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[旅行記]津で「やじろ」を食べる

津という町を、通りすぎずに立ち寄ってみたのは初めてだった。

津駅からは南に2kmほど、津新町駅からは東に1.5kmほど。なんともアクセスが微妙な一角は、昔は城下町だったらしい。建物はそれなりに新しいけれど、どこか端々に昔からの風格みたいなものが感じられる。侍屋敷とかあったんじゃないかな、という。

そんな一角のなかにあったのが、玉吉餅店。どうやらこちらで、昔からのものを取り扱っているというので、詳細はあまり確認しないながらもとりあえず訪れてみた。

商品紹介のポップでイチオシになっていたのが、「やじろ」というもの。店員さんに聞いてみると、みたらし餡や醤油餡のお餅っぽいようだったので、それをいただく。

注文をしてから焼くスタイルだった。

こちらのお店では「やじろ」というらしいけれど、一般的には「たがね」というらしい。
ただし、「たがね餅」とは言わないらしい。「津のソウルフードというか、昔からあるのであって当たり前みたいなものなんですよ」という店員さん、ささっと手早く焼いて餡に通して出来上がりを持ってきてくれた。

スタンダードなやじろを2種類、甘さがあるみたらし餡と、ゆず醤油。真ん中はもち麦が入ったやじろ。

まだ温かい状態で、焼き目の香ばしさが残っている。餅とはいっても割とあっさりめで、伸びたりせずにぷつっと噛み切りやすい。みたらし餡はじんわり甘く、ゆず醤油は丁度いい塩気。ふたつが丁度いいコントラストで、これは交互に食べるとどこまでも無限にいけるやつ……。

もち麦やじろはさらに餅っぽさは減っていて、反面で食べたときのコクみたいなのは強い。この場合はやっぱりスタンダードな方が良いかな、と。

後で説明書きをよく読んでみると、もち米とうるち米を混ぜて作ってあるものだとか。つまり純粋な餅ではないのか。もち米だけだと高級すぎたのでかさ増しのつもりだったのか、それともうるち米を混ぜたほうがややあっさりめになって美味しいと感じたのか。古くからあるものだけに、どうしてこれが生まれて、そして残っていったのか、調べてみると面白そう。

開店からそう経っていない時間だったけれど、店の軒先で頂いている間も地元の人たちが何本も買って帰っていっているのが印象的だった。ここ玉吉餅店は150年以上の歴史があるのだとか。幕末の頃になるのかな。そこからずっと、このたがねが食べられ続けているのかと考えてみると、なんだか不思議な気分。歴史とつながっていて、自分もその歴史の一部になっている、なんて感覚で今の状況を見てみると、なんとなくそれはそれで意味のあるようなことに思えてくる。

ささっと食べれて美味しい、ほっとひと息。

ごちそうさまでした。

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