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僕の見た景色 15 (連続短編小説)

姉の葉子のことを思い出すと
よくアキラの話を
していたように思う。

いつ聞いたのかというと
時々メールが来ると言っていた。

インドネシアに行ってすぐは
僕より葉子とのようが
頻繁に連絡を取り合っていたようだ。

僕にも、弟のゴウにも
言えない辛さを、葉子にだけ
話していたのかもしれない。

それも、だいぶ経ってから葉子の
口から聞くのである。

アキラがインドネシアにいたのは、
4年半ほど。

30になってすぐ、
帰国して、結婚した。
(以前にも書いたできちゃった婚)

26くらいの若者が、
ネシアに渡って、
最初は言葉もわからず
苦労したらしい。

なんとなくアキラから
おもしろおかしく聞いた記憶は
あったが、葉子が言うには、
アキラも結構メンタルが
やられてたらしい。

「ネシアって、
ストレートチルドレンの国やん?」

例の『枕の上の葉』という映画の
洗脳から逃れられない
葉子はずっとそう言っていた。

「アキラがね、
さみしくなったら街頭に行って
横断歩道渡るときに
1ルピアをパラパラ~ッてまくらしい」

1ルピアとは日本円で
1円よりもっと安いらしい。

「そしたら、子供たちが、
ダダダ~と、アキラの後に
ついてくるらしい」

「それ、なんの遊び?」

「金持ちがお金で子供を
呼び寄せてる感じ」

「呼び寄せるだけ?」

「それぐらい、さみしいってことやん。
アキラも、自分でノイローゼかもって
言ってたわ」

なんとも高慢ちきな
ノイローゼである。

アキラらしくて笑えたが、
そんなお国柄を利用しているのは、
いやな奴だな、と思った。

この頃はアキラと葉子がどういう
関係だったのかはわからない。
たぶん年の離れた良き姉弟で
あったであろうことを願う。


             続

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