[旅行記] 台湾で食べたもの3 素食
はじめの記事でも書いたのだけど、台湾のベジタリアン料理「素食」はその看板を町中の至る所で見かけた。
市場のまわりにには5件ごとに看板が掲げられるくらいには多く、町中でも1ブロックに1件くらいはあるのでは、というくらい。昔からベジタリアン料理が多いとは聞いていたけれど、改めて注意しながら見てみるとここまで多いとは思わなかった。
「蔬食」という表記もあって、素食とは若干意味合いが違うらしい。精進料理に近いのが素食(発音は sùshí )、もう少し広くベジタリアン料理という意味で蔬食(発音は shūshí ) 、と教えられた。
普通に野菜料理らしい姿をしているものも多いけれど、ときどき、これは肉じゃないのか? と思えるほど精巧に真似てあるものがあるのが素食の面白いところ。小麦粉などから取れるグルテンやしいたけなどの弾力のある食材を使ったりして、肉や魚などを再現している。
このあたりはちょっと不思議なところで、自分がよく食べるインドの料理ではベジであっても肉を真似たようなものはほとんど見かけない。ベジならタンパク質は豆が主要で、ダールなどは普通に煮て味付けしたものだし、それ以上に高度な加工をしようとはしないのが普通、だと考えている。
それで十分に美味しいし、わざわざ手間を掛けてノンベジに似せる必要なんかない、というような気骨を感じる。どちらかというと自分もその方が好ましいと思っている。
でも、台湾や、それ以外にもベトナムなどでも(あるいは日本でも?)フェイクミート的なベジ料理は結構多いように思える。それはそれでメリットはあるし、ノンベジの人がベジを試してみようと思うその入口としては確かにありなのかもしれない。が、本当に精進料理として考えると少し微妙な気はしている。
なんてことを素食の看板を見かけながら考えていたのだけど、まあとりあえず食べてなんぼ、ということで朝食にちょうどいいお店があったので寄ってみた。
台南は永楽市場に近い 大家好素食 というお店。朝6:00頃からやっていて、他のノンベジの店と同じかそれ以上に人がやってきていた。
仕組みが分からなかったのでどうしようかと店の中を覗いていると、店のおばちゃんが日本語の説明文を持ってきてくれた。お盆に好きなものを乗っけて、料金は重さで計算されるらしい。なるほど。
あまりたくさん食べるつもりがなかったので、特に味が想像できなさそうなものを中心に少しづつ取ってみた。
これくらいなら値段もそこまでいかないかな、と思って会計してみると、別のおばちゃん、重さなんて計らずにぱっと見で「70元ねー」って、あれ……目分量なのか……(苦笑)
気を取り直して食べてみる。
・インゲンは油が少しと、うま味調味料かな。日本でもある味つけ。
・ワカメは安定の鶏ガラ系の調味料に生姜風味。
・その下のは白いのは。豆腐の皮みたいな。湯葉だろうか。これがかなり美味しい! しっかりとした噛みごたえに八角が香る。緑色のは、おそらくオリエンタルバジルでベトナムで食べたのと同じ風味があった。
・左上に行って白豆と湯葉っぽいものの煮物はほとんど味付けがされていない
・豆腐の角煮はそのまんま豆腐の味だけど、これもほとんど味がついていない
・左下の丸いものは玉ねぎを細かく刻んで粉ものでまとめたのを揚げたもの。インドのパコラっぽい。玉ねぎの甘味がしっかりと出ていて美味しい
・手前のハムっぽいものとソーセージっぽいもの。これは凄い。本当にハムやソーセージ。八角と甘じょっぱさがあって台湾らしい味付けで、ハムにはどことなく燻製の風味もつけられているみたい。食べたときの弾力とかもしっかりと肉肉しい。よく出来てるなー、と。
台湾らしく基本的に味付けは控えめだけれど、どれもちゃんと美味しい。特に湯葉&バジルが一番気に入った。ハム&ソーセージも、想像以上にハム&ソーセージ。以前、日本の豆腐屋で食べた豆腐ハムがかなり残念な出来だったので、それと比べたら5段階くらい上の美味しさだった。普通にお酒のつまみになるレベル。
いや面白い。他にも10種類くらい料理はあって、各々が好きなものを選べるようになっているし、主食もご飯にお粥など何種類もあった。朝からこれだけ選択肢があるのは、正直うらやましい。
インドの豆料理の多彩さも素晴らしいけれど、台湾や日本などの豆腐料理の多彩さもまた、誇れるものだと思う。日本では、もう少し湯葉などの料理が広がってくれると良いのだけれど。このあたりは中華料理の方に軍配があがりそうだ。
ベジ料理ひとつとっても、食文化の違いが垣間見える。
こうなると、日本の精進料理をもっと深掘りたくなってきた。
外を知ることで、逆に中のことが見えてくる。
こういうの、旅の醍醐味だと思う。