【コラム】ネガティブ思考をポジティブ思考に変えていく方法
そもそもポジティブが良いことと思い込みすぎている人が多い
「そんなにネガティブに物事を考えずに、ポジティブシンキングで行こうよ!」といったアドバイスをよく耳にします。
これ自体は決して悪いことではないのですが、この認知の根底にはそもそも「ネガティブ」よりも「ポジティブ」が良いという考え方があるように思えます。
この前提はもう少し丁寧に考えていく必要があります。
ネガティブに物事を考える傾向のある人にはそうなる理由があります。例えばこれまで思い切ってチャレンジをしたものの、大きな失敗をしてしまった経験があったり、一生懸命頑張って努力を積み重ねたけれども上手くいかなかったりという感じです。
本人の意思に反して、事件や事故に遭ってしまうこともありますし、不運なできことというのは誰しも望みませんが、無くすことはできません。
そんなときに「とにかく明るく行こう!」という声かけは、ときに冷たく、ときに無責任に感じられ、渡された当人にとっては「それができれば苦労しないんだけど」「あなたのようなポジティブな人はいいな」という感情を持ってしまいます。
このようなケースで必要なことはネガティブを見て見ぬ振りするようなポジティブアプローチは効果がないと知ることです。
仕事を失ってしまったけど、明るく元気に行こう!なんてやっていたら、すぐに心が破壊されてしまいます。
そうではなくネガティブの根源を丁寧に取り扱ってあげて、思考の絡まりがあれば、それを解いてあげて、ある程度、心の整理がついて、軽くなった実感を持ってから、そこから始めて少しずつポジティブに考える練習をしていくことが重要です。
ネガティブをポジティブに移動させていくにはどんなプロセスが必要か。
カウンセラーは相談者の方との対話を通じて少しずつ相談者の認知のクセや行動パターンを観察していきます。
相談者が当たり前、当然と思い込んでいることについて、必ずしもそうとは限らないという客観的な視点を渡していくこともここの段階で行います。
例えば会社の中で上司と上手くいっていない相談者の方はいろんな思い込みをお持ちです。
「上司にあんなに自分勝手な態度をとってしまった自分は、きっと評価を下げられているに違いない」
「上司は自分のような正論で意見をぶつけてくる部下を嫌っているに違いない」
「こんな自分はこれ以上この職場にいてもやりたい仕事に就くことも昇進することもないだろう」
「だからといってこの年齢で今更他社に転職なんて無理だ」
こうした会話はどんな職場でも見られますが、多くの優しい同僚は「まあまあ、愚痴なら聞くからパーっと飲みに行こうぜ!」と気晴らしに誘ってくれるのがよくあるパターンです。とても大切にしたい素晴らしい友人だと思います。
ですがそんな優しい友人もお悩みを解決する専門家ではありませんので、相談者の方は数日もすればやはりまた同じ気持ちに戻ってしまいます。
カウンセラーはこの認知に深く入り込み、思考の絡まりを一つ一つ紐解いていきます。
「自分勝手な態度をとったという事実はご自身の中で反省と改善をなさることで、この先の学習と成長になると思います。またよくない行動だと考えていらっしゃるなら、それは上司の方へお伝えされると良いと思います。ただ上司の方がどのように考えていらっしゃるかは分かりません。思い切って良いチャレンジをしたと考える方も世の中にはいらっしゃいます。事実としてはその行動の後から、あなたは上司の方とあまり良いコミュニケーションが取れていないということです。少なくとも今の状態を放置しておくと、事態が自然によくなることはないでしょう」
「あなたのこの先の待遇に関して、上司の方にとってしまった行動で全てが決まるとは限りません。裏を返すと、その前後から現在に至るまでにとり続けている行動が全て評価の対象になっているとも言えます。これまで十分に組織のために活躍してきたなら、挽回の余地はあります。ですが、現在に至るまで謝罪も改善提案も、最低限のコミュニケーションも行っていないとすると、知らぬまに評価を悪くしている可能性はあります」
「今更転職できないという事実はありません。世の中には何歳になっても新しい仕事にチャレンジする方はたくさんいらっしゃいます。一般的に年齢が上がるほどにハードルは上がりますが、実力と経験が伴っていれば現在は必ずしも全く可能性がないと言い切ることはできません」
具体的な行動変化によるアプローチとは
こうしたカウンセラーからの視点を渡されただけで、かなりの確率で思い込みに気がつくことができます。そこまで重く考える必要もなかったなと安心できることもあります。
そうでなくとも、では次に何をすれば良いのかという行動についてのアドバイスを少し聞き入れやすい心理状態になれます。
職場で上司と気まずい雰囲気になった相談者の場合は、この状態を続けることのほうが評価を下げていくリスクが高いという客観的な視点を得ることができました。
「では今後どうしていけば良いでしょうか」という質問には、「上司と関係の良好な共通の先輩に相談するなどして、まずはコミュニケーションをとることから始めましょう」ということになります。
真面目な思い詰めやすい方は他社へ協力を依頼することが苦手だったりします。なんでもご自身で抱えてしまう頑張り屋さんなところがあります。
ですが、まずは頼りやすい人からお願いをしてみましょう。
お願いしにくければ、コーヒーの一杯でもご馳走させてくださいと相手にGIVEがあればやりやすいです。
そうして先輩と一緒にいるときに上司に「おはようございます」と少し元気に挨拶してみることです。
人間関係で機嫌の良い挨拶を無視するようなマネジャーはそうそういません。ましてや関係の良い先輩のいる前で部下の挨拶を適当にあしらうような上司であれば、さすがにその人物に何かしらの問題がありそうです。
ですが、これまで人間関係で思い悩んだ人が、思い切って挨拶をすることで悩みが少し晴れたというケースはとても多いです。
そんなことかよと思わず試していただければと思いますし、もちろん実際のカウンセリングセッションにおいてはその方のお悩みの状況や相手との関係性を十分に加味した上で、適切な行動変化のアプローチをできる限りたくさんのパターンで一緒に考えていきます。
このように悪循環を好循環に変えていく効果がカウンセリングにはあります。一人で悩むだけではなかなか上手くいかないこともカウンセラーと一緒に考えることで少しずつ変えていけることがあります。
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