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雪虫飛ぶ季節~2022年9月に読んだ本から

読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしている。
9月に読んだ本の中から、印象に残った本3冊。

1 シャルロットの憂鬱 近藤史恵

浩輔・真澄夫婦は、元警察犬でジャーマンシェパードの シャルロット と暮らすことになる。

家に何者かが侵入したのに、シャルロットは なぜ吠えなかったのか?

突然、やってきてシャルロットを「番犬として貸してくれ」と言った見知らぬ女性の目的は何?

初めて飼い主となった夫婦の シャルロットとの暮らしと、その身の回りでおきる様々な「事件」をえがいた連作短編集。

今まで読んだ近藤史恵さんの本(「タルトタタンの夢」 「たまごの旅人」等)が、気に入っていたので、手に取った本。とても読みやく、するするとページがすすんだ。

浩輔・真澄夫婦が、とても愛情をもってシャルロットに接しているところがいい。きっと動物を飼っている多くの飼い主は こうして愛情をそそぎながら暮らしているのだろうなあ。

そして、何よりもシャルロットの表情・しぐさなどのかわいさよ。

(悪いことをしたときは)だいたい テーブルの下に 隠れている。
(中略)ぺたんと耳を寝かせ、わたしたちの顔を見上げる。テーブルの下から顔を出して、私たちの口を める

読みながら、笑顔になってしまっている私がいた。

続編「シャルロットのアルバイト」の中で、真澄が「浩輔の こういうところが好き」と、夫の好きなところをあげる場面も お気に入り。


実は、私は犬が苦手。怖い。
シャルロットのような大きな犬と道で出会ったら、絶対さけて通る。固まってしまうかもしれない。(昔よく、吠えられたのです。)

それでも、この本の中の シャルロットをはじめとした犬のかわいさには とてもひかれる。本の中で 犬といっしょに暮らす楽しさの 何万分の1だけ体験させてもらった気がする。

2 対岸の家事 朱野あけの帰子かえるこ

志穂は 娘が一人いる専業主婦。自分で 専業主婦になることを選択した志穂だが、日々の生活の中で それが正しかったどうか 心が揺れる日々。

そんな中、アパートのとなりに住むワーキングマザーの礼子に
「イマドキ 専業主婦になんかなって どうするんだろう」
と言われ、大いに傷つく。
しかしその礼子の子どもを預かることになる。
また、いつも行く公園では、育休中の男性と「パパ友」になるが、気の合わない相手でもあった。

いろんな立場の人はいるが、それぞれが悩みを抱えて暮らしている。
それを知った志穂は 自分には何ができるかと考え始める。

読書会で教えてもらった一冊。

自分と考え方の違う人、苦手な人を 拒絶してしまわないところが この志穂のすごいところだなあと思った。

ましてや、自分だって いろいろなつらさをかかえて 暮らしているのに。
「一緒に考えましょうか」などという言葉は なかなか他人に対して出てこないよね。

登場人物それぞれ、悩みや苦しみをかかえて生きているのだが、特に、育休中のパパ「中谷」の心の闇は、読んでいてつらいものがあった。こんなにまで 幼いころのことが 人生に影響を与えるのか。

お話は、みんな前を向いてすすんでいこうとするところで終わるので、ほっと優しい気持ちで読み終わることができた。


3 神さまたちの遊ぶ庭   宮下 奈都

家の前でエゾシカに鉢合わせ。300m先には熊出没。
学校は小中併置。児童生徒合わせて15人。
運動会も学芸会も 町内あげての大行事。
福井県から 北海道トムラウシへ。3人の子どもと一緒に 山村留学した宮下家の 一年間の暮らしの記録。

はい、たくさん笑わせてもらいました。

まず、お子さんたちの言動がおもしろい。

日本の人口127,799,000人と学校で勉強した娘さん4年生。

「でも、うちの家族5人が抜けちゃったから 127,798,995人だね。」
 抜けたつもりはなかった。知らない間に、うちは日本から離脱してしまっていたらしい。

そして、町内総出の行事にも笑わせてもらった。

北海道の田舎での暮らしが長い私にとっては、町内総出の行事というのは、まさに「あるある」だったから。

運動会
子どもの種目はもちろんあるが、保護者、そして地域の人たちの種目だってめじろおし。

学芸会
こちらも 子どもの出し物も あるけれど、母たちの出し物、老人会の出し物等 子ども以外の出し物もたくさん。

運動会も学芸会も、子ども以外の種目を入れないと、子どもが出ずっぱりで疲れてしまう という理由もあったのだろう。

宮下家の長男さんと同じく、卒業式に卒業生が一人なんていうのも経験あり。保護者席には、保護者より地域の方たちがたくさんすわっていた。
「仮装盆踊り大会」なんていうのもやったなあ。

小さな学校で、子どもたちが活躍しているようす、地域の人たちとのふれあい、たぶん楽しいことばかりではなかったとは思うが、「ああ宮下さんの家族は、ほんとうにいい経験をしたんだなあ」と感じられた一冊だった。


「神さまたちの遊ぶ庭」
「雪虫」が登場する場面があった。

9月某日
「雪虫が飛んでたよ!」
むすめが息を切らせて家に飛び込んできた。
「雪みたいに白くて ふわふわしてて すごっくきれい!」
雪虫が飛ぶと、それからひと月で雪が降るそうだ。

今日(10月8日)、私も今年初めて雪虫を見た。
家の前で
「雪みたいに 白くてふわふわ」飛んでいた。

しかし、北海道で生まれ育ち、すっかり大人の私は、宮下家の娘さんのようには、喜ぶことはできず、
「あ~もうすぐ雪がふってくる・・・冬が来ちゃう・・」と さびしく暗い気持ちになってしまったのだった。 

<雪虫> アブラムシの仲間。体長5mmほど。おなかのところに白い綿のようなものがあり、空中をふわふわと舞う。大量発生もして髪の毛、洋服につく。口の中に入ってくることもある。
この虫が飛ぶと、もうすぐ初雪が降ると言われている。


読んでいただき ありがとうございました。