そうだ珈琲屋になろう その2
「ベルニー二」(東京都板橋区)の美味しさを知った私はそれ以来定期的に通うようになった。
マスターに色々聞いたり、コーヒーを淹れる所作を観察したり、一人のお客として。
そのなかで珈琲のノウハウを覚えた気がする。
そんなお店の空間にいるのが楽しかった。
常連さんがマスターと世間話をしてたり、私もそうだったが煙草とコーヒーをセットで時間を満喫する。
街のオアシスそのものだった。
ある日店内の焙煎機を見ながらマスターに「この仕事で一番大変なのはやっぱり焙煎ですか?」と聞いた。
するとマスターは「いやいや、すべてですよ。」と答えた。
「何から何まですべて大変です。手を抜いていい作業は無いので大変ですよ。」
私が驚いていると
「でも好きな仕事ですから辛くはないです。さらにお客様が喜んでいただけると頑張ろうと思えるのですよ。」
と教えてくれた。
まるで今の私の悩みを知っているかのようにマスターは答えてくれた。
「誰でも珈琲屋をやることってできますか?」と聞くと
「誰でもできます。ただしちゃんと勉強しないといけませんよ。」
私は思い切ってマスターに悩みを話した。
転職を考えていて珈琲が好きで仕事にしたいと。
マスターは「いいじゃないですか。応援いたしますよ。ただ焦ってはダメです。今の仕事を続けながらもっと珈琲の事を勉強してみてください。まだまだ知らない世界があると思いますので。」
私そのとき決意しました。
まだはっきりとしたビジョンは見えなかったけど、「珈琲屋をやろう」と。
(つづく)
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