーナーは事業部」という建前を崩すことは叶わなかった。日本のメーカー企業はなまじ歴史があるゆえに柔軟な組織運用ができないようである。

事業部をデザイン部門の下部組織にしてみては?

世間ではいま、イノベーション実現のキーマンとしてデザイナーへの期待が高まっているらしい。であればデザイナーにもっと大きな責任と権限を与えるべきだろう。具体的には事業部を下請扱いできるだけの巨大な予算権限をデザイン部門に与えることであり、究極的には事業部をデザイン部門の下部組織に置くことである。それができないのであれば期待もしないほうが良い。

前にも書いたが、イノベーションを阻む組織内の様々な圧力に打ち勝つ「シリアル・イノベーター」を待ち望むより、イノベーションを起こしやすい組織を作り上げる方が健全である。イノベーション実現のための組織論についてもっと議論が巻き起こってほしい。

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