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白昼夢(仮想現実)

「冬弓は、いつも夢の中で
生きてるね」


幾度も友人たちにそう言われてきた。
私の家に関する白昼夢が
くっきり形となって
浮かび上がってきたのは、
中学生になった頃。
 
広い大きな庭のある、
小さな平屋のおうち。


中学生の私にとっては、
おばさんか、おばあさんに
なった自分が、
毎日庭の手入れをしている。
 
お花畑、ハーブ畑、野菜畑。

自給自足の一人暮らし。

 
アメリカにそんなおばあさんがいたけど、
あんなに大きな庭でなくていい。
 
それに今となってはそう
長生きもないので、
白昼夢は、この10~20年の間で
現実となるか、夢のまま終わるか、
どちらかだろう。


日本の庭、といった感じ
ではない庭の景色。
 

昔 観た映画、
「戦場のメリークリスマス」で、
デビッド・ボウイの弟役が
作っていたような
(それは、大農園だったけど)
南国の花を作り、
そして、樹を植えたい。

 
樹は大きく大きく育つもの。


大地に根をはって、
葉を茂らせ、
空高く伸びていくもの。

 
だから盆栽や鉢植えはいや。


悪天候も条件もすべては
その植物たちの運命に委ねられている。
 
それが自然の道理。

 
あるお天気のよい朝、

歌を歌いながら、
もう若くはない私が、
大樹から落ちた実や果実を拾い、
異国の花を摘んで、
小さな平屋に戻って来る。

 
台所と、リビングと寝室、
浴室だけしかない、
アメリカ・フロンティア時代を
思わず質素なおうち。
 
浴槽に、庭で摘んだハーブや
花を浮かべて、
ゆっくり入浴する。
 
誰も待っている人のいない
時間の贅沢さ。
人は孤独と呼ぶのかも
しれないけれど、
若い頃の私にとっては
至福の時のように思われた。


大きな庭と、小さな平屋。


それは天国での
住まいなのかもしれない。


なぜなら、年をおうごとに、
そのイメージが鮮明に
なってきてるから。

 
早く、あの家に帰りたい。

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