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「チームづくりはパズルに似ている」というのがしっくり来たという話

今年はJリーグ創設から30周年ということで、それを記念するテレビ番組もよく目にする。
だからというわけでは無いが、私が最近読み進めているサッカー漫画がある。『GIANT KILLING(ジャイアントキリング)』という、「弱小プロサッカークラブの監督」が主人公で、強豪チームを相手にたたかい、勝ち負けを繰り返しつつチームを成長させていくといった漫画だ。

2007年に連載開始されているので今更感があるものの、読み始めるキッカケは、この漫画を題材にした「チームビルディング」手法を説く『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』という本だ。

こちらの本も2012年の発売だそうなので、もう10年以上前の本ということになるが、10年経った今、組織ではたらく人たちにとって、より重要な一冊になっている気がする。

著者は、楽天市場に出店している企業経営者や店長向けに、チームづくりのプログラムを提供する「楽天大学学長」の仲山進也さんという方。

本書では「チームの成長法則 4つのステージ」と「チームワーク7つの力」について、『GIANT KILLING(ジャイアントキリング)』の場面を引用しながら解説しており、全編にわたって参考になったのだが、とりわけ「チームづくりはパズルに似ている」としている部分がしっくり来たので、今回はその部分について書きたい。

※まだ本書をご存じでない方で、全貌を知りたい方は、「楽天ブックスで(by仲山さん)」お求め頂きたい。
対談動画(末尾にリンクを掲載)でお相手の方が「Amazonで買えます」と言った直後に、仲山さんが「できれば楽天で・・・」と言い直しているのがツボだったw そりゃそうだよね

多くの組織は「似たようなピースで分類する」ところ止まり

先述の通り、仲山さんは「チームづくりはパズルに似ている」と述べている。
パズルをする時は
①まず、ピースの形や色、模様で分類して、ざっくり並べる
②次にピースの凸凹を組み合わせる作業を進める
というステップとなる。

チームづくりでも「この人は営業向きだから営業部、あの人は営業向きでないから管理部」のようになんとなく「それっぽい役割分担」をする。
つまり近い形や、色、模様のメンバーを集めることをしている。

試しに手持ちのパズルを使ってみた。画像(1)が組織の構成員だとして、画像(2)の近い色で分類してみたものが部署ごとに分けられた姿、ということになる。

画像(1)組織全体に見立てたパズルのピースたち
画像(2)組織の構成員(ピース)を近い色で分類

ちなみに部署ごとに見立てた画像(2)において、下半分の真ん中にまとめられているのは、大人気の某テーマパークのメインキャラクターの絵柄である。この部署はきっと花形部署なのだろうw

仲山さんによれば、世の中の多くの組織では、ステップ①で止まっていることが多いという。

ステップ②は、凸凹がピッタリはまる組み合わせを探すために、ガチャガチャとピースをぶつけ合わせることになり、互いに自己主張し、納得のいく形を探る。その間は自分の仕事も相手の仕事も進まない。
だから多くの組織は、その組み合わせ作業を「非効率」と考えてやろうとしないのだそうだ。

しかし凸凹がピッタリはまったときに初めて、それまで考えられなかったような「期待値を超える」パフォーマンスが発揮できるようになるという。

ピースがハマった時に発揮される凸凹力(でこぼこりょく)

本書では「チームワーク7つの力」の1つに「凸凹力(でこぼこりょく)」という概念を取り上げている。

凸は強みで、凹は弱み。凹までが「力」に含まれるのかと言うと、「自分の凹は、誰かの凸を活かすためにある」から。
チームづくりにおいて、メンバーの凸を活かす力とは、自分の凹を活かす力でもあるのだという。

例えば、「アイデアを出すのが得意」(凸)だが「細かい分析は苦手」(凹)みたいな人と、「きめ細かな市場分析が得意」(凸)だが「前例にとらわれた発想をしがち」(凹)みたいな人がいたときに、この2人がタッグを組めるとパフォーマンスが高くなりそうだ。

メンバーがお互いの凸凹の理解を深めながら、ピタッとハマる組み合わせが見つかり始めると、チームは次なるステージに進んでいく。

ここで手持ちのパズルをもう一つ出してみた。

画像(3)水色のピースのほうが色の濃いピースよりデカい

画像(3)の色の濃いほうのピースは、画像(1)(2)で出てきたものより、小ぶりだ。ピースの大きさが個々人の能力だと仮定すると、水色のほうが能力が高い、ということになる。
では、小ぶりなピースの凸凹をくっつけてみるとどうか。

画像(4)色の濃いピースの凸凹を組み合わせた

画像(4)のように、水色のピースと勝負ができそうな大きさだ。
水色の凸が2個だとすると、色の濃い方は凸が10個あり、多様な強みを持っていると言えそうだ。

凸凹を合わせるために必要なこと

では現実の組織において、凸凹をピッタリはめるにはどうすれば良いか。本書では色々なポイントが挙げられているが、ここでは2点紹介する。

①メンバーのコミュニケーション量を増やすこと
凸凹をピッタリはめていくには、後述するお互いの意見を場に出し合うことが必要なのだが、そもそも「このメンバーだったら、ここまで言っても大丈夫かな」という関係性にならないと意見も出てこない。
そのためにまずはコミュニケーション量を増やすことが重要となる。

本書ではカンタンかつ効果的なものとして「自己紹介」(「スタッフ名鑑」をつくるというプロジェクトを立ち上げて、みんなで自己紹介をシェアするなど)を挙げている。

②お互いの意見を場に出し、対立・衝突を経つつ、相互理解を進める
コミュニケーション量が増えてくると、各メンバーの本音が意見が場に出てくるようになる。
意見が一致するとも限らず、対立・衝突が起こるが、ここを乗り切ると相互理解が進み、凸凹がピタッとはまるようになってくる。

本書では「みんなで一緒にやる必要があり、かつ、答えがないお題」「リーダーに依存できないようにする」状況において、このステップが進むとしている。
例えば「突如急増した注文にどう対応するか」といったハプニング的に発生した事案にアイデアを出し合う場面などが挙げられている。

非効率だからと、凸凹を合わせないとどうなるか?

先述の通り、凸凹をピタッとはめる過程は「非効率」だからと、多くの組織ではリーダーが指示をして、メンバー(ピース)は個人個人のタスクを進めるということになりがちだ。
結果として、そういった組織では「事なかれ主義」「それは自分の仕事ではない」みたいなことが発生していってしまう。

しかし、本書が発行された2012年よりもさらに事業環境の変化が激しい現在にあって、「それは自分の仕事ではない」と言っている人たちだらけの組織では、環境変化に対応できなくなってしまう。
このことが、組織ではたらく人たちにとって本書がより重要な一冊になっていると、私が思う理由の1点目。

重要だと思う理由の2点目は、メンバーの入れ替わり(チームビルディングの機会)が増えているということ。
10年前と比べると、学生時代の友人や、会社の同僚、取引先の人など転職話を聞く機会が増えている。
多くの組織にとって、時として能力の高いメンバー(画像(3)の水色のピース)が去り、残ったメンバーでパフォーマンスを上げなくてはいけない場面というのが起こり得る状況だ。
よって特定の個人に頼った組織ではなく、メンバーの凸凹を組み合わせる組織にしていくことがより重要だと思う。

おわりに:3連覇時代の広島カープと凸凹力

ところでサッカー漫画を題材にした本の話のなかで恐縮なのだが、自分の応援している広島カープがかつて3連覇した際のことを田中広輔選手が語っているインタビュー記事がある。

「3連覇の頃は1人ひとりが自分の役割を理解してチーム全員が勝つために何ができるかをブレずに1年間戦うことができていたのではないかと思います。」というあたりから、その時のカープは凸凹力があったのだなあ、と本書を読んだからこそ感じた。そんな話で、今回は締めたいと思う。
(ちなみに今シーズン、ほとんどの解説者が下位予想なところ、Aクラスキープ、かつ試合をしながら成長すると監督がコメントしているあたり、「ジャイアントキリングみ」があるww)

以下は本の出版を記念した対談の動画(Amazon、楽天ブックスのくだりもある)。
自分は掃除しながら音声のみで聴いていたが、途中のグループワークのくだり以外は、本書の内容がよく分かって参考になる。タイパ重視の方はまずこちらがおすすめ。


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