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社会保険について、身の周りの人とシェアしたいので真面目に調べてみた

政府が「こども未来戦略加速化プラン」ということで、児童手当拡充、出産費用の低減などに3.6兆円の予算をつけるそうですね。

その財源のうち、1兆円は社会保険の仕組みから徴収するとのこと。

政府は、国民1人当たり「月500円弱」という試算を出してきたものの、現役世代の負担はその通りにならないのでは?という声も上がっています。

この件あまり意識してなかったのですが、木下斉さんのVoicy(怒りの放送)で火がつき、社会保険制度の課題について、自分の周りの人にシェアしたいと思い、頭の整理のため書いてみます。


給料からどれだけ徴収されているのか?

まず、自分がどれだけ社会保険を負担しているのか確認してみます。

所属している健康保険組合の資料を見ると(会社員になって初めて真面目に読みました。。)、保険料率は収入の約9%。

年収500万円だとしたら、年間45万円徴収されている訳で、なかなかの金額です。

これは事業主(会社)と、社員で負担し合う形となっているので、自分の給与明細で確認すると、大体4%が差し引かれていることを確認しました。

なお、40歳を過ぎるとここに介護保険料も加算されることになります。

徴収されたお金の半分は、現役世代以外に回っている

次に所属する健保組合の収支がどうなっているか確認します。

直近の収支はなんとか黒字を保っているという感じ。

で、重要なのは支出の内訳です。

所属している健保組合の予算資料を読むと、支出の内訳は①現役世代向けの保険給付が44%、②60歳〜74歳(定年退職してから、後期高齢者医療制度に入るまでの人達)向けの給付金が11%、そして③納付金が31%となっています。

私が所属している健康保険組合の支出割合

この「納付金」というのは、前期高齢者・後期高齢者医療制度の財源に回されているものです。

つまり、我々現役社員が(会社負担分も含め)拠出している保険料の4割(先述の②+③)は、高齢者向けに使われているということになります。

この構図はどこの健保組合も似たような形となっており、健康保険組合連合会(健保連)の資料を見ても、支出の3割強は高齢者医療制度への拠出金となっています。

健康保険組合連合会「令和3年度決算を足元とした収支見通しと令和5年度保険料率について

増え続ける高齢者拠出金

で、厄介なことに、この納付金(健保連の資料では拠出金と書かれています)は増え続ける見込みです。

健保連の見通しでは、高齢者拠出金は右肩上がりで、令和4年(2022年)が、3.4兆円であるのに対し、令和10年(2028年)には4.25兆円。 
つまり5年足らずで25%も上がることとなります。

令和5年9月14日 健康保険組合連合会
令和4年度 健康保険組合 決算見込みと今後の財政見通しについて
青い折れ線グラフが高齢者医療制度への拠出

この先、団塊世代の方々が後期高齢者となり、支える現役世代が減っていくとすると、先ほど述べた約9%の料率はさらに上がっていくものと思われます。

事実、所属する企業の健保組合も「このままだと2027年度には料率変更が必要」と書いていました。

子育て支援政策の財源を、社会保険料から徴収する理屈は?

そして冒頭の「子ども未来戦略加速化プラン」について。

厚生労働省資料を見ると、社会保険料から徴収する理由について、以下のように書いています(抜粋しましたが、長いので読み飛ばして頂いて大丈夫です)。

[医療保険者に支援金の徴収等をお願いする考え方]
*我が国の社会保険制度は、拠出の中心を現役世代が担い、給付の多くを高齢世代が受ける構図となっている中で、急速な少子化・人口減少に歯止めをかけることは、すべての国民と全経済主体にとって極めて重要な受益を持つのみならず、医療保険制度を含む社会保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に係る重要な受益。また、医療保険制度に新しい分かち合い・連帯の仕組みを組み込み、実効性ある少子化対策を実現することは、制度を支える連帯の仕組みをさらに強固にすることにもつながる。

*医療保険制度は、他の社会保険制度に比べて賦課対象者が広く、支援金制度と同様、全ての世代による分かち合い・連帯の仕組みである。現役世代も幅広い給付を受けているほか、世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれているとともに(後期高齢者支援金)、本年創設された出産育児支援金は、後期高齢者が現役世代の出産を支えるもので、医療保険制度における分かち合い・連帯の枠組みは、特に近年一定の広がりを持っている。

出典:令和6年1月19日 こども家庭庁「こども・子育て支援について」6スライド目

ちょっと、何言っているかよく分からないのですが、
要すると
1)少子化・人口減少の歯止めは、社会保険制度の持続可能性を高める

2)出産育児支援金は後期高齢者が現役世代の出産を支えている等、
医療保険制度は、全ての世代による分かち合い・連帯の仕組み

ということで、子育て支援についても、全ての世代で支えましょうと言いたそうな雰囲気です。

ここで気になったのは、「出産育児支援金を後期高齢者が支えている」ということ。

以下の資料を見たところ、「後期高齢者医療制度から、出産育児一時金の費用を支援する」と読めます。

令和5年1月16日 厚生労働省「医療保険制度改革について」(ページ4)

しかし、同じ資料に載っている図表を見れば、その「後期高齢者医療の財源の4割が現役世代の支援金」だと読むこともできます。

令和5年1月16日 厚生労働省
「医療保険制度改革について」から抜粋

ここまでの理屈をつなげてしまうと

1)後期高齢者医療の財源の4割は現役世代が支えている
2)その医療財源から、出産育児一時金を拠出している
3)みんなで支えているのだから、子育て予算も医療保険から出してね

ということになってしまうのですが、こんな訳分からない理屈をこねるのであれば、健保財政を圧迫している「高齢者拠出金」の仕組みを見直すなど、現役世代の負担を減らしてほしいものです。

拠出金を減らしていくには、資産のある高齢者の医療費負担を増やして頂くなど、それこそ「みんなで支える」形に整えてもらいたいと思います。

令和3年5月18日 
総務省「全国家計構造調査 所得に関する結果及び家計資産・負債に関する結果」
(これを見ると、3~40代の2倍近く高齢世代の方は資産をお持ちのようですね)

調べたことについて、同僚とシェアしたい

今回社会保険制度について自分で関心を持って調べてみると、何だか変な仕組みになっており、結果現役世代の負担感が高まっていることを認識しました。

所属している会社では、ちょうど春闘シーズンですし、ベアも良いですが、社会保険制度の負担感も議題に上がるよう、同僚にシェアしてみたいと思います。

この状況を変えるのはなかなか簡単ではないかと思いますが、木下さんの放送にあったように、まずは声を上げてみることから、ということで書いてみました。投書にも取り組んでみたいと思います。

長くなってしまいましたが、どなたかの参考になれば幸いです!

木下斉さん、怒りの放送はこちら↓↓
(社会保険のみならず、年金制度がおかしいことにも触れられています)

追記)この記事書きながら気になったデータを別記事でもう少し掘り下げてみたので、ご関心ありましたら、こちらもどうぞ!

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