生命保険協会アンケート(2)

ひろです。

では前回の続きで、生命保険協会の企業・投資家向けアンケート(最新2021年度版)について、続きを見ていきましょう。
企業向け」と「投資家向け」にアンケートが分かれているところ、基本的にはそれぞれの「結果比較」の結果に注目してやっていきますね。

主な結果

投資実行時に重視する項目(企業)/重視してほしい項目(投資家)

生命保険協会「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート

投資実行の際に重視する項目として、「a.経営戦略との整合性」や「f.投資の採算性」は企業側・投資家側も重視していることでは一致していますね。
しかし、企業側は「戦略整合性」を最重要視している一方で、投資家側は「戦略整合性も大事だが、投資の採算性はなお大事」という意識のようです。
h.投資リスク」では顕著に投資家側の方が高いことを踏まえると、「戦略整合性は大事だが、採算性やリスクへの意識もちゃんと持ってほしい」という意識が、企業側よりも強いようです。
d.事業規模・シェア拡大」は顕著に企業側の方が重視していますが、前回の記事でも述べた通り、売上をそこまで重視しない投資家側の考え方を反映しているようですね。

なおここには貼り付けないですが、次の「投資意思決定時の判断基準の指標(企業)/適切だと思われる指標(投資家)」について、企業側は「売上・利益の増加額」や「事業投資資金の回収期間」を最重要視しています(投資家はROICやIRRを最重要視)。
以前にコーポレート・ファイナンスにかかるサーベイの結果を紹介した時にも、投資決定の基準・手法の第1位は「回収期間」でしたから、整合的な結果と言えそうです。

中長期的な投資・財務戦略の重要項目(企業)/重視すべき項目(投資家)

生命保険協会「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート

これはかなり意外な結果ですね。企業側が「a.設備投資」を最重要視していますが、投資家側は「b.IT投資」「c.研究開発投資」「d.人材投資」が軒並み高い、という結果になっています。
ひょっとすると「アンケート対象の企業群には製造業が比率として多い」といったこともあるかも知れないので何とも判断しづらい所がありますが、企業側には「設備重視」という特徴があるようです。
加えて、「h.株主還元」については企業側の方がよほど重視している、という風になりました。

株主還元の適切性について説明する観点(企業)/評価する観点(投資家)

生命保険協会「企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート

そんな株主還元ですが、ここには貼り付けませんが基本的には企業側も投資家側も「一定程度行っている」という評価が一番多いですが、次いで企業側は「十分に行っている」と思っており、投資家側は「あまり行っていない」と評価が分かれます。まあ、立場の違いもある所ですね。
自己資本・手元資金の水準についても、概して企業側は「適正」と考える一方で投資家側は「余裕がある」と捉えています。

そんな株主還元の適切性について、企業側は非常に「g.株主還元・配当の安定性」や「e.総還元性向・配当性向の絶対水準」で説明する傾向にあります。投資家側も「総還元性向・配当性向の絶対水準」はそれなりに重視していましたが足元ではそれほどでもなくなっており、「c.事業の成長ステージ」や「a.投資機会の有無」で決めてほしい、という傾向が強く残っています。
「成長フェーズで投資がかさむ分には、将来的なリターンも加味して、今の株主還元の安定性や絶対水準が低くても許容する」ということでもあり、逆に「碌な投資機会がないのであれば、株主還元を増やすべし」という意識、とも言えますね。

なおここには貼り付けないですが、参考までに、さりはさりとて投資家側が「中長期的に望ましいと考える配当性向」については、「30%以上40%未満」が最多帯となっています(「水準には拘らない」が次点)。
同、総還元性向は「水準には拘らない」が多く、次いで「30%以上40%未満」と「40%以上50%未満」が同水準(過去は後者の方が高かった)となっています(投資家向けアンケート参照)。


…と、こんなところで、今回も長くなってきたので終わりとします。
また次回、幾つかのトピックを取り上げていきたいと思います。

ではではまた。

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