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Tokyo Forum 2019 ー孫正義×馬雲ー

 今回は, 東京大学:安田講堂で開催された『Tokyo Forum 2019』(2019/12/6)の講演のまとめと感想です. 

 対談したのは2人, ソフトバンクの孫正義さんと, アリババの創始者である馬雲(ジャック・マー)さん.  Moderaterは, フリーアナウンサーの小谷真生子さんです. 

   このForumでは, 孫正義さんが東京大学に出資して「Beyond AI 研究所」を立ち上げると発表したことで話題になりましたね. そんなAIを1つのテーマに, お二人の経営理念やエピソードを踏まえつつ, 今後の社会の変化についてお話が展開されていきました. 

  

 1.伝説的な5分間

 まずは, お二人が初めて出会った'伝説的な5分間'について言及されました. これは2002年, 孫さんが「次は中国が来る」と見据えて投資に踏み切り, 何人もの起業家と会う中で, たった5分でアリババへの投資を決めたという逸話です. 

 「実際には10分くらいかな」と冗談めかして始まったお話ですが, 200社以上のスタートアップからマーさんが選ばれたのには明確な違いがありました. 

  「ジャックは事業計画すら話さなかった」

 マーさんが唯一, 語ったのは'なぜ中国にアリババが必要なのか'だけだと言うのです. 彼は一切お金の話もしませんでした. 「友人に言われたから話をしに行った」という本人の言葉からも, その異色さが見て取れますね. 

 「10分」の後半には, 孫さんがむしろマーさんにお金を受け取ってもらうよう説得する時間だったというから驚きです. これに関し, 彼は「やりたいことには1/10で十分」と言ったとのこと. 

 孫さんほどの人物に「5分」で'もうわかった, ぜひ投資をしたい'と思わせたこと以上に, 自分がやりたいことにかかる資金を正確に把握し, その額しか求めないところに, マーさんの一意専心な姿勢を学べた気がします. 


2. 起業家のあり方

 ここから派生し, 起業家(起業する人, とします)のあるべき姿についてお二方に語ってもらいました. 

 孫さんからは, 投資家としての目線から「心から情熱を伝えること」
 マーさんからは, 経営者としての目線から「10年後のvisionがあること」

 前者について, バカではないけれどクレイジーになれる必要がある, と語られたのが, 先に記した「5分間」の実感を強めたように感じました. 

 後者に関しては, 自分のやりたいことに向かって, 自分の得意分野を理解し, 未来を信じるのだ, と一つ一つに重みが感じられるお話が繰り広げられることとなりました. 未来を楽観的に信じられないならなるべきではない, という断言にも注目したいところです. 


 ここからお二人に共通して, 経営者とは'会社をベストな方向性に導いていく'存在だと語っています. 

 チームに対しては, 適切な人員を見つけ/調整し/ 力を与える, 道具を与えるのがCEOであり, これは「educationをする人」だとマーさんは言及しました. 元教師である彼だからこそより重みが増す言葉です. 


3. お金がついてくるのは 

 投資という軸について, 最後に投げかけられたのは’お金’に関する価値観でした. 

 答えは驚くほどすぐにマーさんから上がりました, 

「お金を追いかけるとお金は逃げていく。 夢を追いかけるとお金はついてくる」

 一貫して, 素晴らしいvisionと情熱が必要なのだと語るマーさんに, 頷く孫さん. 

 そこに付け加えられた言葉もまた重要です.

「お金を持っている存在は責任を持っている」 

 ついてくるお金は, 誰かが向ける自分への信頼であり, 何かあったら他の人のために責任を取らなければならない. 当然のことながら, 孫さんが口にすると一層染み込んでくるように感じずにはいられません. 


4. AI時代の来訪

 最後に, 今回の講演の大きな軸であるAIに関連して, これからの働き方を探っていきました. 

 最初に触れましたが, 孫さんはこの度1000億円を東京大学とのAI研究に投資します. マーさんもまた中国で渋滞解消のAIを支援しています. そんなお二人のvisionは, やはり共通して'もっと大きな波がやってくる'というものです.

  まず孫さんが, 現在第二号ファンドを準備中で, 「向こう10年で引き続きさらにこの分野に投資していく」と発表しました. その理由は, 世界は引き続き変革を望んでいるからだと言います. 

 「ある意味ラッキーだ」とし, この意味ある変革に投資できることが喜ばしいと語りました. この時の笑顔がまたすごく良く(写真参照), テクノロジーが大好きだという孫さんらしい言葉だと思います.

 その点, '人'に関心を持っている点で違うのがマーさんです. 

AIはアリババ・インテリジェンスの訳だ, とジョークで会場が沸くと, ひときわ楽しそうにvisionを語り始めました. 

 「ITは人に力を与えてくれたが, 次のDT(Data Technology)は他のものにも力を与えてくれる」

 まだ世界はそれを受け入れる準備ができていない, としながらも, AIは必ずやってくると強く口にしました. 


5. 新しい働き方, 仕事観

 このようにワクワクし楽しげに話す姿に見られるように, お二人ともAIに関しては楽観的な思想をお持ちのようです(最も, 先述したように未来を楽観視できるからこそ起業家として成功されているとも言えます). 

 「200年前に, 人間が機械のように働いていた時代が, 機械が人のように働く時代になる

 仕事の半分がなくなる, というフレーズが話題となって久しいAI時代の働き方について, それぞれキーワードに上がったのはやはり'Vision'でした. 

   孫さんは「システムを変えていく必要がある」

 マーさんは「人は機械ではない」「 子供達がイノベーションを起こす

 お二方の違いがまた現れる切り口となりましたが, やはり'creativity'が必要となってくるという帰結が同じだったことには納得させられますね. 

 そもそも明治維新前は9割の仕事が農業だったが, 当時の人々が西洋を学んで適応した(なお, 今は2~5%), という例にも『龍馬がゆく』を愛読する孫氏らしさを垣間見つつ, 

「常に学ば続けることが重要。学校では物事の学び方を教えるべき」

というマー氏の主張に共通する思想が表れていました.  繰り返し, (AIが悪いのではなく)AIに適応する準備ができていないのがいけない, と語り, 先の懸念を一蹴しました. 


 そして, お二人が先ほど見せた楽しげにテクノロジーについて語る自らの様子に言及して述べたのが以下です. 

 マー氏「この世に生まれたのは人生を楽しむため。テクノロジーのためにもっと働かなければいけないのなら、テクノロジーなんて嫌いですよ。テクノロジーは世界をより良くすることができる。」「キャリアを達成したかは死ぬときに初めて分かるもの。私はとにかくやりたいことがある。楽しみたい。」
 孫氏「人生の理想は、夢を追いかけること。自分はまだ何も達成していない。まだ私にとってはスタートに過ぎず、今もチャレンジャーです。情熱、夢、今よりも100倍以上大きなものへ、まだ一歩を踏み出したに過ぎない。」「Activeでい続けなければいけません。」 

 

 他にも, 「最高の教師は過ちである」「ロールモデルを保つことが大切」といいた, 洗練された言葉にあふれた時間でした.

6. これからの若い人へ

 最後はこれからの若者に向けてのメッセージで締めくくられました. 

  孫氏からは, 

  夢に対して, 大きな信念を持つこと / 情熱を抱くこと

  マー氏からは, 

  楽観的でいろ, そして文句は言うな. 未来は変えられると信じろ

との言葉を受け取りました. この講演で伺ったお話も, 全てこの言葉に集約できるのではないでしょうか. 


7. あとがき

 今回の対談は,まさに一言一句逃さずに覚えておきたい言葉の連続でした. 成功者ではなく, 常に夢を追いかける姿に, 強い憧れとオーラを感じずにはいられませんでした.  

 記事を書くにあたって, 再び安田講堂で二人を見上げる時に戻ったような感覚もします. 強いVisionを持つ, そのために, まずは多くのことを学び, 行動し, 挑戦し続けようと気が引き締まる思いです. 

 さて, 記事にするにあたり, 学生の立場で学んだことを主軸に編集しましたが, そんな言葉の数々を編集するのは至難の業でした.  おそらく今の自分では気づいていないであろう真実もまだまだ隠れていると期待します. 

 皆さんには, そして今後見返す未来の自分にはぜひこちらの動画で視聴し, 自らの目と耳でも感じていただけたらと思います. 

 それでは, 今日はこの辺りで. 

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