02品川

UXデザイナーの本来の仕事3つ

UI/UXってなによ

世の中にはUIデザイナーとUXデザイナーの違いがわからない人が多いようである。これは「UI/UX」という言葉に如実に現れている。UI/UXとはUIデザイナーとUXデザイナーの両業務の兼務という意味である。いまの世の中は仕事を割り振る方も割り振られる方もUIデザイナーとUXデザイナーの兼務が当たり前化したため、両者の境界線がわからなくなったらしい。

UXデザイナーの本来の仕事3つ

UXデザイナーの仕事は以下の3つである。別の言い方をすれば、以下の3つを従来の開発プロセスに追加できていればあなたのチームはUXデザインを実践できている。

1. ペルソナ/シナリオ法によるユーザー要求の抽出
2. ユーザー調査による体験談の収集
3. ユーザビリティ評価によるUX品質の評価

1. ペルソナ/シナリオ法によるユーザー要求の抽出

「ペルソナ/シナリオ法」はユーザー要求を抽出するための手法である。これは前半作業と後半作業に大きく二分割される。前半作業を「ユーザーモデリング」、後半作業を「理想シナリオの作成」と呼ぶ。

「ユーザーモデリング」はユーザー理解を目的とした活動であり、ユーザー調査結果をわかりやすい中間成果物、すなわち「ペルソナ」「現状シナリオ」「カスタマージャーニーマップ」で表現することを目標とする。ペルソナは典型的なユーザーの特徴を表現したもの、現状シナリオとカスタマージャーニーマップはどちらも典型的なユーザーの体験を表現したものである。

「理想シナリオ」とは、これから作る製品/サービスによってユーザーの得るであろう理想的な体験を架空の体験談として記述したものである。そしてこの理想シナリオからユーザー要求を抽出する手法を「理想シナリオの構造化」と呼ぶ。今は構造化することが当たり前化したので「理想シナリオの作成」といえば構造化によるユーザー要求の抽出まで含まれる。

2. ユーザー調査による体験談の収集

前述の通り、現状シナリオとカスタマージャーニーマップはどちらも典型的なユーザーの体験を表現したものである。つまり事前に典型的なユーザーの体験を調べておかなければ作ることができない。したがって、UXデザインにおけるユーザー調査は体験談の収集に重点が置かれる。

体験談の収集には主に「観察」手法と「インタビュー」手法が用いられる。「観察」とはようするにユーザーの仕事や生活を一緒になって体験することであり「インタビュー」とはようするにユーザーから体験談を聞き出すことである。

もしもターゲットユーザーの設定が適切であれば、彼らはみな似ているはずである。みな似ているからこそ、ユーザー調査結果を「ペルソナ」「現状シナリオ」「カスタマージャーニーマップ」として集約できる。

3. ユーザビリティ評価によるUX品質の評価

UXデザインもデザインである以上、品質管理は必須である。しかしながら、UXは他の品質項目と異なり「評価基準はユーザーの内心にある主観的基準だけ」という大きな特徴がある。理想シナリオに書かれた理想が確かに理想であると認定できるのはユーザーだけなのである。

ユーザーの内心にある主観的基準を評価基準に用いる特殊な品質評価手法のことを総称して「ユーザビリティ評価」と呼ぶ。慣習としてユーザビリティ(使いやすさ)という言葉が使われ続けているが、もちろんUXの品質も評価できる。UXの品質とはようするに「理想シナリオに書かれた理想的体験は実現できているか?」「理想シナリオに書かれた理想が確かに理想であると認定してもらえるか?」の2点である。

ユーザビリティ評価の代表的手法は「ユーザーテスト」である。ユーザーテストとは試作品をユーザーに貸し与えてその様子を観察し、使用後に試作品についての印象をインタビューで聞き出す手法である。

UXデザイナーは実在しない?

ここまで読んだあなたは大いなる疑問が沸いていることだろう。「UXデザイナーの仕事3つとは、企画部門・設計部門・品質部門がそれぞれ分担して行う仕事ではないのか?」と。

その通りである。

「UXをデザインする」とは本来「ものをつくる」と同じレベルの巨視的な概念である。ものつくりデザイナーという仕事が実在しないのと同様にUXデザイナーという仕事も実在しないのである。実在するのは「企画部門に所属するUX調査担当者」「設計部門に所属するUX分析担当者」「品質部門に所属するUX品質評価者」そして「UXデザインに詳しいプロジェクトマネージャ」である。

では「UI/UX」とはいったい何と何を兼務しているのか?

大抵の場合、UI/UXとはUI設計者が自分のデザインしたUIを自分でユーザビリティ評価することを意味している。UXは他の品質項目と異なり「評価基準はユーザーの内心にある主観的基準だけ」という大きな特徴があるため、評価NGになることが多い。このままでは品質部門激おこである。ゆえにUI設計者が(品質部門に送る前に)自分でユーザビリティ評価を行うことが求められているというわけである。

なんだかいまいちな結論だが現実は非情である。UIデザイナーの皆さんはぜひユーザビリティ評価を学んでほしい。

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