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SOTIFに基づいた自動車の安全技術(ヘッドライト・コントロール)


はじめに

SOTIF(Safety of the Intended Functionality)は、ISO 21448で規定された国際規格です。SOTIFとは、システムが意図した機能を適切に果たすことができるだけでなく、意図しない危険な動作や未知の危険なシナリオによるリスクも最小限に抑えることを目的とした、システムの性能や仕様の不十分性、および人々のミスユースに関する安全性の考え方・手法です。ISO 21448は、設計と検証のための要求事項やプロセス、手法、ツールなどを提供します。SOTIFの主な焦点は、ハザード分析ではシステムの仕様や設計だけでなく、周辺環境や関係者から影響を受ける可能性がある要因も考慮します。例えば、照度に応じて自動車のヘッドライトのオートライト(ライトを自動点灯させ、消せない)が作動するように法律で定められましたが、人間の運転行動や判断力に依存する場合はまだ改善の余地が多くあります。

具体的事例

自動車のヘッドライトを例にSOTIFを考慮した仕様案を示します。自動車のヘッドライトの開発でSOTIFを考慮する場合、未知の危険シナリオに対処する必要があります。具体的には、ヘッドライトが有効に働かない状況を周りの環境と関係づけて洗い出し、その対策を検討します。

周囲照明の影響: ヘッドライトの明るさや方向が、道路ほかの周囲の照明条件によって適切に調整されていないと、ドライバーが道路や他の車両を適切に見ることが難しくなる可能性があります。
対策: センサーやカメラを使用して、周囲の明るさや照明条件を検出し、ヘッドライトの明るさや方向を自動調整するアルゴリズムを導入します。このアルゴリズムは、異なる状況での適切なヘッドライトの設定を確保するために、広範な照明条件をカバーできるように設計されます。

環境変化による反射: 雨や雪などの悪天候条件下では、ヘッドライトの光が反射してドライバーの視界を妨げる可能性があります。
対策: センサーやカメラを使用して、ヘッドライトの光が周囲の環境とどのように相互作用しているかを検出します。必要に応じて、光の強度や方向を自動調整して、反射を最小限に抑えるようにします。

野生動物との衝突: 夜間に走行中に道路上に野生動物が突然現れ、それに対する適切な対応ができない場合、衝突事故のリスクが増加します。
対策: センサーやカメラを使用して、道路上の動物を検出するシステムを実装します。動物の検出が行われた場合、ヘッドライトの光を調整して、動物が適切に照らされ、ドライバーが早期に気付けるようにします。また、緊急時にはドライバーに警告を出すことで、運転者の注意を引きます。

道路工事や障害物の検出: 道路工事や障害物が予測外の場所に設置されている場合、ヘッドライトの光が適切に調整されていないと、急ブレーキでも間に合わずに衝突などの危険な状況が生じる可能性があります。
対策: カメラやセンサーを使用して、道路上の障害物や工事の検出を行います。これにより、ヘッドライトの光の調整が必要な場所や障害物の位置を特定し、適切な光の方向や強度に調整します。必要に応じて、ドライバーに対して障害物や工事の存在を警告するシステム(ナビゲーション等)も組み込むことが考えられます。

夜間の駐車場での安全性: 夜間の駐車場では、他の車両や歩行者が暗闇の中で見えにくいため、駐車時のリスクが増加します。
対策: 駐車場内での安全性を向上させるために、カメラやセンサーを使用して周囲の車両や歩行者を検出します。必要に応じて、ヘッドライトを低光度で点灯させ、駐車場内の照明を補完します。また、駐車時に障害物検出と警告システムを活用して、衝突や接触を避けるためのアシストを提供します。

対向車のブライトライト: 対向車がブライトライト(光輝く明るいライト、ハロゲン電球、HID電球またはLED電球)を使用している場合、ドライバーの視界が一時的に遮られる可能性があります。
対策: カメラやセンサーを使用して、対向車のヘッドライトの明るさを検出し、自動的に自車のヘッドライトの光の強度や方向を調整します。対向車のブライトライトを検出した場合、自動的にヘッドライトを調整してドライバーの視界を確保します。

フラッシング(点滅)の誤認識: 道路上の反射物や看板の光がヘッドライトの光と誤認識され、運転者が誤って光が点滅していると思い込む可能性があります。
対策: カメラやセンサーを使用して、道路上の光源とヘッドライトの光を区別します。誤認識される可能性がある光源を特定し、それに対する適切な調整を行うことで、フラッシングの誤認識を防ぎます。

変動する路面状況への対応不足: 路面の状況が急に変化した場合(例: 急勾配)、ヘッドライトの光が適切に道路を照らせない可能性があります。
対策: センサーやカメラを使用して、路面の変化を検出し、ヘッドライトの光を適切に調整します。急な路面変化が検出された場合、光の角度や強度を変えて、運転者に適切な視界を確保するよう調整します。

センサーの故障: ヘッドライトの制御に使用されるセンサーが故障した場合、適切な照明が確保されない可能性があります。
対策: システム内に冗長性を組み込み、複数のセンサーやバックアップシステムを使用して、センサーの故障に対処します。故障したセンサーの代わりに別のセンサーが機能するように設計し、運転者に警告を出すことで、センサーの故障によるリスクを最小限に抑えます。

まとめ

ヘッドライトに関する危険シナリオを挙げて、設計と機能に関する幅広い側面を見てきました。自動車の安全性を向上させるためには、これらのリスクに対する適切な対策を導入することが重要です。技術的には、センサー(カメラ)と連動したヘッドライトの光軸と照度の制御が含まれ、部分的には製品化されたものもありますが、まだ各社開発中であると思われます。

Continental Automotive社のインテリジェント・ヘッドライト・コントールは、ハイビームを制御することができるそうです。
Continental Automotive - Intelligent Headlamp Control (continental-automotive.com)

ハイローを自動で切り替えるヘッドライトをアダプティブ・ハイビームと呼びます。
最新ランプシステム | 製品・技術情報-KOITOのテクノロジー | Koito [小糸製作所]
Lexus Safety System | アダプティブハイビームシステム
その他多くの車種にオプションとして、マツダ、日産車にも搭載されています。

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