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僕の見た風景 11 (連続短編小説)

アキラの結婚で思い出した。
なぜ、社交的なアキラが
身内でしか式を挙げなかったか
理由を後々聞かされた。

人たらしのアキラは
当時20代後半、モテモテだった。

相撲取りのようなルックスだったが
それで笑いを取るようなヤツだった。

語学ができて、目力があって、
仕事ができて、人たらしなのだから
何股もかけて、女性と
付き合っていたらしい。

結局は、できちゃった結婚で
慌てて式を挙げたものの、
商社内にも、ほぼ公認の彼女がいて
会社の人間を呼ぶわけには
いかなかったという。

「その彼女、どうしたん?」

「しばらく会社おったけど、
精神的にやられて、辞めてしまった。
なんでそんなに気にするんやろ」

アキラの言葉に驚いた。

「当たり前やないか、社内で
公認やったんやろ?」

「公認で仲良くしてただけで
結婚の約束してたわけやない。
向こうが勝手にそう思ってたんや」

聞けば相手の女性はアキラより
少し年上だという。

「アキラの言い草は日本では
通用せんな。
彼女は社内でも恥かかされたわけや」

「なんで?」

「なんでって・・・」

この時ほど、国民性の違いを
感じたことはない。
ちなみに結婚したのも、
日本人女性なのだが、
どういう会話をしているのだろうか。

「その彼女が、よく言うとってん」

アキラはまるで懐かしい恋人を
思い浮かべるように言った。

「オレ、海外出張多いけど、
アンタは飛行機事故なんかで
死なれへん、人に恨まれて
殺されるんやって」

「それ、別れてから言われたん?」

「ううん、会ってすぐに言ってた」

アキラは誉め言葉のように
受け取っているが、
彼女は、アキラの人たらしを
見抜いていたのかもしれない。

ならばアキラと別れて
正解だったのかも知れない。
             

              続

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