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とあるMMORPGのギルマスのことを思い出した話

もうずいぶんと前のことだけれど、MMORPGで遊んでいたことがある。

MMORPGが日本で流行り始めた初期の頃で、今みたいに選択肢は多くなかったし、昨今問題となっている課金アイテムのようなものもまだ全然一般的ではなかった頃の話。

MMOと言いながらあまり大人数でつるむのは苦手だったので、基本的にソロ活ばかりだったのだけれど、ふとしたことから最大手のギルドに参加することになった。ゲーム内ではもちろんだけど、ゲーム外でも常時チャットや議論ができるように、チャットのスペースが準備されていた。今でいえばLINEグループチャットがある、みたいな感覚。

そこのギルドマスター(ギルマス)とは、入団するときの面接みたいなときに初めて出会ったわけだけれど、その後のギルドの活動やギルド戦などで音声も含めて会話していく中で、いろいろな方面で結構特殊な考えを持っている人だということに気づいた。

ギルマスがかなり気を使っていたことのひとつに、自分のゲームアカウントに対する異常なまでのセンシティブさがあった。

アカウントIDやパスワードが漏れないように気を使うのは当然として、2段階認証の導入やサイト間のID連携の徹底的な排除から、使うブラウザやその暗号化・通信秘匿化のための方法、複数回線による物理的なネットワークの分離などのハード面、それ以外にもネット上での言動や情報の痕跡を残さないための振る舞いなどのソフト面も含めて、いろいろな対策を取っていた。

正直、ゲームのためのそこまでするのか、と思った。

界隈にアカウントハックの話題がちらほら出ていたとはいえ、普通にプレイしていたりネット上での活動をしている分にはそういうことに遭遇することなんてほとんど無いはずだったのに。

自分はいわゆる「インターネット老人」ともいえる年代なのだけれど、そういう人間なら「自分の情報をむやみにネット上に流さない」という思考回路は当然身につけていると思われる。自分もそういう思考は持っている方で、今の世代とは全然考え方が違うと思う。ある意味古い人間。

その自分からしてみても、当時のギルマスの対策はちょっと引くくらいのものだった、ということを言いたかった。ネット上の便利な機能の多くが使えなかったりして、結構面倒な生活を送ることになっていたはずだから。

でも、ある意味でそれも当然の対策だったのかもしれない、とも思う。なぜならそのギルドには、関係者が少なくとも1000人はいるような最大手だったから。

強いギルドにはそれだけの「旨味」があった。もちろんリアルのお金の話ではないけれど(もしかしたらそういうのも裏ではあったかもしれないけれど)、ゲーム内では強烈な旨味があった。いろいろな手段で手に入るゲーム内通貨はもちろんのこと、ギルドでしか手に入らない、しかも滅多なことでは作り出せないような最強クラスのアイテムたち。そのアイテムがあれば、明らかに他者よりも強いキャラクターになれた。とはいえ多人数で戦うギルド戦では、ひとりでは絶対に勝てないからギルドが必要になるのだけれど。

そういう旨味と、その結果手に入ったアイテムたちは、いわば「ギルドの宝」で、その宝を手に入れるために1000人以上の人たちの協力が必要となっていた。そういうギルドを取りまとめる立場の人間として、ギルマスはそこまで徹底的に自分のアカウントを守るための措置を取っていた。

そうするだけの価値があって、そうしなければ何かあったときにメンバに申し訳が立たない、という考えから出ている行動だった。ある意味プロフェッショナルだった、と思う。

それだけ、個人情報を晒すことというのは危険なことだったし、危険度という意味では今でも変わらない。というかむしろ今の方がより危険度は上がっているのではないか。

なんてことを、昔のゲームを懐かしく思いながらふと考えていた。


さて、なんでこんなこと思い出したかというと、こんなサイトを見たから。

SNS上に載せた子供の写真や動画は、簡単に犯罪に利用される、かもしれないというもの。

実際、それは簡単にできてしまうわけで、あとは利用されるだけの価値があるかどうか、犯人に見つかるかどうか、というある意味ギャンブル的な要素によって決まってしまう。それを避けるためには、とにかくSNSに載せない、ということ。これを徹底しなければならない。

自分なんかは、SNSというかネット上に個人情報を載せるのにはかなりの抵抗を覚えるし、なにかの集まりのときとかでもできればアップするような写真には映りたくない、と考えてしまうタイプ。

なのだけれど、最近はある程度は仕方ないというか、毎回断って自分だけ映らないのもなんか言い出しにくいな、ということで流されてしまうことも。まあ、今の時代これくらいは普通か、なんて考えたりもしてきていたけれど、やっぱり危険なことは危険だと思う。

自分みたいな大人にはあまり利用価値は無いだろうけれど、そういう考えでいることも危険なので、やはり基本的には自分の身は自分でしっかり守るように考えておかないと危険だな、と。

特に子供の情報は利用価値が高いし、将来的になにか禍根を残すかもしれない、という考えは、両親は持っておいた方が良いと思う。気をつけすぎる、ということはないくらいなので、過剰とも思えるくらいがちょうど良い。

将来、自分の子どもたちが不幸なことに巻き込まれないように。SNSに投稿するばかりが、子どもたちのかわいい姿を愛でる方法でもないので、別の方法も考えていければいいと思う。

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