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死んだ妹の話(仮想現実)

冬弓には、もう一人、
妹がいたらしい。

らしい、というのは、
おかしいかな。
別に、赤ん坊の頃に
死んだわけではないから。

妹は、ある日を境に、
偽妹になった。
何か別のものに
乗り移られたんだと思う。

繊細で、弱々しかった、
善良な妹が
ある日、傲慢で、強欲な
悪魔になっていた。

家族のみんなが気づいていた。
だけど、気づかないふりをして
妹をお客様扱いするようになった。

ようこそ、地獄から。

でも、なんで、妹の体に
乗り移ったんだろう。

おかげで、冬弓の家庭は、
張りぼてみたいになった。
世間体だけの家族。
父が亡くなったとき、
偽妹は、まるで別人のように
(別人格なんだけど)
家族をひっかき回した。

昔の妹は、死んだ。
今の妹は、別人だ。
邪悪な何かに支配されている。

そう思っている冬弓のほうが
邪悪かな?

なら、冬弓が
乗り移られたのかもしれない。

どちらにしても、原型を留めない
昔の家族の姿。

早く解散したい。

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