マレーシア・クアラルンプール旅行記 5日目
旅でやりたかったリストには大半にチェックがつき、残された事柄を埋めるようにして楽しむ。
ローカルな雰囲気を味わう一方で、旅先ならではの贅沢をしたりと、日常を離れた体験ができた。
ホテルが変わり、楽しみにしていた朝食から1日がはじまる。
ビュッフェ形式だったのだが、広すぎてドリンクブースを見つけられないという事態が発生する。のちほど妻に教えてもらって辿り着けた。
野菜果物を中心に摂取してお腹の機嫌をとる。どれも美味だった。外食が続くと野菜が不足しがちなので助かる。
今日はチャイナタウンで昼食をとるまで、午前中の予定が空いている。
クアラルンプールはこれまでの数日でひたすら歩き回ったので、どうしようかと考えている中、候補の一つとしてピンクモスク観光が浮上する。
ガイドブックなどでは電車を乗り継いで行く必要があるとなっていたが、Google Mapはバスの経路を示している。しかも出発はチャイナタウン付近である。
慌てて身支度を整え、信じて向かってみることにした。
思い立ったらピンクモスク
もはや歩き慣れた道を通ってチャイナタウン方面のバス停Hab Lebuh Puduへ向かう。
道中で詳細を確かめると、ピンクモスク行きの高速バスが走っているらしい。ただ1時間に1本のため乗り逃せないと早足で歩く。
ゆとりをもってバス停に着きそうだと思っていたところ、目の前に幹線道路が表れた。バス停にたどり着くにはここを渡らないといけない。
横断歩道はあるのだが歩行者用の信号機がない。日本では考えられない道幅と交通量である。
過去から東南アジアの旅を重ねて、道路の横断技術は身についていると自負していたものの、ここは未だかつてない難所だった。
車は歩行者を気にかけることなく走っている。交差点の信号が切り替わり、どちらも赤になっている一瞬をつく。片道だけで複数車線ある道路だったので、中央分離帯を使い2サイクルを用して渡り切った。
無事辿り着いたバス停は、各地への始発点となっているようで、目的のピンクモスク行きのバスを探す。
ピンクモスクはその見た目からの通称で、Putrajayaにあるプトラモスク(Majid Putra)というのが正式名称である。
Putrajaya行きのバスを見つけるも、運転手が不在だったので近くのベンチで座って待つ。
発車時刻の5分ほど前にやってきて、ドアが開けられた。
「プトラモスクに行きたいんだけど、これで行ける?」
「ああ、4リンギット」
4リンギットなので150円しない。破格の値段だ。乗り込むときに支払って席に着く。
バスはしっかり定刻で出発した。乗り込んだのは他に髭を蓄えたインド系のおじさん一人だけだった。
バスが走り始めるや否や激しい雨が降り始め、窓の外の景色が煙る。歩いているときに降られなくてよかった。
バス停を経由して乗客を乗せ、バスは高速道路へ入っていく。
突然の豪雨に、高速道路にも関わらず、立体交差の下で雨宿りするバイクの人たちが大勢いた。
道沿いに何列にもなって停まり車線にはみ出していても、その横を走る車は気にしてなさそうだ。
高速道路上のバス停では、座りきれないほどの人数が乗り込んできた。バス内の密度が一気に増す。
金曜日だったのでモスクへ礼拝に向かうのだなと思っていたら、その後停車したショッピングモールで全員降りていった。
一方、ショッピングモールで乗り込んできた男性は、運転手となにやら交渉をはじめる。
話はまとまったようで男性が数リンギットを渡す。そのまましばしバスに揺られていたが、この辺りで降りたいと告げると、バスが信号待ちする間に去っていった。
興味深い体験が色々とあって書き連ねてしまった。
他に観光客が一人も乗っていないローカルバスの旅もよいものだ。
バスに揺られること1時間ほど、窓の外にピンクモスクが見えた。
バスが停まり、運転手がここで降りるように促してくれる。
走っているうちに雨も止んでいた。痛いくらいの日差しの中に降り立つ。
ピンクモスクはこの旅で訪れたモスクの中で一番大きく、観光客も多かった。
肌の露出が多い服装だとローブを着る必要がある。ローブは単純に服装としても悪くなく、若い女性が写真撮影に勤しんでいた。
大きいモスクとはいえ、じっくり見て回っても30分もかからなかった。
バスは行きと同様に1時間おきのため、モスク周辺を散歩してみる。レストランやカフェ、トイレなどがあるゾーンがあったので向かう。
モスク前から川縁へと降りたところになる。モスクを横から眺められ、椰子の木がいくつも並ぶ。ぜひこの場所にも立ち寄ってほしい。
ローカルバスの乗り口が観光バスの乗降場所にもなっており、いくつものツアー客を見送りつつベンチで待つ。やはり中華系のツアーが多かった。
しばらく待ち、やってきたバスに乗り込む。出迎えてくれたのは今朝ここまで送ってくれたのと同じ運転手だった。
クアラルンプールまで戻りたいと伝え、再び4リンギットを渡す。
行きと同様にバスの中は地元の方が多かった。混んでいなかったこともあり、高速を走っている間に仮眠も取れた。
クアラルンプールに戻り、チャイナタウンの近くの適当なバス停で降りる。
片道1時間程度で、ずっと座ったまま快適にモスクとの往復ができる。しかも破格の値段だったのもよかった。
充実した午前を終え、降り立ったチャイナタウンで昼食をとる。
チャイナタウン再訪
1日目の観光時には改装中で入れなかった鬼仔巷というスポットに昼食前に立ち寄った。
ウォールアートが多く配置され、自分を被写体にして様々な写真を撮ることができる。
雰囲気は良いがスペースは狭いので、ひとしきり写真を撮影して離れる。
Bunn Choon Restaurant
本日の昼食は鬼仔巷のすぐ隣で飲茶をいただく。
店の前に置かれたメニュー表で注文する料理を選び、店内のカウンターで先に告げる。
満席だったので、整理番号を教えてもらって再び店の外で待つ。15分ほどで入店することができた。
席につくや否や続々と料理が出てくる。2日目に行ったクレイポットの店同様に、先に注文しておくことで調理が進んでいたようだ。効率化されていてありがたい。
一つ一つが小ぶりなので、色々つまみながら変化を楽しめた。
辛味やクセのある味などもなく、期待していた通りの美味しい飲茶を堪能した。
麺やペストリーなど含めてまだまだメニューはたくさんあった。何度も訪れたい場所だ。
Kim Soya Bean
昼食後はチャイナタウンの北にあるセントラル・マーケットというショッピングモールを目指す。旅も終盤なのでお土産を買い込むのだ。
道すがら、市場の中にある人気の屋台でおやつを手に入れる。
絶えず行列ができていたが、回転が早くあっという間に提供された。
手に持っているのが熱いほどの豆腐に、やさしい甘さのシロップがかかっている。
ついさきほど飲茶を食べて満腹のはずなのに、ペロリと食べられてしまった。
温かい豆乳も合わせて買って、道中の楽しみとした。
10分ほど歩いて、セントラル・マーケットに到着した。
Bukit Bintanほどの高層都市エリアではないこと、ここにまでに抜けてきた市場の様子が印象にあったことから、ローカルなモールかと思っていたが、予想以上に洗練されていた。
テナントとして入っている店に加えて、屋内外問わず小さな販売ブースが設けられている。個性に溢れた魅力的な品々が並ぶ。
マレーシアのコーヒー豆を売っているロースタリーのブースがあり、思わず立ち止まる。
マラッカのカフェ同様、ここでも様々な種類のピンバッチを売っていて、妻と一緒になって各々お気に入りの一つを選び抜く。
こんなに沢山ピンバッチを買うとは旅行前には思ってもみなかった。こういった偶然の出会いが旅の醍醐味である。
店主の方も気さくに話しかけてくれて、ピンバッチに加えてコーヒー豆も買わせていただいた。
旅で購入したおみやげは、改めてまとめて紹介するnoteを書くつもりでいる。
買い物を終えて、カフェ休憩のため再びチャイナタウン方面へと戻る。
Flaon
目立った看板もなく、知らないと通り過ぎてしまう店構えだ。ドアを開けると外の喧騒とは別世界が広がっている。
見目麗しいデザートがショーケースに整然と並ぶ。どれにしようか迷っていると、一つ一つ丁寧に説明してくれた。
ベリーのタルトの上にアールグレイのプリンがのっている一品を、コールドブリューとともにいただいた。
味、見た目のクオリティの高さからも、カフェ使いというよりデザートを目当てに来るのが良いと感じた。
店内では韓国人グループと日本人女性が初対面でありながら、片言の言葉を通して交流していた。別の旅の微笑ましい一コマが見られてほっこりする。
店を出てすぐそばの観光名所、スリマハマリアマン寺院にも立ち寄る。
こちらはヒンドゥー教の寺院である。2日目に訪れたバトゥ洞窟を思い出す色彩の豊かさだ。
このあたりで陽が傾きはじめ、疲れも出てきていたのでホテルへ帰ることにした。
テイクアウトグルメとルーフトップバー
旅も5日目ともなるとスタミナが切れてくる。一番の楽しみである食事も食べ疲れによって、思いのままにとは言えない。
ただどうしても食べたいグルメが一品残されているのだ。
一度戻ったホテルから疲れた体に鞭打って、再び買い出しに向かう。
Burger Boss
マレーシアにはラムリーバーガーというストリートフードがある。
ラムリー(Ramly)というのはハラル対応した食品を販売している企業名からきており、ラムリーバーガーはハラル対応のバーガーというわけだ。
路面店が立ち並ぶアロー通り(Alor Street)の外れに店を構えているのがこちらのBurger Bossだ。
夜はまだ浅く、開店時間早々に到着すると、店主と思われる男性が威勢よく声をかけてきた。
「やあ、旦那(boss)、バーガーどうだい」
「いいね。買いたいのだけれど、メニューはある?」
「うちのバーガーは鳥と牛があるぞ。メニューはこれだけれど、なんといっても牛のダブルがおすすめだ」
「OKOK。ちょっと待って、見て決めるから」
「シングルはこの値段で、ダブルは2枚パティが入っているのにこの値段だ。絶対ダブルにしたほうがいい」
流石に毎夜屋台を出しているだけあって商魂がすごい。
おすすめされたダブルは気になったのだが、昼から豆腐花もデザートも食べて、常に胃に何かいる状態である。
「牛のシングルにするよ」
「わかった、つくるからそこに座ってな」
即時に調理担当の若い男性にマレー語で指示を出す。
鉄板で肉が焼かれる音とジューシーな匂いが座っているところまで届いてきた。
「ここで食べるか? 持ち帰るか?」
「持ち帰りで!」
思ったよりも時間がかかっていたので、気になって幾度か調理する様子をうかがった。
パティを焼いたのち、バンズの内側ももしっかり鉄板で焼いている。
ラムリーバーガーの屋台としてメジャーなだけはある、丁寧な仕事だ。
賑わい始めたアロー通りを急いで抜け、ホテルに持ち帰っていただいた。
いわゆるスマッシュバーガーの形態で、肉の食感を残しつつカリッと焼き上げられたパティが美味しかった。
bartoro
続けてセントラル・マーケットで買った焼き菓子に手を伸ばす。
ポルトガル料理を提供するカフェレストランで購入し、テイクアウトしていたのだ。
ポルトガル菓子ということで、当たり前だが洋菓子の味がする。
バーガーに続いて西洋由来の味が久しぶりで無性に美味い。
エッグタルトは昼食のBunn Choon Restaurantもいただいたのだが、中華とポルトガルで味の指向が明確に違って面白かった。
夕食は軽くにとどめ、ホテルの最上階にあるバーへと赴く。
艶やかな黒を基調としたホールは磨き上げられ、オブジェやライトを詳らかに映している。
高級感に溢れた佇まいに昂揚し、ルーフトップバーへと進む。
通されたのは屋内の席で、ツインタワービューのテラス席は予約しないと入れないようだった。
メニューには一般的な酒類やカクテルも並ぶが、せっかくなのでオリジナルのカクテルを頼む。
ジンにココナッツウォーターやタマリンド、エルダーフラワーなどを加えており、さっぱりとした飲み心地だった。浮かべられたバジルレモンオイルがアクセントになって清涼感を増す。
シーバスリーガルにレモングラス、カンタロープ(メロン)というしっかりした味わいで構成されたカクテルだ。やや癖がある。カレーリーフとカイエンペッパーが置かれているのも個性が強い。
スパイスの効いた豆をつまみに、ちびちびとグラスを傾ける。
周囲はグラスや料理が残されたままの席が多い。皆テラスへと出ていったようだ。
会計を終えたのち、我々も見学に向かってみる。
テラスにはDJブースがあり、屋内よりもアッパーな夜の気配に満ちていた。
テラス席とは別に絶景を収められるスポットがあり、SNS用に写真を撮るまくるガールズで溢れていた。
圧の強さに恐れをなして、景色を数枚とって早々に退散した。
観光も買い物も一通りやりきり、あとはただゆるやかに過ごす日が残されている。
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