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世界各国の食を巡る:アラブ料理編

唐突に思いついた。
東京近郊で、世界各国の料理を食べよう。

ことの発端とあらましについては、過去回を参照。

最初は中東付近からスタートして、まだまだ中東料理を攻めている。今回はやや広く、アラブ料理全般を。

トルコ料理とアラブ料理、日本人からするとどことなく似た雰囲気をまとっているようにも思えてしまって、明確な違いというか境界線がどうなっているのかがぼんやりとしか思い浮かばない。食は人種と同じく明確な分離などできないので、現代になればそれこそ相互に影響しあってしまっているわけだけれども、それでもなんとなくこれはトルコ料理、これはアラブ料理、というのは存在している、気がする。

今回訪れたのは、有楽町にある MishMish というお店。Middle Eastern Kitchen & Bar という肩書きの通り中東の料理を幅広く取り扱っているお店で、少量をいろいろと楽しめるコースとなっていたので、これはありがたいということで伺った。

前菜の盛り合わせプレートは、サラダ、ピクルス、オリーブにペースト3種類。ペーストは定番のひよこ豆のフムス、ヨーグルト、そして焼きナスのババガヌーシュ。

フムスはもう定番なので慣れたものではあったけれども、ババガヌーシュというのは食べたのは初めてかもしれない。これは本当にナスなのだろうか、というふわふわとろとろな食感で、少しクミンが入っているようだ。ふわりと鼻にぬけるスパイスの香りが異国っぽさを感じさせる。少しずつ味が違うペースト類をピタパンにつけて食べるだけで盛り上がってくる。

このプレートで一番驚いたのは、シリア産だというオリーブ。そこまで気にもとめずにひと口食べてみたら、あまりの想像外の味わいに驚いた。苦味がかなり強く、独特の風味。これは普段食べ慣れているオリーブとは全然別物だった。

シェフに話を聞いてみると、シリアや中東あたりではこういう品種が定番らしく、日本人だと結構残す人も多いとか。確かに、この味は舌が拒否してしまうこともあるかもしれない。とはいえ自分としては、これはこれで。普段ではなかなか経験できない味で、こういうのこそが楽しい。

日本にもだいぶ馴染みの深くなったファラフェル。ひよこ豆とコリアンダーのひとくちコロッケ、とでも言えば良いのだろうか。カリッとクリスピーで、やっぱり豆だとはなかなか信じられない一品。

思えば、初めてファラフェルを食べたのは10年以上前の話だけれど、あのときも最後に話を聞くまで豆だとは全然思わなかった。豆料理の中でも、満足度の高さでは一級品だと思う。

ムール貝とエビのタジンは、割とスタンダードな味わい。ここでもクミンがふわりと香る。が、これはあまり中東っぽくはなかったかな。

ケバブ2種と、中東の炊き込みご飯であるカブサ。ケバブはチキンと羊のコフタ。羊肉が美味しい! しっかりと凝縮されたトマトソースとの相性が抜群で、羊肉の風味というのはやはりアラブの風を呼び起こしてくれるのだろうか。

そしてカブサ。インドではビリヤニ、ペルシャ料理ならピラウ、ウズベキスタンならポロだけれども、きっとその流れの一端なんだろうな、と想像。名前からは少し関連性が想像しにくかったけれど、出てきた料理を見て、香りをかげば、すぐに納得。

肉のエキスを吸った長粒米に、強すぎないややシンプルなスパイスの香り。ブラックペッパーが主体かな。スパイシーになりすぎない、旨味とちょうどいい塩気、そして長粒米のかるい食べごたえもあって、いくらでも食べれてしまいそう。

日本人にあわせてあるのか、油の量もかなり控えめに見えた。これはきっと、現地だと油がどっしりなスタイルなのでは? 


今回も割とアラブ料理の定番な料理が中心だったけれども、だからこその安定感。日本人のシェフが作るので、現地くささ全開ではなく日本人にも食べやすいようにある程度アレンジしているのだろうな、とは思うものの、やはりこういう方が安心して美味しく頂けるし、ところどころで見え隠れする現地の味がいいアクセントになっていた。

オリーブ、本当に衝撃的だったなあ。

シリアやパレスチナあたりでは、オリーブの漬物、何年も寝かせるような保存食がたくさんある、と聞いている。その味も、きっと自分が想像しているのとは全然違う味なんじゃないかと思えてくる。どんなものなのか、ちょっと、いや、かなり気になる。

メインの料理の美味しさばかりが際立つけれども、どちらかというとそういうマージナルな部分の方に興味が向いてしまう性分。漬物とか、調味料とか、そういうところに現地の定番の味が揃っている気がする。


遠くアラブの地まで飛んでいった気分になりました。
ごちそうさまでした。


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