マレーシア・クアラルンプール旅行記 1日目前編
酷暑が続く日本から飛び立つ。今回の旅先はマレーシアの首都クアラルンプールだ。
事前に現地の天気予報を見たら、日本よりも気温が低く、思わず笑ってしまった。知らぬ間に日本の夏は東南アジアよりも暑くなっていた。
これは夏の休暇をほぼ使い切ってクアラルンプールで過ごした1週間の記録である。
これほど長期間の旅は数年ぶりで、それでもあっという間に過ぎ去って、今は楽しかった記憶を思い返しながら旅行記を綴っている。
もう一度訪れたい、できることなら長期滞在したいと感じた土地だった。
実際に行ってみるまで知り得なかったマレーシア・クアラルンプールの魅力を、少しでもお伝えできたら嬉しい。
出国(0日目)
夕方に日本を出て、現地の深夜に到着する便を選んだ。
ここ最近の3連休を利用した旅では、平日の仕事終わりで空港へ直行していた。長期休暇だと出発時刻を自由に選べるため、身体にも心にもゆとりがある。
クローゼットにしまわれ、埃をかぶっていた大型のスーツケースを久しぶりに取り出す。荷物を詰めてみてもまだまだ余裕があったけれども、帰りにはおみやげが埋めてくれることを期待して閉じる。
長期休暇の混雑を想定して早めに行動していたけれども、空港は予想外に人が少なかった。出発が日曜だったので、金曜夜や土曜にあらかた出払っていたのかもしれない。
順調に出国手続きが済み、定刻通りに飛行機に乗りこんだ。
しかし待てども飛行機は動き出さない。滑走路上のトラブルで離陸が1時間ほど遅れるとアナウンスが流れる。薄っすらとした失望が機内に漂う。
地上で待機したままの機内で映画を観ることにした。タイトルリストを送っていく中で興味をひかれた"I Saw The TV Glow"という作品にする。
観終わった直後は、よくわからんけど要所要所が印象的だった、という感想だった。でも今は作品に対する好きがどんどん膨れ上がってきている。
全く前情報なく観たのもおそらくよかった。おすすめしたいのだけれど、現時点で日本公開が未定とのことで、つらい。
その後、遅れがあったものの飛行機は離陸し、約7時間のフライトを経てクアラルンプール国際空港に到着した。
空港から市街地まではさらにタクシーで数十分かかり、ホテルでベッドに潜り込んだのは3時ごろだった。
旅行前半の拠点となるホテルはこちら。
夜中に到着しても問題なくチェックインでき、市街地の中心だったのも便利だった。滞在中に洗濯機と乾燥機も使用させていただいた。
スパイス香る朝食
3時に就寝しても、旅の朝はちゃんと起きる。せっかくの旅先では寝ている時間も惜しい。
ホテルは朝食付きにしていたけれども、初日は近場の店で食べることにした。
Banglo 289
都心の車通りの激しい道の脇、少し奥まった場所に建っている。
入って正面のテーブルには、ニョニャ菓子と称される伝統菓子が何種も置かれていた。横のキッチンでは朝から調理に勤しんでいる様子がカウンター越しに見受けられる。
さらに奥に進むと、風が抜け木々が囲む席がいくつもあらわれた。
後ほどウェイターから聞いた情報によると、入口のお菓子やカウンターにメニューがあった料理は、自分で持ってきて着席すればよかったらしい。
再び向かうのも手間だったので、今回は席について渡されたメニューから選ぶことにした。
マレーシアは複数の民族が暮らすため、朝食メニューも多岐にわたる。まずはインド系朝食の定番であるロティとカレーを食すことにした。
Roti Canai(ロティ・チャナイ)というのが、いわばプレーンタイプのもの。妻がそちらを頼み、せっかくなのでこちらは正体不明のRoti Telurというものを頼んでみた。
頼んだ後に調べたところ、卵入りのロティのことで少し安心する。
マレーシア初の食事を朝からしっかりといただいた。
チキンカレーの肉が、部位関係なく骨がついたものまで入っているのが海外らしさを感じる。味はマイルドな辛さでありがたかった。
ロティは端はカリッと、中央の卵部分はもっちりで美味しい。のちにホテルの朝食でもロティを食べたが、こちらの焼きたての美味しさは格別だった。
観光名所を踏破する
朝食後は妻と別行動となったので、ひとまずクアラルンプールの名所を巡ることに決めた。
交通機関は電車やバスがあるが、環境や文化を肌で感じられればと、可能な限り歩くことにした。
ちなみに今回の旅でもe-SIMを使用している。クアラルンプール市内は常に快適で、後にタクシーやバスで郊外へ向かう際、若干つながりにくいかもという程度だった。
Google Mapなしでは方向音痴は生きていけない。むしろあっても迷うレベルなので、本当にありがたい。
歩きはじめると、モノレールの駅やPavillionというショッピングモールなどを繋ぐ通路への登り口が見えた。
スカイウォークという渡り廊下のようなもので、内部は空調が効いており雨でも心配ない。驚くほど長く、かなりの距離を快適に移動できた。
そこからさらに地下道へと経路は変わり、歩き続けて再び地上へと出たところで、第一の名所が姿を表した。
ペトロナス・ツインタワーは、マレーシア国立の石油会社ペトロナスを名に関した建造物である。
上から見た形状はイスラムの八芒星をモチーフにしているそう。丸みを帯びた尖塔部も相まり異国情緒を漂わせている。
タワー前の広場には写真を撮る人がたくさんいた。長居する場所でもなかったので、数枚撮って次へと向かう。
続けて目指すはムルデカ広場である。マレーシアの独立宣言がなされたという歴史ある名所だ。
ツインタワーからムルデカ広場は徒歩で40分ほどかかる。
日本の酷暑によって耐性がついた身体でずんずん進む。暑くはあるものの、夏を感じながら活動できる気候だ。なんだか夏休み感が増してくる。
とはいえ、途中に目立ったスポットがあるわけではないので、理由がなければ交通機関を使ってもよかったと今では思っている。
ムルデカ広場にまもなく到着となったころ、先にマスジッド・ジャメが姿を表した。
こちらはクアラルンプール最古のモスクであり、モスクが建つ二つの川が合流するこの地点こそ、クアラルンプールの都市名の語源である。
「泥の川の合流地点」というのがクアラルンプールの言葉の意味だそう。確かに泥っぽい川が流れていた。
モスクが高層ビルに囲まれて小さく見え、成長する都市と昔からの信仰が交わる場所でもあるのだと感じ入る。
後ほど中の見学もさせてもらった。
そこから徒歩で数分で目的のムルデカ広場だ。
人の流れに沿っていくと、広場横のスペースに置かれたオブジェへ辿り着いた。
階段を登ると、一気に視界が開けた。
ムルデカ広場は想像の10倍くらい広く、文字通りの広場だった。
気温が低ければ色々と過ごし方も考えられそうだが、流石に30℃を超える白昼ではゆっくりすることもできない。夜だとまた違った雰囲気なのかもしれない。
ムルデカ広場の隣にあるのが、スルタン・アブドゥル・サマド・ビルという建物で、こちらはイギリスの植民地時代に、政府の庁舎として建てられたそう。
ヨーロッパの建築物の様相でありながら、屋根やアーチ部に目をやるとイスラム風で面白い。
その背後ににょきりと見えているのは、メルデカ118という世界で2番目に高いビルである。青空を全面で反射する姿は、街歩きしているとあらゆる所で視界に入ってきた。
ぐるりと巡って一通りの写真を収めたのち、昼食を求めてチャイナタウン方面へと足を向ける。
対価を要する冷たさ
Kedai Kopi Lai Foong
コピティアム(kopitiam)という名の、小さなフードコートのような商業形態がマレーシアにはある。飲み物を出す店のスペース内に、屋台サイズの店舗が軒を連ね、客はそれぞれ好きな食事を楽しめる。
今日の昼ごはんは、牛肉麺が有名な店を選んでみた。麺であればそこまでお腹に負担もかからないだろうという魂胆である。
鍋、食材、丼などが手が届く範囲に並び、その中心でおじさんが調理をしていた。
「ここで注文したらいいの?」
「そうだよ、何にする?」
「1番で」 ※前回のタイ旅行同様、番号で注文できるようになっていた
「1番ね、麺が選べるけれどどうする?」
「米粉(ミーフェン)!」
「OK、席に座って待ってな」
注文した1番は、牛肉のスライス肉、肉団子、ホルモン系など全ての具材が盛られたもの。具材の種類でメニューがいくつか分かれていた。
席に着くと別の店員がやってきた。
「飲み物はどうする?」
「えーっと…。ミロのアイスで」
店員は無言で、さっさと奥へと向かう。
少しして同じ店員がミロを置きにくる。その場で支払いを求められたので、壁にある値段表を見て硬貨をわたすも、足りていないと言われる。理解が追いつかないまま不足分を手渡し、改めて値段表を見返していたところで謎が解けた。
冷たい飲み物は値段がわずかに上がるのだ。
実は朝ごはんを食べた店でもホットとアイスで価格差があるなと思っていた。
常に暑いマレーシアの地では、冷たい飲み物の地位は高いし、その分の対価も取られるのかもしれない。
前情報にも全くなかったのでカルチャーショックを受ける。
アイスといっても、お湯で作ったミロに氷が大量に放り込まれている状態なので、底の方はあたたかい。
そんな冷却中のミロを啜りながら待っていると、牛肉麺が到着した。
ここで牛肉麺の代金を、麺を持ってきてくれた店員に支払う。
書きながらやっと気づいたのだが、飲み物の店の中にご飯屋が間借りしているコピティアムの性質上、牛肉麺を提供する店と飲み物を提供する店は別会計だったようだ。
何はともあれ、到着した牛肉麺に箸をつける。
スープはすっきりで、麺はいわゆるビーフンなので、するすると食べられた。写真にも映る辛そうな調味料は少しだけ入れて確認する程度にした。こういうところで失敗すると、旅行中の腹具合に大きくディスアドバンテージとなることは学んでいる。
焦って注文したミロは、わかりきっていたが、牛肉麺とは合わなかった。マレーシアではミロが人気、という情報が頭にあって思わず頼んでしまったのだ。
麺を全て食べきったのち、水っぽくなったミロを飲み干して、再び街歩きへと繰り出す。
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