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夏越の祓に水無月を

6月30日は、夏越の祓。
1年の半分が過ぎたこの季節、半年分の穢れを落としてあと半年の厄除けを祈る神事が、神社では行われている。

神社の境内には茅の輪が飾られることが多いようなのだけれど、近所の神社では見つけられず。お参りする際にあったらいいな、と思っていたけれども、なくてもまあお参りさせて頂くことにはかわりはないわけで。

というところまでは知ってはいたのだけれど、夏越の祓といえば、という和菓子があることを最近知った。水無月という名のそれは、三角形をしているらしい。

というわけで、近場の和菓子屋に行ってみたところ、あった。確かに、この季節限定のものらしい。

白い外郎の上に豆が乗せられている三角形のもの、というのが概ね一致した定義らしい。三角形なのは、もともとが氷を見立てたものだという。豆は「魔滅」。悪しことを防ぐ意味で用いられているそうな。日本の言葉は本当に不思議で、面白い。

実際に水無月を見てみると透明感があって、確かにこれは氷を思わせる。食べてみると、もっちりとした外郎はちょっとさっぱり感とは程遠い感じはするけれども……。まあ、そこは突っ込まないでおこう。

この水無月というものを知ったきっかけは、最近読んだこの本。

『事典 和菓子の世界 増補改訂版/中山圭子』

たまたま目にしたこの本。和菓子って、いままで気にはなっていたけれど実際に食べることってあまりなくて(そもそも間食をあまりしない)、いろいろな種類があるのは知ってはいても、製法とかその中に込められている意味とかはほとんど知らなかった。

なにかを象った上生菓子とか、すごい憧れてはいたのだけど、どことなくハードルが高いし、どこに行ったら変えるのかもあまり良くわからないし。普通の和菓子屋さんに行っても、上生菓子ともなるとあまり作っている印象がない。羊羹で有名なとらやにいけばあるかな、というくらいのイメージ。

そんなところに読んだこの本。外郎とか求肥とかが何かは知ってはいたけれど、それをどうやって作っているのかは全然知らなかった。歴史とか、製法とか、込められた意味とか、そういうものがひとつひとつ丁寧に、でも簡潔に整理されている。事典、という題名のとおりの側面はありつつも、著者のイメージや、著者自身が出典を調べていったときの疑問なども書かれていて、ちょっとエッセイっぽい側面もあって、それが読みやすさにつながっている。

ひとことで和菓子といっても本当にたくさんの種類があるわけだけど、概ね共通しているのは、油脂を使わないことと、植物性の原材料であること(一部は卵を使うものもあるけれど)。油脂が苦手な人、ベジタリアンな人には、実はうってつけなのが和菓子。洋菓子ではなかなか無い独自性は、これからの時代にも生き残っていく要素がちゃんと備わっていると思う。

なにより季節感を感じ尊ぶところが、やっぱり日本らしくて良いな、と。

和菓子の世界は深くて広いけれど、ちょっと覗いてみるだけでも面白い。これを機に、和菓子の世界を少し探索してみるのも良いかもしれない。

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