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僕の見た風景 12 (連続短編小説)

人たらしでまた、
思い出した。

僕は、真実を知りたくないし、
今となっては知りようもないのだが、
僕の姉の葉子は、アキラに
何でも相談していた。

葉子とアキラは一回り以上違う。
しかも、葉子も女王様キャラで、
周りを振りまわすところがあった。

そんな葉子が乳がんで
亡くなったのは
アキラが亡くなる5年ほど前。
まだ53歳という若さだった。

一生独身だった葉子と
既婚者のアキラの
仲がどういったものだったか
弟の僕としては、
想像するだに恐ろしい。

ただ、葉子が乳がんだと
知らされたのは
アキラの弟ゴウからで、
ゴウには、アキラがこっそり
打ち明けたという。

「オレらにとっても、本当の
ねーちゃんみたいなヨーコが・・・」

と言いつつ、そこには違う表情があったと
ゴウは告白した。

「自分の兄貴としても、
どうかと思うけど
どうもアキラとヨーコちゃん、
怪しい」

正直者のゴウは、
一人で抱え込むことが
できなかったのだろう、
僕にそう打ち明けた。

が、過去に何があったのかは
さておき、余命いくばくかの姉の
支えになってくれていた
アキラには文句も言えなかった。

アキラの妻は、
どういう気持ちだったのだろう。

葉子の臨終も、葬儀も、
親族のように寄り添ってくれたアキラ。

「俊兄が、初めてヨーコをうちの店に
連れてきたのが、昨日のことみたいだ」

と、大きな体で僕のことさえも
支えてくれたアキラ。

葉子が幸せな一生であったなら
弟の僕に意見する権利などない。

アキラの器は、とてつもなく
大きく、人の垢にまみれていた。
男としてうらやましく思わないでもない。


             続


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