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睡眠と酸素


はじめに

 若い頃は徹夜で遊んだり仕事をしたりして、楽しかったり達成感があったため、多いに満足していました。ところが、最近は脳と体が楽しさについていけません(笑)。
 人生80年と仮定した場合、私たちは1日平均して6時間睡眠をとると20年間寝て過ごしていることになります。視点を変えると20年も寝ているため80年間も生きられるのでしょう。
 ある方が、生きているときは寝ないで働け。あの世にいったら好きなだけ眠られると。人生は長さではない、何をしたか、何を残したかが問われるとおっしゃってました。その時は、睡眠欲には勝てないためできるわけないと半信半疑で聞いていました。寿命は自分で決めるものではないし、長生きして残すものが増やせれば、それでよいと思います。今は、とにかく長く働くためにも、最低6時間の睡眠をとりたいと思っています。
 さて、睡眠の大切さは言う(書く)までもないのですが、まとめてみます。

睡眠の生理学的役割

 睡眠は、私たちの疲労回復や細胞の老廃物の排出に欠かせない重要な時間です。また、脳を休ませる時間です。実際、研究者たちは睡眠中の脳の活動についてレム睡眠とノンレム睡眠で体に何が起きているかを研究しています。
 マウスを用いた実験によって、レム睡眠中(眼球が動いたり夢を見ている時間)に大脳血流中に赤血球が多く観測されることがわかりました。このことから、睡眠によって脳に酸素が多く運ばれることが示唆されています[1]。    
 快適な睡眠環境を整えることは重要です。寝室が適切な空気の流れを持っているか、酸素供給が十分であるかなど、確認する必要があります。また、睡眠中の規則正しい呼吸も酸素の供給に役立つとされています。

脳への酸素供給

 新型コロナ(COVID19)がまん延した時期は、ウイルス対策でよくマスクをしていました。会社で一日中マスクをしていると酸素不足で苦しくなることがよくありました。マスクしていると苦しいためつい口呼吸するのですが、口呼吸はだめで鼻呼吸が酸素を吸収するには良いようです[2]。
 接客業で今でもマスクをされている方は、昼間に酸素不足を感じないようにするためにも、質の良い睡眠をとることが大切だと思います。睡眠は私たちの健康と幸福にとって欠かせない要素なので、十分な睡眠時間を確保し、快適な睡眠環境を整えることが必要と感じています。

脳が必要な酸素量

 脳は体の中の約20%の血流量を必要とします。それだけ脳という組織は酸素(血流から酸素を受け取ること)を必要とするそうです。ドイツのStrakaらの研究グループは、実際に脳の細胞達がどれくらい活動時に酸素を消費しているか、直接計測してみたそうです[3]。1日に体全体で消費される酸素の量は2000リットル、ドラム缶10本分といわれています[4,5]。
 この量を初めて聞いた時驚きました。酸素を作っている植物に感謝しないといけないと思います。

おわりに

 脳が必要とする酸素の量について述べましたが、この問題は人類の進化にも関係があると思います。ヒトを含む大半の生物は、酸素を利用してエネルギーを生み出す好気的代謝を行っています。つまり、呼吸によって酸素を取り入れ、それを燃料としてATPを生産しています。ヒトが現在の姿に進化し、地球上に繁栄できたのは、大気中に豊富に存在する酸素を利用できるようになったからだと考えられます。もし地球に酸素がなければ、ヒトのような高等生物は存在し得なかったでしょう。
 したがって、昼間はもちろんのこと、睡眠を通じて脳が必要とする酸素を十分に取り入れられることは、ヒトの生存と進化に深く関わる重要な生理学的プロセスだと思います。質の良い睡眠を確保して、脳への酸素供給することを考えたいです。

補足

大気中の酸素 

 大気中の酸素濃度は、田舎、都市や高度に関わらず、21%らしいのですが、(ちなみに窒素は78%、酸素21%、アロゴン約0.93%二酸化炭素は約0.04%[6])酸素量の地域差の測定は難しいようです。
 自然界における遊離酸素は、光合成によって水が光分解されることで生じ、海洋中の緑藻類やシアノバクテリアが地球大気中の酸素70 %を、残りは陸上の植物が作り出している[7]とのことで、海洋汚染が生命に与える影響が大きいような気がします。酸素は年平均4 ppmの減少しているが1万年間で4 %程度の濃度減少とのことです。

参考文献

[1]睡眠中の脳のリフレッシュ機構を解明
[2]脳だって、もっと栄養がほしい 酸素供給に影響する呼吸の仕方 | ヨミドクター(読売新聞) (yomiuri.co.jp)
[3]脳の酸素消費量は本当に神経活動量と相関していた (mom-neuroscience.com)
[4]酸素の摂取量と脳の働き | 岐阜-心のための習い事 (cocoro-manabu.jp)
[5]脳の活動に「酸素」と「糖」はどのように関わっているのか? | ゴールドオンライン (gentosha-go.com)
[6]空気 - Wikipedia
[7]酸素 - Wikipedia

変更履歴

Rev.1.0 初版


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