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表現の思想性について 高3直後ver. [20240324]

はじめに、当記事の内容はあくまで今現在(2024年3月)の考えであり、今後同様の思考を保持していることを保証するものではないことを注記しておく。

表現する行為の必要条件として一貫したテーマ・思想が必要だと考えている。一貫した思想を持たない「表現」はただの張りぼてである。そう断言できる。この世の中には緻密で精巧に造られた美しく、同時に呼吸を持たない造花がありふれているし、そのような造花と並ぶと遥かに稚拙に見えるが、たしかな息吹を持つ草花がたくさん存在する。

空虚な造花が生命を持つ草花を差し置いて、賛美の的を独占し、熱烈な信仰の上で胡座をかいていることに非常に憤りを憶える。生命を持つものがかつて保持していた玉座は、いま血脈を持たない彼らによって汚染されている。彼らは大衆を扇動する、刺激的なフェロモンを有している。扁桃体の発するピンク色の信号が脳を支配して、たちまち僕らの体は火照り、血眼になって彼らに手を伸ばす。彼らと触れることで得られる幸福感はほかのなにものにも代えられないなどと盲信して。そのような虚妄は決して許してはならない。僕はその幻惑なる魔法に接触しつつもそれを頑として拒絶している(つもりである)。

表現は思想を示すための手段全般を指す言葉であることをまず確認しておきたい。そして現在問題視しているのは、世の中に思想の一貫していない表現が蔓延っていることである。

なぜここまで僕が思想の必要性を強く主張するとするのか。それは、表現がウイルスのように感染していくものだからである。何かを表現するとき、僕たちは無から何かを生み出しているわけではない。それまでの人生で出会ってきた数多の表現が、海馬の海に長いあいだ曝され、いつしか意識の底に沈澱して、主体に固有の生得的発想であるかのような挙動を始める。幸運なことに一人ひとり属性が異なるために、重複のない「個性」が現象する。このように、既存の表現がその後の主体の表現を決定づけるため、既存の表現が未来の表現を決定づけているといえる。(他ジャンルとの融合といったことが絶えず取り組まれてきたために、表現が純粋に積み上がっていくものではない、ということも付言しておく)

だから、思想を示すための手段として存在するべきである「表現」において、一貫した思想を示すという大前提はいつまでも継続されなくてはならないのである。主張の一貫しない表現は、表現の時間軸にとって毒性を示すのみなのではないか。

ここで、いくつかの反例に見える疑問が湧いてくるが、一貫した思想性を持つかどうかで全て説明がつく。対比の敵役は一貫した表現の一部と言えるか否か。言える。説明する筋道は一通りではない。あえて後退しエネルギーを貯蓄することで莫大な推力を生み出すという例は世の中に遍在する。「思想を持たないこと」を表現した事物は表現と言えるか否か。言える。「思想を持たないこと」という明確なテーマを持っている。ただのノイズは「意味性を持たない」という意味を有しているのだ。

以上より、一貫した思想性は表現行為の絶対条件であると僕は考える。

これまで強めの思想を記述したが、これはあくまで自分自身の表現に対して課すハードルにすぎない。表現行為はそれ自体が幸福な行為であり、それが多少破綻していようが、楽しければ良いのだ。

しかし、世の中に向けて発表するものの思想が揺らいでいるのは不健全な状況であると言わざるを得ない。造花を撲滅することは生命の啓蒙を促し、次なる時代の数多くの萌芽をもたらすだろう。

【予告】思想性を判断するという行為はあくまで主観的な行為であるということが問題で、ここについてどうにか説明しなければ、空白に向かって威嚇する野良犬くらい愚劣であるとは思いつつ、明日の朝が早いのでこれくらいで筆をおかなければならない。思想の一貫性は内面で達成されればそれで良いのかどうなのかは、また明日、ゆっくり考えてみることにする。

【追伸】 本文2段落目の末尾において、「つもりである」としたのは、僕は流行するいろいろと接触するとき、思想性は希薄であると思っても、まあ雰囲気に押されてノリノリになっちゃうことがあることを否定できないためである。多くの場合自分にこの状態が訪れるのは刺激的な音楽を爆音で聴いたときだ。ほとんどのライブで自分は噴火する火山のように心の底から燃え上がる。論が折れている。これは、おれの思想性はまだ発達段階だからであろうか(これは間違いないが)、あるいは表現行為すべてを対象に議論することが間違いなのか。いくつかのライブではその浅薄さに対して残念に思ったことがあるのも確かであることから、ひとまず論をこのことにも適用できるように拡張すると、「すべての表現行為は、ひとつの状態を志向していなければならない」ということになると考える。


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