車窓の景色をキッカケに、鬼怒川温泉の課題について調べてみた(2024/5/12 #52)
引き続き旅行(車窓)ネタです。
このGWは鬼怒川方面に向かったのですが、主な目的は「龍王峡ハイキング」「温泉(なぜか小学生の子どもも温泉好きなのでw)」「特急スペーシアに乗る(最新のスペーシアXは予約大変そうなので旧型の)」。
いずれの目的も達成し、家族で楽しい時間が過ごせました。
個人的には非常に良い時間が過ごせたのですが、龍王峡へ行く電車の車窓から廃墟となっているホテルも見え、子どもから「鬼怒川はちょっと淋しいところなんだね、なんでこうなってるの?」という発言も。
私自身、鬼怒川には30年くらい前に家族で泊まりに行った記憶があり、その当時といえばテレビCMで「ホテルニューお・か・べ」とか「鬼怒川かんこうホテール」みたいな曲を沢山聞いた記憶があります(テレビ東京でよく流れてたイメージw)。
が、これらを経営していた会社は経営破綻し、ホテル三日月や、大江戸温泉物語に経営権が移っており、鬼怒川観光ホテル東館ほか閉館したまま廃墟状態となっているホテルが多数あると知り、栄枯盛衰を感じるところです。
このあたり「鬼怒川 廃墟」で調べると色々なサイトが出てきますので、改めて私がアレコレ書くことはないのですが、子どもの疑問をキッカケに、関連しそうなデータなどを眺めて感じたことなどを書いてみます。
データを見る限りは宿泊客数はピークの半分
鬼怒川温泉があるのは、現在日光市となっていますが、こちらは2006年に広域合併しており、それ以前は藤原町という自治体にありました。
栃木県のホームページに、旧市町村ごとの観光者に関する統計データがありましたので、そちらを参照してみます。
こちらを見てみると 1989年には300万人近くいた宿泊客が直近の2023年時点では、150万人を割り込んでいます。
(なお、旧藤原町には川治温泉など別の温泉地もあり、そちらの宿泊者数を含んだ数字と思われる点は留意が必要です)
150万人の観光客数の減少はどのくらいのインパクトがあるのでしょうか?
こちらのサイトによれば、ホテルの損益分岐点は客室稼働率60%から70%とされています。
鬼怒川の、とある大型ホテルの客室は240室・収容人数約1200人程度なので、こちらが年間稼働率65%だとすると、約30万人の客数となります(1,200×365日×65%)
つまり150万人の客数減少は、 このクラスのホテル5つ分が損益を見込めないレベルになるということになります。
鬼怒川エリア全体の客数の減少がホテルの廃業に繋がっているというのは間違いなさそうです。
団体旅行の減少インパクトが大きそう
ではなぜここまでの客数減少が生じたのでしょうか?
これは団体旅行の減少というのが大きな要因のようです。
まさに私が30年ほど前に鬼怒川へ行ったのは、 父親の仕事関係の団体旅行でした。
宴会場で団体みんなで夕食を取り、 大人はその後カラオケなどに興じる。
私は兄弟などとゲームコーナーに行って、「ワニワニパニック」などで遊んでいたような記憶がありますw
こういった旅行に近いもので言うと「社員旅行」というのが該当するのでしょうか。社員旅行は、産労総合研究所の調査では1994年時点と比較し、2014年時点でほぼ半減しています。
私もかつていた職場で、当時の先輩(今はもう60代とか)がかつての社員旅行の思い出を語っていたなあ、というウッスラした記憶があります。
景気の悪化による予算の削減、コミュニティに所属する人の価値観の変化といったことがあり社員旅行が減少しているのではないでしょうか。
(仮に会社から予算が出るとしても、先述したようなフォーマットの旅行に自分の家族が行ってくれるとはとても思えませんw 行くにしてもひとりですね)
鬼怒川は首都圏からのアクセスが良く、社員旅行の定番だったと思われます。
そういった需要を見越して設備投資をしたもののバブル崩壊もあり社員旅行が減ってしまったことにより、設備は過剰なまま客数も減ってしまったという構図です。
なぜ取り壊せないのか
で、残る疑問。廃業したホテルが何故そのまま放置されているのか?
ニュースサイトからの引用となりますが、所有者の所在が分からない・費用が大きい・立地上撤去工事が難しいといった理由がありそうです。
市議会の資料などを見てみると、平成30年時点で公園を整備する事業の「一環」として廃業したホテルの解体を行ったこともあるものの、廃屋旅館だけの整備は難しいといった見解も出ています。
鬼怒川に限らず、これから人口は減り続け、過去使われていた建物が放置されるというケースは地方を中心に増えていく可能性があります。
木下斉さんのvoicyでも時々「建物をつくるための予算ではなく、壊すための予算を国がつけるべき」という話が出てきますが、まさにそれが必要と今回調べてみることで感じました。
それでも良いところ沢山の鬼怒川エリア!
子どものふとした発言をキッカケに鬼怒川温泉について少し掘り下げてみました。
少々暗めの話題を書いてしまったのですが、廃墟として取り上げられるのは鬼怒川温泉の一部分であり、今回宿泊した宿からは鬼怒川の素晴らしい景色が見え、この景色を見ながらの温泉も楽しむことができました。
日光・鬼怒川エリアはスペーシアxなどの特急が数種類走っているほか、SL機関車も走っています。鉄道好きな子どもにはうってつけの行先です。
周辺には江戸村、ラインくだり、猿軍団などアクティビティも豊富にあり、もちろん少し足を延ばせば日光周辺の歴史探索もできるわけでとても良かったです。30年前の団体旅行で何してたか思い出せないですが、その時よりきっと良かった。
(唯一不満があるとすれば、路線バスで電子マネーが使えなかったところ! 東武鉄道グループのバス会社なのに電子マネー使えないのは、ちょっとあり得ない気がします)。
ということで、スペーシアxの人気が少し落ち着いてきたころに、きっとまた再訪するだろうと思います。廃墟の問題は難しいですが、少しでも前進することを願って、今回は以上とします。
前回の車窓ネタはこちらです(ハイキングの様子です)。よろしければどうぞ↓
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