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カラスの死(エッセイ)

私はカラスが好きだ。

以前、小鴉の話にも書いた通り
なんとか助けてやりたい野鳥である。

先日、仕事帰りの道で、
大きなカラスが死んでいるのを
見つけた。

もう、目は固く閉ざられ、
強い翼は、風に吹かれていた。

私は何度もカラスに尋ねた。

「死んじゃったん?」
って。

カラスのくちばしには
ベーコンのかけらみたいなものが
咥えていた。

ああ、エサを見つけてラッキーと
思ったとたん、車にでも
跳ねられたのだろうか。

そのとき、重松清さんの小説で、
タクシー運転手のお父さんが
長距離のった客に
強盗にあって殺された場面を思い出した。

家族は、きっとお父さん、そのお客さんに
感謝してただろうに、と泣いていた。
長距離のってくれて、ありがとうって
思っていただろうに、と。

感謝が裏目に出るのは
なんて悲しいことだろう。

カラスの体は、うちの猫ほどの
大きさがあった。
七つの子に、エサをみつけて
喜んでいただろうと思うと
涙が出てきた。

が、事故にあったとすれば
外傷がまったくなかった。

帰りながら考えた。
エサに毒を仕掛けられたのかもしれない。

私は、もしそうなら、
毒を仕掛けたヤツを殺してやりたい、
とまで思った。

カラスがうちの猫と重なったから
かもしれない。

もともと、動物実験をしてまで
医学を進める人間が嫌いだ。

何かの小説で、殺人の犯人が
医学生で、懐いている犬を実験で
殺すのが許せなかった、というのが
あった。

私も、動物を食べれなくなったし
動物を犠牲にして進歩する医学が
嫌いだ。

人間は傲慢になりすぎていると思う。

なんだか一羽のカラスの死が
大きくのしかかってきた日だった。



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