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5年間過ごした現実の部屋(仮想現実)

現実に住んだ部屋の中で、
今のひとつ前の部屋が、
時々、白昼夢に現れる。

 
今の部屋から500メートルほどしか
離れていないその部屋で、
私は、元の夫と5年過ごした。

 
古びたマンションだった。
広めの私の部屋に
転がり込んできた彼。

 
一人では広過ぎたけど、
二人にはちょっと狭かった。


ユニットバスだったし、
ベランダも狭かった。

 
なのに、クローゼットだけは
東側の壁前面についていて、
上下左右、子供ベッドが
4つ入りそうだった。

 
その上にも収納棚がついていて、
布団が左右で二人分、
十分に入った。

「このスペースも部屋だったら、
もうちょっと広かったのに」

 
元ダンナは、いつも
そう言っていた。


けど、私は、自分がクローゼットの中に
こもってしまいたい時や、
ダンナを押しこんでしまいたい時が、
多かった。

クローゼットを背にして、
セミダブルのベッドがあった。

 
LDKだったけど、
リビング兼、寝室が広くて、
テレビ、パソコン、こたつ、ベッド
すべて置いても、
まだスペースがあった。

でも、その部屋を思い出すと、
私は何となく淋しい想いで
いっぱいになる。

今の部屋に引っ越したのは、
思い出と決別したかったから。


でも500メートルしか
離れていないのは、
この場所が大好き・・・
というか、執着さえあったから。

今も目を閉じると、
広めの部屋でポツリと
一人でいる私が目に浮かぶ。
 
ダンナがいても、私はいつも一人だった。

・・・いや、違う。私じゃない。

 
小さな女の子がクローゼットの前で、
淋しそうな顔をして立っている。

 
10才くらいだろうか。
黒髪のおかっぱの女の子。

私自身の子供の頃の投影?


でも、今の私はともかく、
10才の頃の私は、
こんなに淋しそうな顔を
していなかった。

今の私が10才に戻って、
何十年後かの自分を見て、
こんな悲しい顔をしているのだろうか。

 
それとも元々、この部屋にいる、
霊的な何かなのだろうか。

 
彼女に引っ張られるかのように、
私の心もずんずんと
淋しくなっていった。

夫に愛されていない自分。

 
自分を愛していない自分。

そんな淋しさが、
部屋にびっしり詰まった頃、
私たちは、別れた。

 
あの少女は、誰だったのだろう。


今もあの部屋で、
淋しい顔をして立っているのだろうか。

彼女を抱きしめたくなって、
思わず、自分の体を抱きしめた。

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